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本編
魔獣討伐遠征sideレオン
しおりを挟む「いってらっしゃい」
「…いってくる」
未練がましくアサヒを見つめながら渋々と愛馬のシュバルツに乗り討伐隊に合流し歩みを進める。
「なぜ俺に回ってくるんだ…他にも適任者はいるだろう」
「まぁまぁ、落ち着けよ」
「納得いかん」
いまだ愚痴をこぼす俺を宥めるのは副団長のダルイズだ。不機嫌な俺の相手ができるのはコイツぐらいしかいないだろう。
「そんな事言ったって仕方ないだろ、魔獣のランクが想定より高かったんだから。そんな魔獣相手に冒険者たちだけじゃ対応できなくて精鋭揃いの第1のうちに回ってくることぐらい分かってただろ?」
「…アイツがいるだろう」
「それでもだ!たくっ…なら文句言ってないで早く帰れるようにさっさと討伐するぞ」
「予定では行きで2日、討伐に3日、帰りに2日だったか?」
「そうだ、討伐目標は50体でそのうちの1体が例のAランク魔獣だ。まぁ先発隊にいるアイツが暴れてあらかた倒してると見越して実質俺たちの仕事は数体の魔獣と、そのAランク魔獣くらいかな」
「…急ぐぞ」
「はいはい、わかりましたよっと…速度を上げる!遅れず着いてこいっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
ダルイズの掛け声で隊の進む速度が上がる。軍馬のスレイプニルなら昼夜問わず3日走らせても疲れることなどない。
その利点を生かし移動時間を短縮し2日で着く道のりを1日で移動し野営地に到着した。
その後は先発隊と合流し討伐対象の魔獣を狩っていき残りは例のAランク魔獣のみとなった。俺たち第1が着いてからあまりの討伐の速さに先発隊の騎士と冒険者たちが驚いていたり、羨望の目で見られても見ないふり。
だって俺は早く帰ってアサヒを抱きしめると言う目標に向かってただひたすら魔獣を倒しただけなのだから。
「それで、Aランク魔獣は何なのかもう分かったのか?」
「あぁ、エンペラースネークだ。体長10m以上で毒霧が厄介な相手だ」
俺の質問に答えたのは近くにいた先発隊隊長の大柄で大剣を持つスキンヘッドのAランク冒険者バルサに話しかける。
バルサはとはもう10年以上の付き合いだ。厳つい見た目だが豪快で仲間思いの情に厚く信頼のおける男だ。
「エンペラースネークか…面倒だな。」
「何言ってんだよっエンペラースネークなんてお前の魔法で1発じゃねぇかっ」
「倒すのは問題ない…ただ見つけるのが面倒だと言ったんだ。」
「なんだぁそーゆーことかよっ…まぁそうだよなアイツ巨体の癖に無音で近づいてくるから、ちっとでも気ぃ抜いてたり気づくのに遅れるとお陀仏だもんなっ」
はっはっはっはっと大笑いしながら俺の背中をバシバシ叩く。相変わらず見た目通りの馬鹿力だ。ダルイズに至っては被害に遭わないよう少し離れた位置で引きつった顔をしてこちらを見ている。
まぁ、こいつの怪力に耐えられるのは今この場では俺ぐらいだろう。
そんなこんなで魔獣討伐1日目が終わり野営地に戻る。そこは夕食の準備でいい匂いが漂っていて討伐で腹を空かせた男たちがそこに群がる。
俺も具沢山スープを貰い1人椅子替わりの丸太に腰をかける。久しぶりのアサヒのいない夕食。
今まで当たり前だった1人飯がこんなに寂しく感じるなんて…
ふと空を見上げると淡く輝く月がみえる。アサヒも見ているだろうか…頭の中はアサヒのことばかり考えてしまう。
ははっ、俺はもうアサヒがいないとダメだな…
そんなことを考えながら手に持ったスープを頬張った。
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