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結局、冒険者たちは、最初に案内された関所の傍の兵舎に留まるように指示された。
壁の内外を、四六時中見張るようにとのお達しで、いざ戦闘になったら市民の避難誘導を手伝うようにと付け加えられた。
「だが、避難と言っても、どこにだ?」
兵舎の中にある食堂のテーブルに並び、ラトゥフとダーインの遺産の面々が一緒に食事を取っている。
「そうだな。まぁ、壁が崩れるほどのナニモノかと戦闘になったら、俺達の出番はなかろうよ」
メンラットの言葉に、なんら反論は出来ない。
もし相手が異形でなかったとしても、人間よりも魔力の大きな敵だった場合、魔障の危険が伴う。
相手の魔力が強大であった場合、それを防ぐ手段を持たぬ者は、相対することすら出来ないのだ。
それ故に、脆弱な人間は、防護壁を頼ってその周りにスラムを形成し、物理攻撃の危険を犯してでもそこで暮らしているのだ。
「王宮の連中は、冒険者を肉壁かなんかと思ってるのか?」
「どうかな? よくワカランが、俺の知り合いの貴族から聞いた話だと、王の様子がかなりおかしいらしい。怯え方が異常だとな」
「すると、王が錯乱してるのか、なにか先読みのような術で未来視でもしているか……?」
「どう思う、レッド」
意見を出し合っているのに、黙り込んでいるレッドに、メンラットが問うた。
「えっ……さぁ、どうかな。私は王都のことは、詳しくないから……」
らしくもない狼狽えたような顔で、レッドは答えを返す。
「大丈夫か?」
「ああ……大丈夫。だが王が怯えるなんて、一体なにがやってくるのかと考えていて……。錯乱しているだけなら、いいのだが……」
なんだか言葉を濁すと言うよりは、話題を曖昧にするように、レッドは口早にそういった。
「私、今夜は早めに休ませてもらうよ。早朝の巡回当番なのでね」
そう言って、レッドは席を立った。
壁の内外を、四六時中見張るようにとのお達しで、いざ戦闘になったら市民の避難誘導を手伝うようにと付け加えられた。
「だが、避難と言っても、どこにだ?」
兵舎の中にある食堂のテーブルに並び、ラトゥフとダーインの遺産の面々が一緒に食事を取っている。
「そうだな。まぁ、壁が崩れるほどのナニモノかと戦闘になったら、俺達の出番はなかろうよ」
メンラットの言葉に、なんら反論は出来ない。
もし相手が異形でなかったとしても、人間よりも魔力の大きな敵だった場合、魔障の危険が伴う。
相手の魔力が強大であった場合、それを防ぐ手段を持たぬ者は、相対することすら出来ないのだ。
それ故に、脆弱な人間は、防護壁を頼ってその周りにスラムを形成し、物理攻撃の危険を犯してでもそこで暮らしているのだ。
「王宮の連中は、冒険者を肉壁かなんかと思ってるのか?」
「どうかな? よくワカランが、俺の知り合いの貴族から聞いた話だと、王の様子がかなりおかしいらしい。怯え方が異常だとな」
「すると、王が錯乱してるのか、なにか先読みのような術で未来視でもしているか……?」
「どう思う、レッド」
意見を出し合っているのに、黙り込んでいるレッドに、メンラットが問うた。
「えっ……さぁ、どうかな。私は王都のことは、詳しくないから……」
らしくもない狼狽えたような顔で、レッドは答えを返す。
「大丈夫か?」
「ああ……大丈夫。だが王が怯えるなんて、一体なにがやってくるのかと考えていて……。錯乱しているだけなら、いいのだが……」
なんだか言葉を濁すと言うよりは、話題を曖昧にするように、レッドは口早にそういった。
「私、今夜は早めに休ませてもらうよ。早朝の巡回当番なのでね」
そう言って、レッドは席を立った。
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