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第二部:ハリー

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 深夜、市内のホテルの駐車場に、モンテカルロの車が入っていった。
 最上階のスウィートに取った部屋に向かい、ノックをすると、長身の男が扉を開ける。

「遅かったな」
「貴方と違って、定時に仕事を終わらせる訳にはいかないのでね。ところでどうしました? 直に会うなんて危険すぎるのに」

 銀髪をした長身の男は、モンテカルロの苦情をほとんど聞いてはいないような態度で、吸いかけの葉巻を灰皿に押しつけた。

「新しい人間を雇ったそうだが…?」
「ラザフォードの事ですか? やれやれ耳の早い…。貴方のおかげで結構仕事が増えましたからね。大して役には立たなかったがこう忙しいと、マコーミックの手さえ惜しくなりますよ。全く、どこに消えたのか、いまだに見つかりませんや」
「ラザフォードは刑事だ」

 モンテカルロの反応を見ずに、男は次の葉巻に手を伸ばした。

「警官…? あの男が?」
「こんな事ならもっと良く調べてからお前さんと組むべきだったな。三年前にも一人潜り込んでいるようじゃないか」
「そうおっしゃるのなら何とかしてくれなくちゃ、その為に貴方を引きこんだのだから…」
「お前の知っている名前で言うところのラザフォードは、ヴァレンタインの義弟だ。このままだと厄介な事になるぞ」
「お義兄さんの仇討ちという訳ですか。解りました、返り討ちにしてやりますよ」

 男は頷くと、葉巻をくわえ大きく吸い込んだ。

「上手く片付けられるんだろうな?」
「鉄砲玉なんぞ、いくらでもいますからね。なら今夜にでも暴漢に襲われて、あえなく命を落とした事にでもしましょうか?」
「今夜? すぐに片が付くのか?」
「私は迅速な仕事が好きなんでね。それじゃあちょっと失礼して…」

 モンテカルロはポケットから電話を取り出すと、小さなボタンを指先で叩いた。

「ホテルの電話を使えば良かろう?」
「フロントで、どこにかけたかを全部登録されますからね。それくらい、あなたなら判ってらっしゃるでしょうに…」

 ニィッと笑ったモンテカルロに、男は厭な顔をする。

「…もしもし、私だ。一時間ほどで戻るが、それまでに活きのイイ若いのを準備しておいてくれ」

 手配を済ませて通話を切ったモンテカルロに、男はワインをついだグラスを差し出した。

「そんな、能のない若いのに任せて大丈夫なのか?」
「そいつが失敗した時には、ロイにでも片を付けさせますよ。偶然にもラザフォードと組ませてありますからね」
「…能のない若いのが、いきがってその切り札まで殺してしまわん事を祈るよ」

 モンテカルロが受け取ったグラスに、自分の持っているグラスをあてて、男はワインをクイッと飲み干した。
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