ワーカホリックな彼の秘密

RU

文字の大きさ
上 下
13 / 107

第13話

しおりを挟む
「大丈夫ですか?」

 声を掛けられて、柊一はハッとなる。

「あ…」

 身体は全裸のままだったが、ベッドの上に横たえられていた。

「良かった。なかなか目を覚まさないから、心配しちゃいました」
「あ、俺……っ」

 慌てて身体を起こし、柊一は咄嗟に自分の着衣を探す。

「柊一サン?」
「スマン、神巫。これは事故だ」

 柊一はベッドから降りようとしたが。
 神巫は柊一の身体を抱くと、そのまま自分もろともベッドに倒れ込む。

「事故? 無かった事にしてくれって?」

 真正面から覗き込まれて、柊一は咄嗟に視線を逸らせられない。

「せっかく柊一サンのヴァージン貰っちゃったって言うのに、コレでオシマイ?」

 少し子供っぽいファニーフェイスが、いつもの人懐こい笑みを浮かべてみせる。

「そりゃ、あんまりじゃないですか?」
「神巫、なに言って……」
「スミマセン、俺ってばてっきり柊一サンを『経験者』だとばっかり思いこんでいて。…初めのうちの抵抗は、単に俺を警戒してるだけだろうって……。初めてだって知ってたら、もっと気を遣ったんですけど…」
「そんなコトは、別にどうでもいいっ」

 それを話題にされる事がどうにも堪えられなくて、柊一は咄嗟に声を荒げてしまった。
 こうなってくるともう、恥ずかしいのか悔しいのかはたまた腹立たしいのかすら自分でも判らない。

「どうでもなんて、良くないですよ!」

 途端にもっと強い語調で返されたと思ったら、神巫は先程までの笑みを引っ込めて真剣な顔で柊一を睨みつけてくる。

「ゴメンナサイ。…でもコレって強姦……ですよね? いえ、最初から確かに合意ってワケじゃなかったですけど。でも、柊一サンが単に俺を警戒してて、俺が興味本位で柊一サンの身体を捻くり回すって思われてるんだろうなって思って…。だから、そうじゃないんですって判って貰いたくて……。でも、柊一サンが初めてだったってコトは、俺が考えていたようなそんな生易しいレベルじゃなくて、身体を他人に触れられるのが怖かったんでしょう? 俺、ホントに柊一サンに酷いコトがしたかったワケじゃなくて……」
「だから、もういいからっ! 頼むからその話は、もう止めにしてくれっ!」

 柊一は神巫の手を振りほどくと、ベッドから降りたって床に散らかっている下着を掴み、慌てて身につけた。

「しゅ……東雲サンッ!」

 ガバッと飛び起きると、神巫は背中を向けている柊一の肩を掴んで、強引に自分の方に顔を向けさせる。

「俺と付き合ってくださいっ!」
「断るっ!」

 咄嗟に強い語調で言葉を返してしまい、一瞬にして神巫の表情が傷ついた物に変わった事で柊一はハッとなった。

「スマン、神巫。オマエが悪いワケじゃない。……ただ俺は、誰かと付き合ったりなんて言うのは全然考えたコトもなくて…。今日のコレも、発作というか……俺の身体はえらく中途半端だから、ちょっとしたコトですぐにバランスが崩れて先刻みたいなコトになってしまうんだ」
「じゃあ、つまり。時々あんな風に、乱れてしまうんですか?」
「………………ああ、そうだ」

 認めたくはなかったけれど、自分に対してなにか勘違いをしているらしい神巫を突き放す為に、柊一は敢えてそれをハッキリと認めてみせる。

「1人で?」
「そうだ」
「そんな、モッタイナイ!」

 神巫の返事に、柊一は腹が立つより先に呆れてしまったが。
 しかしそれを口に出す前に、神巫の両腕が柊一の身体をギュウッと抱きしめてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

処理中です...