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認定待ちの聖女の列

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「まだ大聖堂の認定がお済みでない聖女様はこちらにお並びください」

 大聖堂の前で、神官服を着た若い神父らしき人が大聖堂前の大広場に向けて大きな声を張り上げていました。
 見ると、その声に応えるように何人かの『聖女』が、その列に並んでいくのが見えます。

「本当にこの全員が聖女なの?」

 列に並んでいるだけでも十人以上。
 門兵さんが言っていた事が本当なら、大聖堂の中には更に何百人もの『聖女』がいるはずです。

 私は少し目眩を覚えふらつきそうになりましたが、ぐっとお腹に力を込めて耐えます。
 それだけの数の『聖女』が同時に現れたという事は、この国に今とんでもない危機が訪れているに違いありません。
 王都に着くまで自分こそが特別な存在なのだと少し天狗になっていましたが、今はその事を少し恥じつつ、自分の使命を全うするため列に向かいました。

「あなたも『聖女様』ですね?」

「はい」

 若い神父さんの指示に従い、私は列の最後尾につきます。

「びっくりしたでしょう?」

 私の前に並んでいた聖女様が振り返って声をかけてくれました。
 長い銀髪の髪を揺らし微笑む彼女はまさに『聖女』そのもの。
 田舎娘でしかない私なんかとは比べるべくもないくらい輝いて見えます。

「え、ええ。まさかこんなに沢山の聖女様がいらっしゃるなんて思いもしませんでした」

「私は昨日この王都へ来たばかりなんだけど貴方は?」

「私は今日着いたばかりです」

「そうなの。それじゃあ早めに宿を手配した方が良いわよ」

「宿ですか?」

「ええ、本当なら聖女は大聖堂の中にある部屋を与えられるらしいんだけど」

 彼女はそう口にしてから前を指さし、言葉を続けます。

「こんな状況でしょ? とてもじゃないけど教会だけでは宿泊場所が足りないらしいのよね」

「でも私あまりお金が」

「それなら大丈夫よ。聖女の滞在費用は全て国と教会が出してくれる事になってるらしいわ」

「そうなんですか?」

 私が首を傾げていると、その話を聞いていたのか若い神父が声をかけてきました。

「ええ、そのお嬢さんの仰る通りですよ。全ての資金は用意されてますので安心してください」

「助かります」

 村の皆が協力して旅のお金を用意してくれたとは言っても、所詮田舎の寒村の話。
 物価も高いであろう王都で過ごすには心許ない程度の金額しか既に手持ちは無かったのです。

「でしょ」

「ほっとしました」

 私は彼女の言葉にそう笑い返しました。 
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