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第二章
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しおりを挟む「リオ、こっちだ~」
数メートル先で手を振る兄上の姿が見えた。
明るく目立つプラチナブロンドの長い髪を一括りにしている長身の彼を見つけるのは容易い。
私はすぐに彼の元へと足を進めた。
「兄上、今日は協力してくださりありがとうございます!」
「良いんだよ、リオ。君が外に出て人と関わろうとしていることが私はとても嬉しいよ。成長したんだね」
兄上のその言葉に私はにっこりと微笑んだ。
本当はまだ人となんて関わりたくない。
だけど、マリーを傷つけた人間を放っておけるほど私は…………優しくなかった。
「………………………絶対に後悔させてやる…………。」
「え、なんか言ったかい?リオ」
「いいえ、兄上。僕、最初は隅にいますね!少し慣れたら、一緒に回ってくださいますか??」
「あぁ、勿論だよ。あそこのテラスなんかはあまり人が来ないからオススメだよ。………では、また後でね」
そう言い残して、兄上は人の多い会場の中心へと向かって行った。
今日、私が来ているのは宰相の屋敷で、宰相の誕生日を祝う夜会が行われていた。
普段は夜会などに顔は出さないため、出席をしたいと言う旨を伝えた時、兄上は非常に驚いていた。
魔力を暴走させたあの日から極力人に会わないようにしていた私に何があったのか、と思ったことだろう。
私が”会いたい人とやりたいことがある”と伝えると兄上はそれ以上のことは聞かずに了承してくれた。
信用してくれている兄上のためにも面倒は起こさないようにしなくては…………。
私は会場の隅の目立たないところで観察を始めた。
今回の目当てはマリーの元婚約者のロベルトと、マリーの姉であったミラだ。
ロベルトは社交界では有名人だったし、ミラの情報もユズリに調べてもらったため、彼らの性格についてはもうよく知っていた。
しばらくすると、令嬢達の歓声が聞こえて来てロベルトが会場入りしたことが伺えた。
ロベルトとミラは腕を組んで入って来たが、ミラは周囲の目線を気にしてかすぐにその腕を離していた。
ロベルトはそれにも構わずミラに引っ付いていたが、ロベルトの見えない角度でミラが不快そうに顔を歪めているのが確認できた。
マリーの言う通り、ミラの狙いがロベルトではなかったのがよく分かる光景だった。
私はそれを確認した後、会場の中へ足を踏み入れた。
大勢の視線が絡みつき、注目されているのがわかった。
冷や汗が流れるのを感じたが、私はそのまま兄上の元へと向かった。
兄上は数人の貴族に私を紹介した。
周囲からは
”あれが表舞台に顔を出さないと有名な第二王子か”
”魔物付きなんて不気味なイメージでしたけど、とても美しい方だわ”
”第一王子は婚約者がいらっしゃるけれど、第二王子にはいないそうよ”
と言った声が聞こえて来た。
この場の全ての人が今、自分を値踏みしているかのようで居心地が悪かったが辛抱した。
兄上と少し離れた瞬間、私は大勢の令嬢の周囲を囲まれた。
強い香水の匂いに顔を歪めそうになるが、笑顔で応対する。
そして、視線の端ではロベルトとミラが何かを話している様子が見られた。
ミラが指差している方向は…………控え室のようだった。
それに頷いてロベルトは会場から出て行く。
その瞬間、ミラはこちらを見た。
視線が交錯した。
私はテラスにいるであろうユズリに合図をした。
……………ここまでは予想通りだった。
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