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そして終戦へ
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ザクトとドンウォンが兵を率いて砦近郊にまで辿り着いた時には既に夥しい程のゴーレムが陣を展開していた。
王宮に潜んでいる魔族の影からの連絡もあったのだが、それよりも王国兵の規模を把握していた田代達が先に砦に帰って来たことが、一番の要因であった。
田代達は砦に着くなり、坂下の安否報告よりも王国兵に着いて詳しくフォーグとミスオに報告した。
そしてフォーグ達の対応策が落ち着いた頃に氷の精霊術師との話し合いについて報告することになった。
影からの報告を随時受けていたのだが、その件についてもフォーグ達の既知であった。
しかし素知らぬ顔でフォーグ達は田代の報告を聞いて、苦渋の決断を取った田代達を褒めたのだ。
「この件に関しては陛下の指示を仰がねばならん。耐えてくれるか?タシロ殿、キサラギ殿」
「帝国は本当に良くして下さっています。それに僕達は既に帝国兵の一員です。坂下は気丈な女性ですし、例え拷問されても此方の情報を渡したりしないでしょう」
自信を持って言う田代に、フォーグの片方の眉が僅かに動いた。
風壁で部屋を覆われて話し合いがなされた王国宰相のメモルラルと、氷の精霊術師であるキースの密談は影でも内容が出来ていなかったが、坂下が情報を既に渡したことはフォーグ達は知っている。
こういう時の為に、勇者達には重要な情報は渡していなかったのだが。
「分かった。報告御苦労だった。すまないが休む暇を与えられない状況でもある。早速王国兵を迎え打ってくれるか?」
「「はい!」」
田代は今の状況が当然の様に、如月はフォーグ達に怒られなかったことにホッとして部屋から出て行った。
「彼等の間には信頼が浮き沈みしていますね」
「この戦いで一皮剥ければ他に使い様もあるんだがな」
フォーグの言葉にミスオは苦笑いする。
「漸く帝国兵として自覚を持った若者と貴方を一緒にしては行けませんよ」
今でも語り草になっているフォーグの初陣は、義父のバイロス侯爵も一瞬呆けた顔をしてしまった程アッサリと終わったらしい。
陽動する側の部隊に居たフォーグは、十代にも関わらずその風貌と巨体から敵に隊長クラスだと勘違いされ、狙れるやいなや付近に居た敵を一蹴し撃破してしまう。
そのまま本陣に向かうことになり、敵将の首を取ってしまった(フォーグ本人は敵将だと知らなかった)。
困ったフォーグは部隊長に首を渡し、素知らぬ顔で一隊員に戻ろうとするが、実力主義の帝国軍の部隊長は大笑いしながらもバイロス侯爵へ事実を告げた。
報告を受けたバイロス侯爵は部隊長に「息子が済まんな」と謝罪するが、それは今でも笑い話である。
フォーグはミスオにそう言われ眉根を寄せた。今、非常に恐ろしい表情をしているが、実は戸惑っている表情であることをミスオは知っている。
そんなフォーグを可愛いと思っているのは内緒である。
戦は情報戦が要と言って良い。
「氷結の精霊術師で無ければ恐るるに足らず!全ゴーレムを前に出せ!」
ザクトとドンウォンがゴーレムの結界を破れなかったことは帝国軍に知れ渡っている。
そして今回の衝突に氷結の精霊術師は出陣しないことも把握しているので惜しみなくゴーレムを投入したのだ。
その数100体。
田代達が合流する頃には半分の王国兵が捕縛されていた。
ザクトはドンウォンが持っている魔術スクロールを破かせてキースに助けを求める様に言うが、ドンウォンは青い顔をしたまま「無い」と呟いた。
「ふ、ふざけるなッス!」
「ふざけてない!ちゃんと持ってたんだ!」
しかし何処を探っても見付からず、王国兵が騒乱の中、無力化され捕縛されているのを見るしか無かった。
そう、彼等の精霊は彼等の詠唱に答えなかったのだ。
そしてザクトの目の前には、あの時燃やしたはずの男が立っている。
「あ、あ、あ、ご、ごめんなさいッス!あれはキースが殺れって命令したんス!俺は悪くないッス!」
尻もちを付いたまま後退りするザクトに、如月の恐怖心はもう無かった。
それに自分を殺すと言い出したのは氷結の精霊術師では無く、この男だったことも覚えている。
如月の拳が魔力で青白く光りザクトの右頬に吸い込まれる。
避ける余裕も無くヒットした拳はザクトの頬骨を一瞬で変形させ、その身体は地面に土塊を作りながら5m程吹っ飛ばされた。
「ヒィグッ」
顔の右側が削られた様に凹んでいるザクトはマトモに言葉を発することが出来ず、只管涙を流して平伏するが、如月の拳は次も振り下ろされた。
「翔」
田代が如月に声を掛けた時には、ザクトの身体は殴られ続けた為に上半身程の大きさの肉塊に圧縮されていた。
「翔、自分の拳も大事にしなよ」
そう言われてポーションを渡される。
見ればガントレットは魔力と打撃に耐えきれず壊れており、自身の指が数本変な方向に折れ曲がっていた。
頭に血が上ってしまっていたことに反省する如月は
「次は上手くやるよ」
と、ポーションを飲んで田代にそう言った。
ドンウォンの方はと言えば、そうそうに降伏した為かすり傷程度で捕縛された。
ヴェズリー王国の王宮では、キースが自分の支配下に入った火の低級精霊と雷の低級精霊を確認していた。
(なるほど、死ななくても『分配』は解除されるんだな)
(スキルの検証は済んだし、王国側は精鋭である精霊術師を四人失った。王族を糾弾するネタは出来たな)
フォーグから精霊術師についての報告を受けた王国潜入中の影は宰相のメモルラルにも報告する。
戦後交渉に奴隷解放と氷結の精霊術師の保護を加えたメモルラルは帝国側の返事を待った。
帝国側がこれを了承し、勇者坂下のことは王国の王族の処刑を待ってから再び行われることになった。
いよいよ王族の断罪である。
王宮に潜んでいる魔族の影からの連絡もあったのだが、それよりも王国兵の規模を把握していた田代達が先に砦に帰って来たことが、一番の要因であった。
田代達は砦に着くなり、坂下の安否報告よりも王国兵に着いて詳しくフォーグとミスオに報告した。
そしてフォーグ達の対応策が落ち着いた頃に氷の精霊術師との話し合いについて報告することになった。
影からの報告を随時受けていたのだが、その件についてもフォーグ達の既知であった。
しかし素知らぬ顔でフォーグ達は田代の報告を聞いて、苦渋の決断を取った田代達を褒めたのだ。
「この件に関しては陛下の指示を仰がねばならん。耐えてくれるか?タシロ殿、キサラギ殿」
「帝国は本当に良くして下さっています。それに僕達は既に帝国兵の一員です。坂下は気丈な女性ですし、例え拷問されても此方の情報を渡したりしないでしょう」
自信を持って言う田代に、フォーグの片方の眉が僅かに動いた。
風壁で部屋を覆われて話し合いがなされた王国宰相のメモルラルと、氷の精霊術師であるキースの密談は影でも内容が出来ていなかったが、坂下が情報を既に渡したことはフォーグ達は知っている。
こういう時の為に、勇者達には重要な情報は渡していなかったのだが。
「分かった。報告御苦労だった。すまないが休む暇を与えられない状況でもある。早速王国兵を迎え打ってくれるか?」
「「はい!」」
田代は今の状況が当然の様に、如月はフォーグ達に怒られなかったことにホッとして部屋から出て行った。
「彼等の間には信頼が浮き沈みしていますね」
「この戦いで一皮剥ければ他に使い様もあるんだがな」
フォーグの言葉にミスオは苦笑いする。
「漸く帝国兵として自覚を持った若者と貴方を一緒にしては行けませんよ」
今でも語り草になっているフォーグの初陣は、義父のバイロス侯爵も一瞬呆けた顔をしてしまった程アッサリと終わったらしい。
陽動する側の部隊に居たフォーグは、十代にも関わらずその風貌と巨体から敵に隊長クラスだと勘違いされ、狙れるやいなや付近に居た敵を一蹴し撃破してしまう。
そのまま本陣に向かうことになり、敵将の首を取ってしまった(フォーグ本人は敵将だと知らなかった)。
困ったフォーグは部隊長に首を渡し、素知らぬ顔で一隊員に戻ろうとするが、実力主義の帝国軍の部隊長は大笑いしながらもバイロス侯爵へ事実を告げた。
報告を受けたバイロス侯爵は部隊長に「息子が済まんな」と謝罪するが、それは今でも笑い話である。
フォーグはミスオにそう言われ眉根を寄せた。今、非常に恐ろしい表情をしているが、実は戸惑っている表情であることをミスオは知っている。
そんなフォーグを可愛いと思っているのは内緒である。
戦は情報戦が要と言って良い。
「氷結の精霊術師で無ければ恐るるに足らず!全ゴーレムを前に出せ!」
ザクトとドンウォンがゴーレムの結界を破れなかったことは帝国軍に知れ渡っている。
そして今回の衝突に氷結の精霊術師は出陣しないことも把握しているので惜しみなくゴーレムを投入したのだ。
その数100体。
田代達が合流する頃には半分の王国兵が捕縛されていた。
ザクトはドンウォンが持っている魔術スクロールを破かせてキースに助けを求める様に言うが、ドンウォンは青い顔をしたまま「無い」と呟いた。
「ふ、ふざけるなッス!」
「ふざけてない!ちゃんと持ってたんだ!」
しかし何処を探っても見付からず、王国兵が騒乱の中、無力化され捕縛されているのを見るしか無かった。
そう、彼等の精霊は彼等の詠唱に答えなかったのだ。
そしてザクトの目の前には、あの時燃やしたはずの男が立っている。
「あ、あ、あ、ご、ごめんなさいッス!あれはキースが殺れって命令したんス!俺は悪くないッス!」
尻もちを付いたまま後退りするザクトに、如月の恐怖心はもう無かった。
それに自分を殺すと言い出したのは氷結の精霊術師では無く、この男だったことも覚えている。
如月の拳が魔力で青白く光りザクトの右頬に吸い込まれる。
避ける余裕も無くヒットした拳はザクトの頬骨を一瞬で変形させ、その身体は地面に土塊を作りながら5m程吹っ飛ばされた。
「ヒィグッ」
顔の右側が削られた様に凹んでいるザクトはマトモに言葉を発することが出来ず、只管涙を流して平伏するが、如月の拳は次も振り下ろされた。
「翔」
田代が如月に声を掛けた時には、ザクトの身体は殴られ続けた為に上半身程の大きさの肉塊に圧縮されていた。
「翔、自分の拳も大事にしなよ」
そう言われてポーションを渡される。
見ればガントレットは魔力と打撃に耐えきれず壊れており、自身の指が数本変な方向に折れ曲がっていた。
頭に血が上ってしまっていたことに反省する如月は
「次は上手くやるよ」
と、ポーションを飲んで田代にそう言った。
ドンウォンの方はと言えば、そうそうに降伏した為かすり傷程度で捕縛された。
ヴェズリー王国の王宮では、キースが自分の支配下に入った火の低級精霊と雷の低級精霊を確認していた。
(なるほど、死ななくても『分配』は解除されるんだな)
(スキルの検証は済んだし、王国側は精鋭である精霊術師を四人失った。王族を糾弾するネタは出来たな)
フォーグから精霊術師についての報告を受けた王国潜入中の影は宰相のメモルラルにも報告する。
戦後交渉に奴隷解放と氷結の精霊術師の保護を加えたメモルラルは帝国側の返事を待った。
帝国側がこれを了承し、勇者坂下のことは王国の王族の処刑を待ってから再び行われることになった。
いよいよ王族の断罪である。
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