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神々の思惑
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私の名前はローマンザック。
とある世界の創造神をしている。
私の世界は現在安定しており、予想通りまずまずの進化を遂げている。
なので部下に任せ、暫く地球観光に行ってみることにした。
地球は私達神が創った世界にしては変わっている。
普通は創造神一人が核を創り、それを大事に温めて、ある程度球になって生物の進化が始まったら上級神と下級神を何人か呼ぶか、神獣を何体か創って管理を手伝ってもらうのだ。
因みに私の世界は私に似た神獣を創った。ケット・シーだ。
しかし地球は最初から何百と言う神が集まって創られたのだ。確か初めて創造神なる者が誕生した記念日のイベントだったと思う。
私は忙しくて参加出来なかったが、聞いたところによると、あまりにも多くの神がはっちゃけて創ったので、地球自体に魔素が残らなかったらしい。
魔素は魔法の素になるものだ。世界によって魔法と言われたり魔術と言われたりするが同じものだ。
私の世界でも生き物達全てに魔力が備わり、魔素を丹田の内側に取り入れて魔法を使っている。強弱はあるが、そこは徹底している。
地球は他とは全く違う進化を遂げて、今は爆発的に増えた人族から、他の生物をどう守るかが課題になっているらしい。
ただまぁ、文化的には面白いので遊びにおいでと、私を含む他の世界の創造神に招待状が送られてきたのだ。
遊ぶ上で注意事項も書かれていた。
人型なら服装は目立たない物を選ぶこと。他の姿の場合は地球に存在しているものになること。
出来るだけ人族に関わらないこと。もし関わった場合、例えどんなに悪だったとしても神罰を与えないこと。
当たり前のことしか書いてない。私達は招待される側なのだから異論は無い。
私の真の姿は猫の頭に人型の身体だ。
今回は猫型に合わせることにしてみた。
地球は面白かった。魔素の代わりに化学が発達している。
地球よりも文化が進んだ世界も見学したことはあるが、食事が美味しいのは断然地球の方だった。
西の方の国では私の世界と似たような建築物があり、人族の容姿も大体似通っていた。
美味しい物を分けてくれる人族も居て、私はご機嫌だった。
次は東の方に行ってみた。
何か空気が悪い。西の方も人族が多いとこはそうだったけど、ここは特に温かみの無い建物ばかりで息が詰まった。
私の気分がだだ下がりし、人族が少ない空気の良い場所へ転移した時だった。
いつもなら転移先を確認するのだが、その時は早く美味しい空気を吸いたかった。
後悔しても遅く、犬の目の前に転移した私の足に鋭い痛みが走った。
焦って元の姿にも戻ることが出来ず、必死に抵抗していた時に、何かが私と犬の間に入って来た。
人族の子供だった。
駄目だ、子供ではこの大きさの犬にヤラれてしまう!
そう思ったが、意外に犬は諦めが良かった。
それから私はその子供の祖父母の家で過ごした。
回復魔法を使えば直ぐにでも治る傷だったが、その子供、彼の私を撫でる手が、暖かい声が、溢れる程の愛情の波動がとても心地良かった。
心地良過ぎた。
なかなか帰らない私に部下から泣きが入り、帰らざるを得なくなった。
私は泣く泣くその場を後にした。彼にマーキングして。
一緒に居る間、私は彼の過去を覗き見ていた。
私の世界の人族の間でもこれより酷い目に合っている子供は居るが、何とか生きようとするし、人族以外の生物はもっと悲惨だったりすることもある。
しかし彼の場合、何かが違った。その様な目に合うと、少なからず魂にヒビが入ったりくすんだりするのだが、彼は染み一つ無い魂を持っていた。
不思議に思い、彼の前世を何代かに渡って確認してみれば、いつの時代にも人の為に尽くし、そして裏切られても許し、自分の為に生きること無く死んでいっていた。
私は自分の世界に帰る前に地球のあの場所担当である神に、彼を受け入れたいと申し出た。
地球では人族の増加で、他の世界への受け入れをスムーズにする為、異世界関係の話を人族に浸透させていると聞いていたからだ。
担当の神に彼を見てもらう。
「え?もう神の眷属になっていいぐらいの魂の美しさなんだけど?」
「だよね、私もそう思ったよ。もう試練を与えなくてもいいんじゃないかな?」
「そうだね。でもどうしよう。この魂だと君の世界じゃ神獣より上になっちゃうけど?」
「え、マジで?」
「うん、あ、ちょっと待って。確か地球から右23番目のパラレルワールドの創造神カルキントスが22番目の世界の女神と駆け落ちして、23番目の世界は完全に放置されてるみたい。22番目の創造神のマクセルワイヤーがめちゃくちゃ怒ってるらしいよ」
「放置!?何考えてんだ!そりゃマクセルワイヤーも怒るよ!」
「だよね。だからさ、彼を23番目の管理者にしない?神になるには少し試練はあるけど」
「それ良いね!試練は私が考えるから、地球から移動する手続きしてくれる?」
「了解。彼が死ぬ前になるだけ早く手続き済ませるよ」
「頼んだ。じゃあ、連絡待ってるよ」
地球の日本には担当部署が八百万あるから、時間がかかるだろうけど、彼が神になればいつでも会える。
そしたら一杯あの暖かな手で撫でてもらえる。
あの場所担当の彼から連絡が来て私が彼を迎えに行った時、彼は燃え盛る建物の前で呆然としていた。
私は地球を去ってからの彼の動向を全て確認した。
彼は祖父母が亡くなってからも特に幸福を感じられない生活をしていたようだ。
大人になった分、色々なことに興味を示した様だが、彼の魂は相変わらず美しかった。
しかし最後の最後まで彼に徳を積ませるとは、日本担当の神々達はどれだけ上質な魂を作り出そうとしているのか。
私は彼を眠らせ、23番目の世界の神域に連れて行く。
既に彼にとって使い勝手が良い家が出来ていた。
試練を確認してみると中々の出来栄えで、これなら新米神である彼でも浄化が出来るだろう。
徐々に身体も作り変えないといけないから、私の神力を混ぜた神水を切らさないようにして、後は彼の眷属となる家精霊のブラウニー達とこの家を同期しよう。
フェンリル達には先に説明したけど、後から神域の浮島に来た精霊王、精霊達、光龍にも現状を説明する。
彼が完全に神になるまで、彼は私だけのものにしよう。
いいよね?
だってフェンリルのモフモフの良さが分かったら、私を触ってくれなくなるかもしれないし。
今だけ、今だけだから。
羨ましそうな目で見てくるフェンリル達の視線に、私は目を逸らした。
とある世界の創造神をしている。
私の世界は現在安定しており、予想通りまずまずの進化を遂げている。
なので部下に任せ、暫く地球観光に行ってみることにした。
地球は私達神が創った世界にしては変わっている。
普通は創造神一人が核を創り、それを大事に温めて、ある程度球になって生物の進化が始まったら上級神と下級神を何人か呼ぶか、神獣を何体か創って管理を手伝ってもらうのだ。
因みに私の世界は私に似た神獣を創った。ケット・シーだ。
しかし地球は最初から何百と言う神が集まって創られたのだ。確か初めて創造神なる者が誕生した記念日のイベントだったと思う。
私は忙しくて参加出来なかったが、聞いたところによると、あまりにも多くの神がはっちゃけて創ったので、地球自体に魔素が残らなかったらしい。
魔素は魔法の素になるものだ。世界によって魔法と言われたり魔術と言われたりするが同じものだ。
私の世界でも生き物達全てに魔力が備わり、魔素を丹田の内側に取り入れて魔法を使っている。強弱はあるが、そこは徹底している。
地球は他とは全く違う進化を遂げて、今は爆発的に増えた人族から、他の生物をどう守るかが課題になっているらしい。
ただまぁ、文化的には面白いので遊びにおいでと、私を含む他の世界の創造神に招待状が送られてきたのだ。
遊ぶ上で注意事項も書かれていた。
人型なら服装は目立たない物を選ぶこと。他の姿の場合は地球に存在しているものになること。
出来るだけ人族に関わらないこと。もし関わった場合、例えどんなに悪だったとしても神罰を与えないこと。
当たり前のことしか書いてない。私達は招待される側なのだから異論は無い。
私の真の姿は猫の頭に人型の身体だ。
今回は猫型に合わせることにしてみた。
地球は面白かった。魔素の代わりに化学が発達している。
地球よりも文化が進んだ世界も見学したことはあるが、食事が美味しいのは断然地球の方だった。
西の方の国では私の世界と似たような建築物があり、人族の容姿も大体似通っていた。
美味しい物を分けてくれる人族も居て、私はご機嫌だった。
次は東の方に行ってみた。
何か空気が悪い。西の方も人族が多いとこはそうだったけど、ここは特に温かみの無い建物ばかりで息が詰まった。
私の気分がだだ下がりし、人族が少ない空気の良い場所へ転移した時だった。
いつもなら転移先を確認するのだが、その時は早く美味しい空気を吸いたかった。
後悔しても遅く、犬の目の前に転移した私の足に鋭い痛みが走った。
焦って元の姿にも戻ることが出来ず、必死に抵抗していた時に、何かが私と犬の間に入って来た。
人族の子供だった。
駄目だ、子供ではこの大きさの犬にヤラれてしまう!
そう思ったが、意外に犬は諦めが良かった。
それから私はその子供の祖父母の家で過ごした。
回復魔法を使えば直ぐにでも治る傷だったが、その子供、彼の私を撫でる手が、暖かい声が、溢れる程の愛情の波動がとても心地良かった。
心地良過ぎた。
なかなか帰らない私に部下から泣きが入り、帰らざるを得なくなった。
私は泣く泣くその場を後にした。彼にマーキングして。
一緒に居る間、私は彼の過去を覗き見ていた。
私の世界の人族の間でもこれより酷い目に合っている子供は居るが、何とか生きようとするし、人族以外の生物はもっと悲惨だったりすることもある。
しかし彼の場合、何かが違った。その様な目に合うと、少なからず魂にヒビが入ったりくすんだりするのだが、彼は染み一つ無い魂を持っていた。
不思議に思い、彼の前世を何代かに渡って確認してみれば、いつの時代にも人の為に尽くし、そして裏切られても許し、自分の為に生きること無く死んでいっていた。
私は自分の世界に帰る前に地球のあの場所担当である神に、彼を受け入れたいと申し出た。
地球では人族の増加で、他の世界への受け入れをスムーズにする為、異世界関係の話を人族に浸透させていると聞いていたからだ。
担当の神に彼を見てもらう。
「え?もう神の眷属になっていいぐらいの魂の美しさなんだけど?」
「だよね、私もそう思ったよ。もう試練を与えなくてもいいんじゃないかな?」
「そうだね。でもどうしよう。この魂だと君の世界じゃ神獣より上になっちゃうけど?」
「え、マジで?」
「うん、あ、ちょっと待って。確か地球から右23番目のパラレルワールドの創造神カルキントスが22番目の世界の女神と駆け落ちして、23番目の世界は完全に放置されてるみたい。22番目の創造神のマクセルワイヤーがめちゃくちゃ怒ってるらしいよ」
「放置!?何考えてんだ!そりゃマクセルワイヤーも怒るよ!」
「だよね。だからさ、彼を23番目の管理者にしない?神になるには少し試練はあるけど」
「それ良いね!試練は私が考えるから、地球から移動する手続きしてくれる?」
「了解。彼が死ぬ前になるだけ早く手続き済ませるよ」
「頼んだ。じゃあ、連絡待ってるよ」
地球の日本には担当部署が八百万あるから、時間がかかるだろうけど、彼が神になればいつでも会える。
そしたら一杯あの暖かな手で撫でてもらえる。
あの場所担当の彼から連絡が来て私が彼を迎えに行った時、彼は燃え盛る建物の前で呆然としていた。
私は地球を去ってからの彼の動向を全て確認した。
彼は祖父母が亡くなってからも特に幸福を感じられない生活をしていたようだ。
大人になった分、色々なことに興味を示した様だが、彼の魂は相変わらず美しかった。
しかし最後の最後まで彼に徳を積ませるとは、日本担当の神々達はどれだけ上質な魂を作り出そうとしているのか。
私は彼を眠らせ、23番目の世界の神域に連れて行く。
既に彼にとって使い勝手が良い家が出来ていた。
試練を確認してみると中々の出来栄えで、これなら新米神である彼でも浄化が出来るだろう。
徐々に身体も作り変えないといけないから、私の神力を混ぜた神水を切らさないようにして、後は彼の眷属となる家精霊のブラウニー達とこの家を同期しよう。
フェンリル達には先に説明したけど、後から神域の浮島に来た精霊王、精霊達、光龍にも現状を説明する。
彼が完全に神になるまで、彼は私だけのものにしよう。
いいよね?
だってフェンリルのモフモフの良さが分かったら、私を触ってくれなくなるかもしれないし。
今だけ、今だけだから。
羨ましそうな目で見てくるフェンリル達の視線に、私は目を逸らした。
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