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光龍現る
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光龍が消えてから半月程経った頃、辺境伯領から裏ギルドの支部を解体出来たとの報告がタナトスまで上がってきた。
ライソン帝国の歴史を紐解けば、元は国とも言えない程の小さな地域の部族だった。
その部族が力を外に示し初め、ある時は併合を、ある時は侵略をし、アンドリュースの曾祖父の時代には小国から併合を求められる大国になった。
清濁併せ呑むイメージではあるが、全てが帝国有利に動いたわけでは無かった。
併合反対の勢力がレジスタンスと聞こえの良い名前で併合後に帝国内で略奪行為や最悪殺しまで行い、治安部隊が取り締まりを強化するが裏ギルドと協力関係を持った自称レジスタンスの悪行が横行する地域が存在した。
光龍が居た島から一番近い辺境伯領も、ここ一年で裏ギルドが行っていると思われる詐欺や誘拐、暴行事件等が目立ってきており、皇都から騎士が治安部隊の応援に送られていた。
その甲斐あってのことだろうとタナトスは詳細が書き記された書類を読んでいくと、不可解なことがあったことを知った。
「これはどういうことだ?」
タナトスはその書類を持ってアンドリュースの執務室に入る。
「陛下、実はちょっと気になることが「ピィーーー」ん?伝魔鳥?」
青い鳥が執務室内をグルリと一周し、タナトスの肩に降り止まった。
『ドーンです。光龍様が現れました』
「光龍が?」
アンドリュースの問いにタナトスは伝魔鳥の続きを待つが、かなり焦って飛ばしたのか、その報告以外は告げることがなかった。
すると続け様に青い鳥が入ってくる。
『光龍様に酒を所望されました』
「は?」
タナトスが思わず真顔になる。
『酒が飲みたいと、現在私は捕まえられております。それと先日送った報告の裏ギルドについて何か情報があるそうです。如何に対処致しましょうか?』
「陛下、実はドーン辺境伯領で裏ギルドの支部が解体されたとの報告が上がってきておりまして」
光龍に捕まえられているドーン辺境伯を想像しながらタナトスはアンドリュースの言葉を待つ。
「ふむ、ならば光龍にとっておきの酒を献上する様に伝えよ。それとリュータローを呼べ」
「うわ、何だか嫌な予感するのですが?」
「当たりだ。余も光龍に会ってみたい」
「やっぱりーーー!」
コメカミを揉みながらも、アンドリュースの性格を知っているタナトスには反対しても無意味なことが分かり諦める。
タナトスは直ぐにリュータローと辺境伯領へ伝魔鳥を送った。
田代が到着し、それから30分後にはカーペットにアンドリュース、如月、坂下、陣野、従者兼マネージャーのカルーが乗って辺境伯領へ出発していた。
高所恐怖症の如月がウーウー唸りながら顔を手で隠している姿を見て女性陣は無視していたが、アンドリュースは如月の肩をガッチリ掴んで慰めていた。
カーペットに乗らずに一人で飛んでいた田代は、それを見て羨ましそうにしていた。
「くっ、アンタナ(アンドリュース×タナトス)が、アンカケ(アンドリュース×翔)?いや、田代も入って四角関係とか美味し過ぎるっ(小声)」
ぐふぐふと笑みを浮かべる坂下を陣野はジト目で見ていた。
二時間程前のこと、ドーン辺境伯領の領民は雲の切れ間から突然現れた巨大な白い龍を目の当たりにした。
ある者は腰を抜かし、ある者は泣き出し、ある者は建物の中へと逃げ込んだ。
「この土地に住む人間達よ。ワシは光龍。昨年は祭に参加出来ず、残念な思いをした。すまんが酒を所望したい」
この言葉に領民はポカーンとするしかなかった。
光龍は光を放ちながら少しずつ小さくなっていき、そのまま白い長髪の美青年に姿を変える。
「あ!コウさんじゃないか!あんた、光龍様だったのか!」
「ホントだ!毎年祭で領主のドーン様と酒の飲み比べしてるコウさんだ!」
「はぁ~光龍様とはなぁ!おい、誰かドーン様に伝えてこい!」
光龍ことコウは毎年行われる祭ではアイドル的存在である。美青年にも関わらずオッサンくさい話し方なので、中年男性の中でのアイドルではあるのだが、街の皆に大変好かれていた。
それもそのはず、祭で行われる花形のイベントに酒の飲み比べがあるのだが、そこでコウと領主のドーンは良きライバルで、領民達はどちらが勝つか掛けたりして楽しんでいた。
裏ギルドの後始末を治安部隊と共に行っていたドーンは、上空に光龍を見て直ぐに街の広場へと向かった。
なので光龍がコウになって大して時間も掛けずに、コウとドーンは再会することになる。
コウが酒が飲みたいとドーンの肩を掴んで揺さぶるので、多くの悪人を捕まえたところで取り調べがまだ済んでいない。今は手が離せないので街の酒場で飲んでて欲しいと言うと、コウはその件に関して思い当たることがあると伝えてきた。
直ぐに宰相のタナトスに伝魔鳥を送り、(コウが嬉しそうにドーンの肩をバンバン叩くので、伝魔鳥の一羽目は少ない情報だけで送ってしまったのだが)タナトスからの返信で、ドーンはコウを領主邸に連れて行くことにした。
それから暫くして、領主邸の中庭にカーペットが降りて来たことを部下から報告を受け、ドーンはアンドリュースと田代達を出迎えに行った。
ライソン帝国の歴史を紐解けば、元は国とも言えない程の小さな地域の部族だった。
その部族が力を外に示し初め、ある時は併合を、ある時は侵略をし、アンドリュースの曾祖父の時代には小国から併合を求められる大国になった。
清濁併せ呑むイメージではあるが、全てが帝国有利に動いたわけでは無かった。
併合反対の勢力がレジスタンスと聞こえの良い名前で併合後に帝国内で略奪行為や最悪殺しまで行い、治安部隊が取り締まりを強化するが裏ギルドと協力関係を持った自称レジスタンスの悪行が横行する地域が存在した。
光龍が居た島から一番近い辺境伯領も、ここ一年で裏ギルドが行っていると思われる詐欺や誘拐、暴行事件等が目立ってきており、皇都から騎士が治安部隊の応援に送られていた。
その甲斐あってのことだろうとタナトスは詳細が書き記された書類を読んでいくと、不可解なことがあったことを知った。
「これはどういうことだ?」
タナトスはその書類を持ってアンドリュースの執務室に入る。
「陛下、実はちょっと気になることが「ピィーーー」ん?伝魔鳥?」
青い鳥が執務室内をグルリと一周し、タナトスの肩に降り止まった。
『ドーンです。光龍様が現れました』
「光龍が?」
アンドリュースの問いにタナトスは伝魔鳥の続きを待つが、かなり焦って飛ばしたのか、その報告以外は告げることがなかった。
すると続け様に青い鳥が入ってくる。
『光龍様に酒を所望されました』
「は?」
タナトスが思わず真顔になる。
『酒が飲みたいと、現在私は捕まえられております。それと先日送った報告の裏ギルドについて何か情報があるそうです。如何に対処致しましょうか?』
「陛下、実はドーン辺境伯領で裏ギルドの支部が解体されたとの報告が上がってきておりまして」
光龍に捕まえられているドーン辺境伯を想像しながらタナトスはアンドリュースの言葉を待つ。
「ふむ、ならば光龍にとっておきの酒を献上する様に伝えよ。それとリュータローを呼べ」
「うわ、何だか嫌な予感するのですが?」
「当たりだ。余も光龍に会ってみたい」
「やっぱりーーー!」
コメカミを揉みながらも、アンドリュースの性格を知っているタナトスには反対しても無意味なことが分かり諦める。
タナトスは直ぐにリュータローと辺境伯領へ伝魔鳥を送った。
田代が到着し、それから30分後にはカーペットにアンドリュース、如月、坂下、陣野、従者兼マネージャーのカルーが乗って辺境伯領へ出発していた。
高所恐怖症の如月がウーウー唸りながら顔を手で隠している姿を見て女性陣は無視していたが、アンドリュースは如月の肩をガッチリ掴んで慰めていた。
カーペットに乗らずに一人で飛んでいた田代は、それを見て羨ましそうにしていた。
「くっ、アンタナ(アンドリュース×タナトス)が、アンカケ(アンドリュース×翔)?いや、田代も入って四角関係とか美味し過ぎるっ(小声)」
ぐふぐふと笑みを浮かべる坂下を陣野はジト目で見ていた。
二時間程前のこと、ドーン辺境伯領の領民は雲の切れ間から突然現れた巨大な白い龍を目の当たりにした。
ある者は腰を抜かし、ある者は泣き出し、ある者は建物の中へと逃げ込んだ。
「この土地に住む人間達よ。ワシは光龍。昨年は祭に参加出来ず、残念な思いをした。すまんが酒を所望したい」
この言葉に領民はポカーンとするしかなかった。
光龍は光を放ちながら少しずつ小さくなっていき、そのまま白い長髪の美青年に姿を変える。
「あ!コウさんじゃないか!あんた、光龍様だったのか!」
「ホントだ!毎年祭で領主のドーン様と酒の飲み比べしてるコウさんだ!」
「はぁ~光龍様とはなぁ!おい、誰かドーン様に伝えてこい!」
光龍ことコウは毎年行われる祭ではアイドル的存在である。美青年にも関わらずオッサンくさい話し方なので、中年男性の中でのアイドルではあるのだが、街の皆に大変好かれていた。
それもそのはず、祭で行われる花形のイベントに酒の飲み比べがあるのだが、そこでコウと領主のドーンは良きライバルで、領民達はどちらが勝つか掛けたりして楽しんでいた。
裏ギルドの後始末を治安部隊と共に行っていたドーンは、上空に光龍を見て直ぐに街の広場へと向かった。
なので光龍がコウになって大して時間も掛けずに、コウとドーンは再会することになる。
コウが酒が飲みたいとドーンの肩を掴んで揺さぶるので、多くの悪人を捕まえたところで取り調べがまだ済んでいない。今は手が離せないので街の酒場で飲んでて欲しいと言うと、コウはその件に関して思い当たることがあると伝えてきた。
直ぐに宰相のタナトスに伝魔鳥を送り、(コウが嬉しそうにドーンの肩をバンバン叩くので、伝魔鳥の一羽目は少ない情報だけで送ってしまったのだが)タナトスからの返信で、ドーンはコウを領主邸に連れて行くことにした。
それから暫くして、領主邸の中庭にカーペットが降りて来たことを部下から報告を受け、ドーンはアンドリュースと田代達を出迎えに行った。
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