11 / 21
ピクシー系エルフ種の少年、ジーゴ=トーリュ
この世界の囲碁は日本とほぼ同じのようで
しおりを挟む
この世界に囲碁という言葉を持ち込んだのは、馬車に一緒に乗り、隣に座っている道具屋の店主。
その言葉を広めたのは、ジーゴと店主に向かい合って座っている女性。
その知的遊戯でもあるこの競技は別の名前ではあったが、呼び方は地域や様々な団体組織によってまちまちであった。
この世界において不公平なく誰もが馴染みのない言葉であり、同じルールであるということから、店主の持ち込んだその名称が採用された。
この世界で生きる者達が誕生しそれ以来、店主が生まれ育った世界の地球よりもはるかに長い歴史を刻んできた。
その中で、知力と魔力、そしてほかの種族にはない能力を持った一族が生まれる。
それらを使い一族の行く末や未来を見通し、繁栄する結果となる道を選び進んできた。
その手段は、同等の能力を持つ二人で行う占星術。
ほかにも占星術を用いる種族や一族は存在していたが、その正確さはほかの術よりも格段に上回った。
その一族を中心とする国が生まれ、勢力を伸ばす。
その一族はやがて皇族と呼ばれるようになる。
その力にあやかろうとする者達や、その術を利用してほかの才覚を持つ者を登用し、ともに政を司ることを考えたい皇族の者達によって、占星術の存在が広まっていく。
当初はお遊びや気休めの占いの意味合いが強かった。
宇宙に見立てた盤の上に、星の意味合いを持つ二種類の色の石を交互に並べてその様子を伺うやり方だったが、その結果を読み切ることよりも、どっちの色がどの位置を占めているのかを判別するほうが簡単だったため、世界中に広まった時には、占いの手段よりも広い範囲をいかに手にするかという勝負の色が強くなっていった。
石を盤の上に並べていく占いが遊びになり勝負を決することが出来る競技に発展していったこの占星術。
陣取りや闘石、争石などといろんな名称を持つようになっていったがルールは同一。
そして店主がこの世界に来る前の世界では碁と呼ばれている知的競技と同じルール。
盤の上ならどこにでも石を置くことが出来るというわけではない。
その盤には縦横十九本の直線が格子状に描かれ、一番外側の線を辿ると、縦長の長方形となっている。
その縦横が交わる点や一番外側の角の上に重ねる様に石を二人で交互に置いていく。
その石を壁に見立てて、自分が得たい区域をその壁で囲うことで、自分の陣地とすることができる。
その陣地の広い方が勝者となる競技である。
陣地の作り方はいたってシンプル。
勝敗にこだわらなければ、囲み切れればどこでも自分の陣地とすることが出来る。
自分よりも相手の陣地が広いと感じたら、相手の陣地の中でも自分の陣地を作ることが出来る。
そうなると相手の陣地はかなり減らされてしまう。
自分の陣地のはずだった場所に敵陣が出来るのだ。境界線を作らなければ自分の陣地はゼロになってしまう。
敵陣を作ろうとする相手の石や、自分よりも広い陣地を作ろうとして壁を作り出す相手の石を取ることで、自陣の内部を強化することも出来る。その分狭くなっていくので相手も自陣が作りにくくなるためだ。
陣地同様相手の石もその周りを囲って、相手の石を壁にすることが出来なくなれば盤上から取り去ることが出来る。
取り去った相手の石は、対局と呼ばれるその試合が終わった後に、相手の陣地を埋める役割を持つ。再利用される。
だから石を取られると、相手の陣地を減らすことが出来ないばかりか自分の陣地を減らされる不利を受けてしまう。
そこで石を取られないまま敵陣の中で自陣を作る技術や、そうはさせまいと侵入してきたり広い陣地を取ろうとする相手の壁となる石を取る技術が磨かれていく。
自分の石が取られないようにするには、そんな形にする必要がある。
そして相手の石を取るには、陣地を囲おうとする壁を細かくして、そんな形に出来ないようにする。
相手の石が取れたらば、終局した後に相手の陣地をその石で埋め、減らすことが出来る。
勝敗の結果にも影響を多大に及ぼすことにもなる。
ジーゴは店主の店での対局で、終局まで打ち切ることを望んでいた。
しかし一局目は心の乱れを相手に突かれ、対局の途中で逆転できないほど不利に追い込まれた。
二局目、三局目はその逆。
互いに陣地の数を数えるまでもないほど、途中でその差が大きく表れた。
店主の言う通りなら、店主との対局でも最後まで打ち切ることは出来ないだろう。
力のすべてを出し切り、最後まで打ち切り、陣地の計算によっての決着を望んでいたジーゴ。
しかしそんな相手は都合よくは見つからない。
ところがそんな相手を探すには、ちょうどいい機会を迎えていた。
一般参加者応募の期間中の大会がある。プロ棋士も途中から参加する界王戦という、プロ棋士にとっても重要な大賞戦、タイトル戦でもある。
ジーゴの願いをかなえてくれる相手も現れるだろう。
もし力を認められるなら、不向きかどうか分からない冒険者職よりもその道のプロとして生計を立てる方が容易い場合もある。
店主はそんな見立てをしていた。そのために、その前に参加を確実に受理してもらうために前法王である女性を呼び出していたのだ。
その言葉を広めたのは、ジーゴと店主に向かい合って座っている女性。
その知的遊戯でもあるこの競技は別の名前ではあったが、呼び方は地域や様々な団体組織によってまちまちであった。
この世界において不公平なく誰もが馴染みのない言葉であり、同じルールであるということから、店主の持ち込んだその名称が採用された。
この世界で生きる者達が誕生しそれ以来、店主が生まれ育った世界の地球よりもはるかに長い歴史を刻んできた。
その中で、知力と魔力、そしてほかの種族にはない能力を持った一族が生まれる。
それらを使い一族の行く末や未来を見通し、繁栄する結果となる道を選び進んできた。
その手段は、同等の能力を持つ二人で行う占星術。
ほかにも占星術を用いる種族や一族は存在していたが、その正確さはほかの術よりも格段に上回った。
その一族を中心とする国が生まれ、勢力を伸ばす。
その一族はやがて皇族と呼ばれるようになる。
その力にあやかろうとする者達や、その術を利用してほかの才覚を持つ者を登用し、ともに政を司ることを考えたい皇族の者達によって、占星術の存在が広まっていく。
当初はお遊びや気休めの占いの意味合いが強かった。
宇宙に見立てた盤の上に、星の意味合いを持つ二種類の色の石を交互に並べてその様子を伺うやり方だったが、その結果を読み切ることよりも、どっちの色がどの位置を占めているのかを判別するほうが簡単だったため、世界中に広まった時には、占いの手段よりも広い範囲をいかに手にするかという勝負の色が強くなっていった。
石を盤の上に並べていく占いが遊びになり勝負を決することが出来る競技に発展していったこの占星術。
陣取りや闘石、争石などといろんな名称を持つようになっていったがルールは同一。
そして店主がこの世界に来る前の世界では碁と呼ばれている知的競技と同じルール。
盤の上ならどこにでも石を置くことが出来るというわけではない。
その盤には縦横十九本の直線が格子状に描かれ、一番外側の線を辿ると、縦長の長方形となっている。
その縦横が交わる点や一番外側の角の上に重ねる様に石を二人で交互に置いていく。
その石を壁に見立てて、自分が得たい区域をその壁で囲うことで、自分の陣地とすることができる。
その陣地の広い方が勝者となる競技である。
陣地の作り方はいたってシンプル。
勝敗にこだわらなければ、囲み切れればどこでも自分の陣地とすることが出来る。
自分よりも相手の陣地が広いと感じたら、相手の陣地の中でも自分の陣地を作ることが出来る。
そうなると相手の陣地はかなり減らされてしまう。
自分の陣地のはずだった場所に敵陣が出来るのだ。境界線を作らなければ自分の陣地はゼロになってしまう。
敵陣を作ろうとする相手の石や、自分よりも広い陣地を作ろうとして壁を作り出す相手の石を取ることで、自陣の内部を強化することも出来る。その分狭くなっていくので相手も自陣が作りにくくなるためだ。
陣地同様相手の石もその周りを囲って、相手の石を壁にすることが出来なくなれば盤上から取り去ることが出来る。
取り去った相手の石は、対局と呼ばれるその試合が終わった後に、相手の陣地を埋める役割を持つ。再利用される。
だから石を取られると、相手の陣地を減らすことが出来ないばかりか自分の陣地を減らされる不利を受けてしまう。
そこで石を取られないまま敵陣の中で自陣を作る技術や、そうはさせまいと侵入してきたり広い陣地を取ろうとする相手の壁となる石を取る技術が磨かれていく。
自分の石が取られないようにするには、そんな形にする必要がある。
そして相手の石を取るには、陣地を囲おうとする壁を細かくして、そんな形に出来ないようにする。
相手の石が取れたらば、終局した後に相手の陣地をその石で埋め、減らすことが出来る。
勝敗の結果にも影響を多大に及ぼすことにもなる。
ジーゴは店主の店での対局で、終局まで打ち切ることを望んでいた。
しかし一局目は心の乱れを相手に突かれ、対局の途中で逆転できないほど不利に追い込まれた。
二局目、三局目はその逆。
互いに陣地の数を数えるまでもないほど、途中でその差が大きく表れた。
店主の言う通りなら、店主との対局でも最後まで打ち切ることは出来ないだろう。
力のすべてを出し切り、最後まで打ち切り、陣地の計算によっての決着を望んでいたジーゴ。
しかしそんな相手は都合よくは見つからない。
ところがそんな相手を探すには、ちょうどいい機会を迎えていた。
一般参加者応募の期間中の大会がある。プロ棋士も途中から参加する界王戦という、プロ棋士にとっても重要な大賞戦、タイトル戦でもある。
ジーゴの願いをかなえてくれる相手も現れるだろう。
もし力を認められるなら、不向きかどうか分からない冒険者職よりもその道のプロとして生計を立てる方が容易い場合もある。
店主はそんな見立てをしていた。そのために、その前に参加を確実に受理してもらうために前法王である女性を呼び出していたのだ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる