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法王依頼編 第七章 製作開始
碁盤と碁石 作る間に 4
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「おはようごっ」
ガンッ!
『法具店アマミ』の入口が、ラキュア族の若い女性の挨拶を途中で止める。
早朝はどこの世界でも空気は綺麗なもので、それは気持ちを清々しくする。
しかしセレナも驚くその音は、店主には不快な思いに変えた。
店主はセレナに食事の用意をさせて入り口の様子を見に行く。
施錠が解かれて開いたドアで対面したのは頭を四つの手で押さえてしゃがむシエラと、下着のままの店主。
「うん、すごくどうでもいい」
店主はシエラにむかって一言放つ。
「え? い、いや、ちょおおおおっ! テンシュさん! その恰好なんですかっ!」
店主は叫ぶシエラを振り返って見る。顔が真っ赤になっているようで、四本の手は頭から顔に移動している。
「どんな格好してても問題ねぇだろ。ここは俺の店で、一応俺の住処だ。そして開店時間前。俺のプライベートタイムだ。そこにお前がやってきただけのこと。……体格は覚えちゃいるが名前も知らねえ奴の相手なんか、そんな時間に出来るかよ。開店時間まで待ってな。じゃあな」
店主は再び施錠して二階に向かう。
てっきり中に入れてくれるものと思っていたシエラは頭の中が真っ白になり、入り口の前に立ち尽くす。
はっと我に返り、力づくで扉を開けようとするが、うんともすんとも言わない。
「え? えっと、あの……見学に来るって昨日言ったよね……言ったよね?」
店主が二階に戻ると、セレナが朝ご飯の料理を終えた様子が目に入った。
「誰か来てたの? ……またそんな恰好で……って開店前だしいっか。あ、立ってるついでだから皿運ぶの手伝ってくれる?」
「はいはい。ところで今日は線引きして、後は碁石かな。型抜きを一組分やった後削って形作る作業にしようか」
「……ねぇ」
「何だよ」
「誰か来てたの?」
「知らね。いただきます」
店主はセレナからの質問に答えるのも面倒そうに、準備を終えた朝食を口にし始める。
セレナが首をかしげて「そう?」と言いかけたところで、下から変な音が聞こえてくる。
薄い板を何度も叩くような音。
店主の返事は、無関心な事を聞かれた時の適当な返事であることを思い出す。
慌てて下に降りるセレナ。
しばらくしてから一階から聞こえるセレナの怒鳴り声。
それでも平然と朝ご飯を食べている店主。
普段より少しだけ騒がしい『法具店アマミ』の朝である。
──────────────
「シエラちゃんが来る時間もちょっと早すぎってば早すぎだけど、だからって放置はひどいでしょ、テンシュ!」
セレナの叱責をBGMに、平然と食事を続ける店主。
セレナが耳にしたのは、扉を叩いて再度施錠された扉をどうにか開けてもらうことをせがんでいたシエラの出した音だった。
セレナが一階に下りて入り口を見ると、誰かが「入れてください」と連呼しながらドアを叩いている。
ドアは半透明のため誰が来てるのかははっきりと見えないが、昨日のこともありシエラであることを予想するがその通り。
中に招き入れ、二階に連れて来て椅子に座らせ、今に至る。
「別に弟子入りしなくてもいいんじゃね? したいしたくないは本人の勝手だし俺が指図するようなことじゃねぇけどな。弟子になってくれって泣いて頼み込む立場でもねぇし、何か面倒くさそうだし」
「面倒くさいはないでしょう? 真剣に取り組もうとしてるっぽいし、他の店で修行することなんか微塵も考えてないみたいだし」
「作業や工程とかに疑問持って質問するのはいいんだけどよ、ここ、学校の授業の場じゃねぇんだ。一々指導できる余裕はねぇよ。大体こいつ……」
そこで店主は言葉を区切り、シエラをじっと見る。
見つめられたシエラは少し椅子ごと後ずさる。
「「学校?」」
この世界には学校という施設はない。
店主がこの世界に来たばかりの頃にもそれに関連した言葉を口にしたが、それを聞いたセレナには理解できなかった。その時もそうだったが今度はそれにシエラが加わった。
その説明をするのも面倒くさい店主は無表情の顔をやや歪ませる。
ガンッ!
『法具店アマミ』の入口が、ラキュア族の若い女性の挨拶を途中で止める。
早朝はどこの世界でも空気は綺麗なもので、それは気持ちを清々しくする。
しかしセレナも驚くその音は、店主には不快な思いに変えた。
店主はセレナに食事の用意をさせて入り口の様子を見に行く。
施錠が解かれて開いたドアで対面したのは頭を四つの手で押さえてしゃがむシエラと、下着のままの店主。
「うん、すごくどうでもいい」
店主はシエラにむかって一言放つ。
「え? い、いや、ちょおおおおっ! テンシュさん! その恰好なんですかっ!」
店主は叫ぶシエラを振り返って見る。顔が真っ赤になっているようで、四本の手は頭から顔に移動している。
「どんな格好してても問題ねぇだろ。ここは俺の店で、一応俺の住処だ。そして開店時間前。俺のプライベートタイムだ。そこにお前がやってきただけのこと。……体格は覚えちゃいるが名前も知らねえ奴の相手なんか、そんな時間に出来るかよ。開店時間まで待ってな。じゃあな」
店主は再び施錠して二階に向かう。
てっきり中に入れてくれるものと思っていたシエラは頭の中が真っ白になり、入り口の前に立ち尽くす。
はっと我に返り、力づくで扉を開けようとするが、うんともすんとも言わない。
「え? えっと、あの……見学に来るって昨日言ったよね……言ったよね?」
店主が二階に戻ると、セレナが朝ご飯の料理を終えた様子が目に入った。
「誰か来てたの? ……またそんな恰好で……って開店前だしいっか。あ、立ってるついでだから皿運ぶの手伝ってくれる?」
「はいはい。ところで今日は線引きして、後は碁石かな。型抜きを一組分やった後削って形作る作業にしようか」
「……ねぇ」
「何だよ」
「誰か来てたの?」
「知らね。いただきます」
店主はセレナからの質問に答えるのも面倒そうに、準備を終えた朝食を口にし始める。
セレナが首をかしげて「そう?」と言いかけたところで、下から変な音が聞こえてくる。
薄い板を何度も叩くような音。
店主の返事は、無関心な事を聞かれた時の適当な返事であることを思い出す。
慌てて下に降りるセレナ。
しばらくしてから一階から聞こえるセレナの怒鳴り声。
それでも平然と朝ご飯を食べている店主。
普段より少しだけ騒がしい『法具店アマミ』の朝である。
──────────────
「シエラちゃんが来る時間もちょっと早すぎってば早すぎだけど、だからって放置はひどいでしょ、テンシュ!」
セレナの叱責をBGMに、平然と食事を続ける店主。
セレナが耳にしたのは、扉を叩いて再度施錠された扉をどうにか開けてもらうことをせがんでいたシエラの出した音だった。
セレナが一階に下りて入り口を見ると、誰かが「入れてください」と連呼しながらドアを叩いている。
ドアは半透明のため誰が来てるのかははっきりと見えないが、昨日のこともありシエラであることを予想するがその通り。
中に招き入れ、二階に連れて来て椅子に座らせ、今に至る。
「別に弟子入りしなくてもいいんじゃね? したいしたくないは本人の勝手だし俺が指図するようなことじゃねぇけどな。弟子になってくれって泣いて頼み込む立場でもねぇし、何か面倒くさそうだし」
「面倒くさいはないでしょう? 真剣に取り組もうとしてるっぽいし、他の店で修行することなんか微塵も考えてないみたいだし」
「作業や工程とかに疑問持って質問するのはいいんだけどよ、ここ、学校の授業の場じゃねぇんだ。一々指導できる余裕はねぇよ。大体こいつ……」
そこで店主は言葉を区切り、シエラをじっと見る。
見つめられたシエラは少し椅子ごと後ずさる。
「「学校?」」
この世界には学校という施設はない。
店主がこの世界に来たばかりの頃にもそれに関連した言葉を口にしたが、それを聞いたセレナには理解できなかった。その時もそうだったが今度はそれにシエラが加わった。
その説明をするのも面倒くさい店主は無表情の顔をやや歪ませる。
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