123 / 290
巨塊討伐編 第四章:遅れてきた者
休店直下 6
しおりを挟む
「確かにその男の言う通りだ。だがまずあんたの説明を最後まで聞きてぇな」
ギスモの喚きよりも店主の解釈にほとんどの者が関心を示す。
さらに小男は騒ぎ出すが、それ以上によく通る声で店主は再び語りだす。
「力を使う意思がないなら、力が減る理由はほかにある。それはその力を使おうとするか奪い取ったり吸い取ろうとする意思を持つ者がどこかにいるってことだ。思い当たる節はあるんじゃねぇか?」
「まさか……巨塊?」
即答する者がいた。その答えに店主は否定をしない。
「厳密にはちょっと違うかもしれねぇな。だが巨塊とやらの仕業であることは確かだと思う。石が元々石出なかったらどうかと思ってな」
「体の中心から離れた体の一部が石化する……力が体の中心に流れていけば本来の姿から衰えた姿に変わる。それが石化、そして岩石や宝石に変わるっちゅうことかの?」
「俺はそう考えてる。吸い取られるっていうより、力の出涸らしってとこか。それでも力はまだ残ってる。けどその石が持つ器の元々の大きさには見合わない力だったということだ」
店主は、チェリムが予想した答えにもほぼ同意する。
自分の頭は体程年老いてはいないことにドヤ顔しきり。
だがその直後その顔は青ざめる。
「待てぃ! 外部の者から力を奪い取られる言うとったな? 逆に言えば……」
「流石じいさんだ。伊達に年くっちゃいねぇな」
「笑いごっちゃないぞい! テンシュよ! このままじゃ……」
一人事態を把握したような顔をするチェリムに、どういうことかと周囲の冒険者達が尋ねる。
「力を残した石からも力が本体に流れる現象があるかもしれねぇし、何より本体は生命体を取り込むんだろ? 本体から遠い距離にあるなら取り込まれる心配はないだろうが……」
店主の説明が店内に焦りを充満させた。
「巨塊本体に力が取り込まれるってことは、その範囲内にいるセレナ達も……?」
「犠牲者が出たのは爆発自体の被害者じゃなくて、力……生命力を吸い取られた結果……?」
「それは違う」
狼狽えて出てきた発言に即座に否定する店主。
「だったら洞窟内で動物や虫なんぞの死骸がゴロゴロしてていいはずだ。しかもセレナは帰ってくるたびに異様に疲れたような顔をしていた。それでも調査に協力する気があったんだから気力と体力は間違いなくあった」
「すると取られたのは……魔力?」
「確かに魔力を一度にたくさん使うと疲労度は強くなるし高くなるけど……」
まだそれほど力量はないが、ウィーナとミールも経験があるらしい。
「ウィリックや他の被害者も……」
「魔力がゼロまで取られた上に体力のほとんども奪われりゃ、体調崩すどころじゃねぇよな。ましてや爆発に巻き込まれたんだろ? 妄想だったらいいなと思いつつ、現実に起きた後じゃ時間が足りねぇ。そう思ったから、力を奪われる現象に対抗できる道具を作って救助に使えねぇかと思ったんだが、それを使わせられねぇとなったら力技で引っ張ってくるしかねぇ。そうなったら最終手段はただ一つ」
その店主の言葉は誰もが聞き捨てならなかった。
力を奪われることのない道具があるという。そしてその使用を禁じたのは作った店主ではない。
「おい、ギスモ! セレナの救助に必要な道具があるっつってんぞ! 売られてなきゃここにあるか倉庫にあるんだろ! 出せよ!」
「いつまでもお前に振り回されるつもりもねぇし、つまんねぇこと言ってる場合じゃねぇんだよ!」
全員がギスモに詰め寄るが、誰にも捕まらないように隙をついて素早く移動し続ける。
「うるせぇな! だから黙って俺の指示に従えよ馬鹿共がっ! 大体俺のセレナがそんなドジ踏むわきゃねぇだろうが!」
「ダメだこいつ……早く何とかしないと……」
ウィーナがそんなギスモを見て頭を抑える。
誰もが彼女の心境だろう。一番状況を把握していないのは店主ではないことだけは全員が理解した。
しかしまだ店主から話を全て聞いてはいない。
そのことに気付いたのはギースだった。
ギスモの喚きよりも店主の解釈にほとんどの者が関心を示す。
さらに小男は騒ぎ出すが、それ以上によく通る声で店主は再び語りだす。
「力を使う意思がないなら、力が減る理由はほかにある。それはその力を使おうとするか奪い取ったり吸い取ろうとする意思を持つ者がどこかにいるってことだ。思い当たる節はあるんじゃねぇか?」
「まさか……巨塊?」
即答する者がいた。その答えに店主は否定をしない。
「厳密にはちょっと違うかもしれねぇな。だが巨塊とやらの仕業であることは確かだと思う。石が元々石出なかったらどうかと思ってな」
「体の中心から離れた体の一部が石化する……力が体の中心に流れていけば本来の姿から衰えた姿に変わる。それが石化、そして岩石や宝石に変わるっちゅうことかの?」
「俺はそう考えてる。吸い取られるっていうより、力の出涸らしってとこか。それでも力はまだ残ってる。けどその石が持つ器の元々の大きさには見合わない力だったということだ」
店主は、チェリムが予想した答えにもほぼ同意する。
自分の頭は体程年老いてはいないことにドヤ顔しきり。
だがその直後その顔は青ざめる。
「待てぃ! 外部の者から力を奪い取られる言うとったな? 逆に言えば……」
「流石じいさんだ。伊達に年くっちゃいねぇな」
「笑いごっちゃないぞい! テンシュよ! このままじゃ……」
一人事態を把握したような顔をするチェリムに、どういうことかと周囲の冒険者達が尋ねる。
「力を残した石からも力が本体に流れる現象があるかもしれねぇし、何より本体は生命体を取り込むんだろ? 本体から遠い距離にあるなら取り込まれる心配はないだろうが……」
店主の説明が店内に焦りを充満させた。
「巨塊本体に力が取り込まれるってことは、その範囲内にいるセレナ達も……?」
「犠牲者が出たのは爆発自体の被害者じゃなくて、力……生命力を吸い取られた結果……?」
「それは違う」
狼狽えて出てきた発言に即座に否定する店主。
「だったら洞窟内で動物や虫なんぞの死骸がゴロゴロしてていいはずだ。しかもセレナは帰ってくるたびに異様に疲れたような顔をしていた。それでも調査に協力する気があったんだから気力と体力は間違いなくあった」
「すると取られたのは……魔力?」
「確かに魔力を一度にたくさん使うと疲労度は強くなるし高くなるけど……」
まだそれほど力量はないが、ウィーナとミールも経験があるらしい。
「ウィリックや他の被害者も……」
「魔力がゼロまで取られた上に体力のほとんども奪われりゃ、体調崩すどころじゃねぇよな。ましてや爆発に巻き込まれたんだろ? 妄想だったらいいなと思いつつ、現実に起きた後じゃ時間が足りねぇ。そう思ったから、力を奪われる現象に対抗できる道具を作って救助に使えねぇかと思ったんだが、それを使わせられねぇとなったら力技で引っ張ってくるしかねぇ。そうなったら最終手段はただ一つ」
その店主の言葉は誰もが聞き捨てならなかった。
力を奪われることのない道具があるという。そしてその使用を禁じたのは作った店主ではない。
「おい、ギスモ! セレナの救助に必要な道具があるっつってんぞ! 売られてなきゃここにあるか倉庫にあるんだろ! 出せよ!」
「いつまでもお前に振り回されるつもりもねぇし、つまんねぇこと言ってる場合じゃねぇんだよ!」
全員がギスモに詰め寄るが、誰にも捕まらないように隙をついて素早く移動し続ける。
「うるせぇな! だから黙って俺の指示に従えよ馬鹿共がっ! 大体俺のセレナがそんなドジ踏むわきゃねぇだろうが!」
「ダメだこいつ……早く何とかしないと……」
ウィーナがそんなギスモを見て頭を抑える。
誰もが彼女の心境だろう。一番状況を把握していないのは店主ではないことだけは全員が理解した。
しかしまだ店主から話を全て聞いてはいない。
そのことに気付いたのはギースだった。
0
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
幻想美男子蒐集鑑~夢幻月華の書~
紗吽猫
ファンタジー
ーー さぁ、世界を繋ぐ旅を綴ろう ーー
自称美男子愛好家の主人公オルメカと共に旅する好青年のソロモン。旅の目的はオルメカコレクションー夢幻月下の書に美男子達との召喚契約をすること。美男子の噂を聞きつけてはどんな街でも、時には異世界だって旅して回っている。でもどうやらこの旅、ただの逆ハーレムな旅とはいかないようでー…?
美男子を見付けることのみに特化した心眼を持つ自称美男子愛好家は出逢う美男子達を取り巻く事件を解決し、無事に魔導書を完成させることは出来るのか…!?
時に出逢い、時に闘い、時に事件を解決し…
旅の中で出逢う様々な美男子と取り巻く仲間達との複数世界を旅する物語。
※この作品はエブリスタでも連載中です。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
記憶を取り戻したアラフォー賢者は三度目の人生を生きていく
かたなかじ
ファンタジー
四十歳手前の冴えない武器屋ダンテ。
彼は亡くなった両親の武器屋を継いで今日も仕入れにやってきていた。
その帰りに彼は山道を馬車ごと転げ落ちてしまう。更に運の悪いことにそこを山賊に襲われた。
だがその落下の衝撃でダンテは記憶を取り戻す。
自分が勇者の仲間であり、賢者として多くの魔の力を行使していたことを。
そして、本来の名前が地球育ちの優吾であることを。
記憶と共に力を取り戻した優吾は、その圧倒的な力で山賊を討伐する。
武器屋としての自分は死んだと考え、賢者として生きていくことを決める優吾。
それは前世の魔王との戦いから三百年が経過した世界だった――。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
現代にモンスターが湧きましたが、予めレベル上げしていたので無双しますね。
えぬおー
ファンタジー
なんの取り柄もないおっさんが偶然拾ったネックレスのおかげで無双しちゃう
平 信之は、会社内で「MOBゆき」と陰口を言われるくらい取り柄もない窓際社員。人生はなんて面白くないのだろうと嘆いて帰路に着いている中、信之は異常な輝きを放つネックレスを拾う。そのネックレスは、経験値の間に行くことが出来る特殊なネックレスだった。
経験値の間に行けるようになった信之はどんどんレベルを上げ、無双し、知名度を上げていく。
もう、MOBゆきとは呼ばせないっ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる