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巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目
バイトにて、ウィーナの災難 1
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翌朝七時過ぎの『アマミ法具店』には、セレナと店主。そしてバイトの双子が揃っている。
店主の妄想を口にしたせいで気にかかった、昨日の二人組の襲撃もなかった様子。セレナは警戒も兼ねて『クロムハード』から受けた依頼の残りの仕事をすべて済ます。
しかし思ったよりも早く終わり、日付が変わる前に就寝。
そして普段と変わりない朝。
双子がやがてやって来て、店主も移動して店に着く。
全員で朝食を済ませ、早速仕事が始まる。
「じゃあ昨日言った通り『クロムハード』を連れて来てもらうが、その役はウィーナだ。行って来い」
「はいっ! 行ってきます!」
拠点に行って、依頼された品物が出来ましたので一緒に来てくださいと言うだけの仕事。
ただそれだけのことにしては気合が入りすぎている。
店主に強く押されて出発するウィーナ。
ミールはいつも通り掃除を始める。
「私は迎えが来るまでここにいようかな」
カウンターの傍に椅子を持ってきて座って待機するセレナ。
「夜は来なかった。ということは、開店時間前に来て嫌がらせに来る可能性があるかもな。ドアが開いた瞬間また蹴り倒してやる」
店主はそう言うなり出入り口の傍でさっそく片足を上げている。
受けた依頼の仕事はすべて済ませた後の店主は、当分は店内に展示するための品物作りをすることに決めている。しかし間違いなくその途中でウィーナが『クロムハード』を連れて来る。仕事の中断を嫌う店主は、彼女の帰店を待つことにした。
ただ待つだけでは時間が勿体ない。
昨日の不届き者がまたやって来るに違いないと決めつけて待ち構えているが、効果のある対応が出来るかどうか、セレナとミールにははなはだ疑問である。
しばらくしてミールは一通り掃除を終える。
「じゃあ私、カウンターにいますね」
「えぇ。よろしくね。ミールちゃん」
ミールはカウンターに着き、昨夜バイトから戻って『風刃隊』の他のメンバーに、バイトでの話を報告したことをセレナに伝えている。
何やら盛り上がっているようだが、店主はときどきあげた片足を降ろしてしばらく休んではまた上げて、昨日の不届き者が来るのを今か今かと待っている。
しばらくして、自動ドアが開く。
店の外はぼんやりとは透けて見えるが、はっきりと誰がいるまでは分からない。
店主が見てたのはドアが開くか開かないかだけ。
店主は、ドアが開いたら蹴りを入れるだけしか考えていなかった。
相手について覚えているのは何かの動物っぽい姿と魚っぽい姿の二人。
それよりはっきり覚えている、物の言い方。
咄嗟に店主は、上げた足を前に突き出す。
店主の目の前には『クロムハード』。視界の下の方には、鼻を両手で抑えて涙目になっているウィーナがいた。
店主はその瞬間、なぜウィーナがそこにいるのか理解できなかった。
ウィーナは、何で蹴飛ばされたのか分からないでいる。
『クロムハード』は、店主が何をやっているのか理解できない。
奥のカウンターからでも入り口で何が起きたのか分かったらしい。ミールが慌てて飛び出てきた。
「お姉ちゃん、大丈夫?! ちょっとテンシュっ! 何やってんのよっ!」
セレナもミールの後を追って入り口に駆けつける。
「なんで、私、テンシュに足蹴にされてるの……?」
「……ごめん」
謝罪した店主の片足は上がったままだった。
店主の妄想を口にしたせいで気にかかった、昨日の二人組の襲撃もなかった様子。セレナは警戒も兼ねて『クロムハード』から受けた依頼の残りの仕事をすべて済ます。
しかし思ったよりも早く終わり、日付が変わる前に就寝。
そして普段と変わりない朝。
双子がやがてやって来て、店主も移動して店に着く。
全員で朝食を済ませ、早速仕事が始まる。
「じゃあ昨日言った通り『クロムハード』を連れて来てもらうが、その役はウィーナだ。行って来い」
「はいっ! 行ってきます!」
拠点に行って、依頼された品物が出来ましたので一緒に来てくださいと言うだけの仕事。
ただそれだけのことにしては気合が入りすぎている。
店主に強く押されて出発するウィーナ。
ミールはいつも通り掃除を始める。
「私は迎えが来るまでここにいようかな」
カウンターの傍に椅子を持ってきて座って待機するセレナ。
「夜は来なかった。ということは、開店時間前に来て嫌がらせに来る可能性があるかもな。ドアが開いた瞬間また蹴り倒してやる」
店主はそう言うなり出入り口の傍でさっそく片足を上げている。
受けた依頼の仕事はすべて済ませた後の店主は、当分は店内に展示するための品物作りをすることに決めている。しかし間違いなくその途中でウィーナが『クロムハード』を連れて来る。仕事の中断を嫌う店主は、彼女の帰店を待つことにした。
ただ待つだけでは時間が勿体ない。
昨日の不届き者がまたやって来るに違いないと決めつけて待ち構えているが、効果のある対応が出来るかどうか、セレナとミールにははなはだ疑問である。
しばらくしてミールは一通り掃除を終える。
「じゃあ私、カウンターにいますね」
「えぇ。よろしくね。ミールちゃん」
ミールはカウンターに着き、昨夜バイトから戻って『風刃隊』の他のメンバーに、バイトでの話を報告したことをセレナに伝えている。
何やら盛り上がっているようだが、店主はときどきあげた片足を降ろしてしばらく休んではまた上げて、昨日の不届き者が来るのを今か今かと待っている。
しばらくして、自動ドアが開く。
店の外はぼんやりとは透けて見えるが、はっきりと誰がいるまでは分からない。
店主が見てたのはドアが開くか開かないかだけ。
店主は、ドアが開いたら蹴りを入れるだけしか考えていなかった。
相手について覚えているのは何かの動物っぽい姿と魚っぽい姿の二人。
それよりはっきり覚えている、物の言い方。
咄嗟に店主は、上げた足を前に突き出す。
店主の目の前には『クロムハード』。視界の下の方には、鼻を両手で抑えて涙目になっているウィーナがいた。
店主はその瞬間、なぜウィーナがそこにいるのか理解できなかった。
ウィーナは、何で蹴飛ばされたのか分からないでいる。
『クロムハード』は、店主が何をやっているのか理解できない。
奥のカウンターからでも入り口で何が起きたのか分かったらしい。ミールが慌てて飛び出てきた。
「お姉ちゃん、大丈夫?! ちょっとテンシュっ! 何やってんのよっ!」
セレナもミールの後を追って入り口に駆けつける。
「なんで、私、テンシュに足蹴にされてるの……?」
「……ごめん」
謝罪した店主の片足は上がったままだった。
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