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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日 行き先が決まったよ
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『法具店アマミ』の休業日の説明をセレナとシエラから受けた『ホットライン』のメンバーと、『クロムハード』のリーダー、スウォードもやはり『風刃隊』同様に店主たちのことを疑うが、開店前に勉強会を行っている対象の身寄りのない子供達のためでもある理由を聞き、快諾。『クロムハード』はリーダーしかいないが、その特権ということと、店主への思いはほかのメンバーも『ホットライン』とほぼ同じであることから異議は出ないだろう。
『風刃隊』の五人と『ホットライン』と『クロムハード』の六人ずつ、合わせて十七人。
それにセレナとシエラが加われば、子供達二十人前後ならば保護者の役割は十分果たせるはずである。
なかなか決まらない行き先もようやく決まる。
「それにしても、そんな洞窟があるなんて知らなかったな。敷地の外も随分周ったんだがな」
「あ、あの川の向こう側にあるのよ。こっち側しか見てないなら多分分かんないんじゃないかな?」
「橋もあの深い草原越えてからだし。でも距離が遠いってことくらいだから、ただ通り過ぎる分には子供たちの監視は難しくはないと思うよ? あとはあの洞窟がテンシュのお眼鏡にかなうかどうかくらい……って、そこの五人、我関せずみたいな顔してんのよ」
『風刃隊』は全く会話に絡んでこなくなった。無理もない。
「行ったことないからな。斡旋所での話じゃ、初級冒険者への依頼が中心になってるらしい。俺らのその頃は……」
「私達、何とかして糊口をしのいで、それでも仕事見つからなくて誰からも相手にされないで、ようやくテンシュさんに出会えてようやく仕事もらえるようになった頃だったわね」
「初球の冒険者たちなら誰でも知ってる場所は、俺たちは知らねぇからな。そういう境遇だったしよ」
時代の流れの変化かそれとも人との巡り合わせが悪かったせいか。
しかしその巡り合わせの悪さが逆にいい目を出した。
雲の上の存在とも言える実力者チームと出会いに繋がり、指導を受けつつ鍛えられた結果が、冒険者なら誰もが羨む実力者のカテゴリー行きという彼らの現状である。
その指導する側に立っていた『ホットライン』、そしてスウォードをリーダーとする『クロムハード』は彼らの不遇の時代を知っている。そんな地域に土地勘はないとしても、彼らを責めるべきことではない。むしろ同情の余地はある。
だからといって無関心のままはいただけない。
「じゃあその洞窟あたりまで散歩がてらに行ってくるといい。俺たちくらいの腕なら大した魔物は出てこない。斡旋所からの依頼で俺たちが゛そこらに行くことはまずないが、そういうことなら足を運べるさ」
地形も知らない所へは、たとえ魔物が絶対に現れることがない場所でも事前調査なり情報入手なりは絶対に必要である。特に今回は多くの人の命を守る役目を担うため、魔物から襲われる確率が低くても、現れる魔物の力が弱くても油断は禁物。
このあたりの地形の話題に入れない『風刃隊』はやや不貞腐れた表情。ほかの者達にはそのつもりはないのだが、爪はじきにされた気分にでもなったのだろう。
だがそのことを恨んだりしていても物事は進まない。そしてそういうことも『風刃隊』には分かってはいる。
「んじゃ、その洞窟とやらまで散歩と行きますか。あ、ところでブレイドさん。その洞窟の名前はなんて言うんです?」
「ラミット洞窟だ。その手前だったか? 草むらの地域はヘルケーナ草原つって、魔物ではないが害獣が潜んでいることもある。その装備にお前らの実力なら、時々出てくる魔物も簡単にあしらえるだろう。だが十分注意しろよ?」
ブレイドからの注意を受け、ニィナから全員分の弁当を受け取った『風刃隊』は、店に残った面々に見送られ、万全の装備でラミット洞窟へと出発した。
「……新人だった頃は必死だったけど、ずいぶん余裕が出てきてからは余計なことまで目に入りやすくなったのよね」
「同期っていうか、近い時期に養成所卒業した冒険者達と比べてもダントツで実力が上なんだから気にしなくてもいいのにね」
キューリアとヒューラーは、あまり見ることのない普段とは違う彼らの様子を案じる。
「しょーがねぇんじゃねぇの? 男連中の魔力はゼロに近いままだし。道具でそれを補う知恵が出てきた分マシだとは思うがな。つーかお前らもいつまで駄弁ってんだ。とっとと仕事行ってこい。こっちも休業予告のチラシ貼っとかねぇとだしな」
「じゃあうちら全員にも知らせてくるから。十日後だったよな? テンシュさんも現場の下見、一回はしたほうがいいと思うぜ? みんなに知らせた後また夕方ごろ来るから」
その二人の心配を一切気にしない店主。そんな店主を気に掛けながらスウォードも店を後にした。
そしてブレイドが呟く。
「じゃあ俺たちは、誰かがここで碁をやるのを観戦してようかな」
「やることねぇならとっとと帰れ!」
常連客への店主の罵倒は相変わらずである。
『風刃隊』の五人と『ホットライン』と『クロムハード』の六人ずつ、合わせて十七人。
それにセレナとシエラが加われば、子供達二十人前後ならば保護者の役割は十分果たせるはずである。
なかなか決まらない行き先もようやく決まる。
「それにしても、そんな洞窟があるなんて知らなかったな。敷地の外も随分周ったんだがな」
「あ、あの川の向こう側にあるのよ。こっち側しか見てないなら多分分かんないんじゃないかな?」
「橋もあの深い草原越えてからだし。でも距離が遠いってことくらいだから、ただ通り過ぎる分には子供たちの監視は難しくはないと思うよ? あとはあの洞窟がテンシュのお眼鏡にかなうかどうかくらい……って、そこの五人、我関せずみたいな顔してんのよ」
『風刃隊』は全く会話に絡んでこなくなった。無理もない。
「行ったことないからな。斡旋所での話じゃ、初級冒険者への依頼が中心になってるらしい。俺らのその頃は……」
「私達、何とかして糊口をしのいで、それでも仕事見つからなくて誰からも相手にされないで、ようやくテンシュさんに出会えてようやく仕事もらえるようになった頃だったわね」
「初球の冒険者たちなら誰でも知ってる場所は、俺たちは知らねぇからな。そういう境遇だったしよ」
時代の流れの変化かそれとも人との巡り合わせが悪かったせいか。
しかしその巡り合わせの悪さが逆にいい目を出した。
雲の上の存在とも言える実力者チームと出会いに繋がり、指導を受けつつ鍛えられた結果が、冒険者なら誰もが羨む実力者のカテゴリー行きという彼らの現状である。
その指導する側に立っていた『ホットライン』、そしてスウォードをリーダーとする『クロムハード』は彼らの不遇の時代を知っている。そんな地域に土地勘はないとしても、彼らを責めるべきことではない。むしろ同情の余地はある。
だからといって無関心のままはいただけない。
「じゃあその洞窟あたりまで散歩がてらに行ってくるといい。俺たちくらいの腕なら大した魔物は出てこない。斡旋所からの依頼で俺たちが゛そこらに行くことはまずないが、そういうことなら足を運べるさ」
地形も知らない所へは、たとえ魔物が絶対に現れることがない場所でも事前調査なり情報入手なりは絶対に必要である。特に今回は多くの人の命を守る役目を担うため、魔物から襲われる確率が低くても、現れる魔物の力が弱くても油断は禁物。
このあたりの地形の話題に入れない『風刃隊』はやや不貞腐れた表情。ほかの者達にはそのつもりはないのだが、爪はじきにされた気分にでもなったのだろう。
だがそのことを恨んだりしていても物事は進まない。そしてそういうことも『風刃隊』には分かってはいる。
「んじゃ、その洞窟とやらまで散歩と行きますか。あ、ところでブレイドさん。その洞窟の名前はなんて言うんです?」
「ラミット洞窟だ。その手前だったか? 草むらの地域はヘルケーナ草原つって、魔物ではないが害獣が潜んでいることもある。その装備にお前らの実力なら、時々出てくる魔物も簡単にあしらえるだろう。だが十分注意しろよ?」
ブレイドからの注意を受け、ニィナから全員分の弁当を受け取った『風刃隊』は、店に残った面々に見送られ、万全の装備でラミット洞窟へと出発した。
「……新人だった頃は必死だったけど、ずいぶん余裕が出てきてからは余計なことまで目に入りやすくなったのよね」
「同期っていうか、近い時期に養成所卒業した冒険者達と比べてもダントツで実力が上なんだから気にしなくてもいいのにね」
キューリアとヒューラーは、あまり見ることのない普段とは違う彼らの様子を案じる。
「しょーがねぇんじゃねぇの? 男連中の魔力はゼロに近いままだし。道具でそれを補う知恵が出てきた分マシだとは思うがな。つーかお前らもいつまで駄弁ってんだ。とっとと仕事行ってこい。こっちも休業予告のチラシ貼っとかねぇとだしな」
「じゃあうちら全員にも知らせてくるから。十日後だったよな? テンシュさんも現場の下見、一回はしたほうがいいと思うぜ? みんなに知らせた後また夕方ごろ来るから」
その二人の心配を一切気にしない店主。そんな店主を気に掛けながらスウォードも店を後にした。
そしてブレイドが呟く。
「じゃあ俺たちは、誰かがここで碁をやるのを観戦してようかな」
「やることねぇならとっとと帰れ!」
常連客への店主の罵倒は相変わらずである。
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