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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日 休暇をとろう
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年中無休の『法具店アマミ』。
店主はほとんど店にいる。仕事中心の生活である。
休憩時間を設けるのは、仕事効率を上げるため。
睡眠をとるのは、疲れを溜めないため。
客以外をなるべく突き放すのは、仕事の時間を減らさないためと仕事をしないせいで、溜まるストレスを減らすため。
宝石の加工作業が好きな店主は、この世界の貨幣の価値も理解できるようになったため、店の経営をセレナと一緒にするようになった。
そうなると、作業以外の仕事も増える。そこでストレスが少しずつ溜まっていく。
『天美法具店』では経理課や従業員もいたので仕事を手分けすることができた。
しかしここでの他のスタッフは弟子扱いのシエラだけである。職人としての作業以外の仕事の経験はもちろんないわけではない。帳簿の書き方だの営業だのも、父親でもあった『天美法具店』の彼の先代店主から叩き込まれた。
だがそれらの仕事は『できる』のであって、『得意』ではない。セレナと一緒にするのだが、セレナの方が仕事が早い。
しかしその仕事量は、職人の仕事と比べればたいした物ではない。
だから好きなことを職業としている店主は仕事人間と言える。つまり、仕事に対してストレスはほとんど感じない。つまり楽しみながら仕事をすることが多い店主は、真の意味で仕事人間と言えるだろう。
そんな店主に休日は必要ないのかもしれないが、休日をとる目的は休養ばかりではない。
それ以外の目的が自分と店主に必要と考えたセレナは、シエラに休日をとる提案に同意を求める。
だが。
「わ、私と一緒に過ごすために店を休むんですかあ?! テ、テンシュさんのことはどうするんですぅ?!」
「早とちりしないのっ!」
言葉足らずだった。
「三人でどこかに骨休みっていうか、親睦を深めようって話よ!」
「で、でも今の話の流れだと、そう思っちゃいますよぉ」
気が抜けるシエラは、ラキュア族特有の4本腕の先にある手のひらで胸を抑える。
しかしすぐきつい表情をセレナに向けた。
「まさかまたどこかに消えちゃうんじゃないでしょうね?」
しないしないとセレナは否定するが、前科があるのでシエラはその否定を信じない。
「私の思い付きだからテンシュにも言わないといけないし、お客さんも予想外になるだろうから、いつからいつまでお休みしますってお報せしとかないとね」
「じゃああの子達はどうするんです? 勉強もですが、食事もアテにしてる子供達もいるんですよ?」
店主が勉強会を始める前の浮浪児達の生活は、その日を無事に過ごせるかどうかも分からない不安と戦いながらも、生きる本能に随うのみの生活だった。
店主には彼らの生活を補助する義務はない。しかし人道的、人情的に考えると、彼らを放置するのも問題である。
「う~ん……。テンシュに聞いてくる。テンシュー? お店のことなんだけどー」
「え? セレナさん、ちょっと。そのままじゃ。セレナさーん?」
シエラの呼び止める声を振り切って、セレナは店主の部屋に入る。
がシエラから見れば、店主の部屋に戻って行くという表現のほうが合っている。
彼女がセレナを呼び止めるのも無理はない。セレナはネグリジェのような寝間着姿のままである。
そしてセレナは店主の部屋で、着替えのためにトランクス一枚だけの姿の店主と対面。入ったと思ったら、そんな店主に足蹴にされて跳ね返されて転がるようにセレナは部屋から追い出された。
「……セレナさん……。せめて着替えてからにしましょうよ」
着替えもしていないのに普段の格好のままと思い込むセレナもセレナだが、その姿のまま長話を強いたシエラも大概である。
店主はほとんど店にいる。仕事中心の生活である。
休憩時間を設けるのは、仕事効率を上げるため。
睡眠をとるのは、疲れを溜めないため。
客以外をなるべく突き放すのは、仕事の時間を減らさないためと仕事をしないせいで、溜まるストレスを減らすため。
宝石の加工作業が好きな店主は、この世界の貨幣の価値も理解できるようになったため、店の経営をセレナと一緒にするようになった。
そうなると、作業以外の仕事も増える。そこでストレスが少しずつ溜まっていく。
『天美法具店』では経理課や従業員もいたので仕事を手分けすることができた。
しかしここでの他のスタッフは弟子扱いのシエラだけである。職人としての作業以外の仕事の経験はもちろんないわけではない。帳簿の書き方だの営業だのも、父親でもあった『天美法具店』の彼の先代店主から叩き込まれた。
だがそれらの仕事は『できる』のであって、『得意』ではない。セレナと一緒にするのだが、セレナの方が仕事が早い。
しかしその仕事量は、職人の仕事と比べればたいした物ではない。
だから好きなことを職業としている店主は仕事人間と言える。つまり、仕事に対してストレスはほとんど感じない。つまり楽しみながら仕事をすることが多い店主は、真の意味で仕事人間と言えるだろう。
そんな店主に休日は必要ないのかもしれないが、休日をとる目的は休養ばかりではない。
それ以外の目的が自分と店主に必要と考えたセレナは、シエラに休日をとる提案に同意を求める。
だが。
「わ、私と一緒に過ごすために店を休むんですかあ?! テ、テンシュさんのことはどうするんですぅ?!」
「早とちりしないのっ!」
言葉足らずだった。
「三人でどこかに骨休みっていうか、親睦を深めようって話よ!」
「で、でも今の話の流れだと、そう思っちゃいますよぉ」
気が抜けるシエラは、ラキュア族特有の4本腕の先にある手のひらで胸を抑える。
しかしすぐきつい表情をセレナに向けた。
「まさかまたどこかに消えちゃうんじゃないでしょうね?」
しないしないとセレナは否定するが、前科があるのでシエラはその否定を信じない。
「私の思い付きだからテンシュにも言わないといけないし、お客さんも予想外になるだろうから、いつからいつまでお休みしますってお報せしとかないとね」
「じゃああの子達はどうするんです? 勉強もですが、食事もアテにしてる子供達もいるんですよ?」
店主が勉強会を始める前の浮浪児達の生活は、その日を無事に過ごせるかどうかも分からない不安と戦いながらも、生きる本能に随うのみの生活だった。
店主には彼らの生活を補助する義務はない。しかし人道的、人情的に考えると、彼らを放置するのも問題である。
「う~ん……。テンシュに聞いてくる。テンシュー? お店のことなんだけどー」
「え? セレナさん、ちょっと。そのままじゃ。セレナさーん?」
シエラの呼び止める声を振り切って、セレナは店主の部屋に入る。
がシエラから見れば、店主の部屋に戻って行くという表現のほうが合っている。
彼女がセレナを呼び止めるのも無理はない。セレナはネグリジェのような寝間着姿のままである。
そしてセレナは店主の部屋で、着替えのためにトランクス一枚だけの姿の店主と対面。入ったと思ったら、そんな店主に足蹴にされて跳ね返されて転がるようにセレナは部屋から追い出された。
「……セレナさん……。せめて着替えてからにしましょうよ」
着替えもしていないのに普段の格好のままと思い込むセレナもセレナだが、その姿のまま長話を強いたシエラも大概である。
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