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三波新の孤軍奮闘編
謎の脱毛症 その1
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「アラタぁ! これ、なんなのお?!」
朝っぱらからうるせぇなぁ。
と、思う間もなく、俺は頬を引っ叩かれた。
毎夜添い寝を求めてくるサミーのハサミのパンチが直撃したっぽい。
意外と大きいその音と衝撃で、サミーがあたふたしている。
何という不快な朝なんだ。
原因はテンちゃんの朝一番の大声だ。
ニワトリのコケコッコなら、これは大いに許せる。
そういう生き物だから。
けどテンちゃんは、天馬はそういう生き物じゃねぇだろ。
たしかこいつとは、四、五年くらい生活を共にしたはずだ。
一度たりとも、朝から大声を張り上げるなんてことはなかった。
おかげて、二度寝をしようとしても寝付けない。
もうこうなったら起きるしかない午前五時半。
隣でサミーが必死に頭を上下に動かしている。
ごめんなさいをしてるつもりっぽい。
しょうがねぇな。
「何なんだよ……。目覚ましがなくても起きられるんだから、それまでは寝かせてくれっての……」
崖に穴を掘り、その洞窟の入り口に店舗を構えている。
その店舗の隣にも洞窟を掘って、そこには荷車を収納させている。
そして奥には、フィールドの地中を住み家としているミアーノとンーゴ、そして俺と一緒の部屋にいるサミー以外の全員がそれぞれの寝床になるような部屋を作っている。
が、テンちゃんは、夜は時々自分の部屋ではなく、荷車の隣で寝てたりする。
いわば車庫。
テンちゃんには、自分のお腹に誰かを寝せたい、という性癖(?)がある。
が、それを満たそうとすると自分の部屋では狭すぎる。
そこで、余地も広い荷車の車庫で寝たりする、というわけだ。
そんな毎日の中でこの日の朝、大事件が起きた。
「何だよお……。もう少し寝かせてく……」
部屋の外からモーナーの声が聞こえたが、途中で止まった。
「ちょっと、テンちゃん……何な……何……それ……」
「テンちゃーん……あんた……え……」
続いて聞こえてきた声はヨウミ。
何やら喋る途中で絶句したようだ。
それに重なるタイミングで寝ぼけたような声を出したマッキーも。
さらにそのあとで、クリマー、コーティ、ライムも出てきて、それぞれ言葉を途中で止めている。
「何なんだよ……。一体何が起きた?」
本当にヤバい状態なら、俺を呼ぶはずだ。
なのに誰も顔を出さないということは、そんな深刻な問題じゃないだろう。
「よいしょっと……さて……何が起きて……何お前ら、ぼーっとしてんだよ。って……え……? ええぇぇ?!」
みんながあっけに取られて同じ方を向いている。
そこにはテンちゃんがいるのだが……。
「ご……五円ハゲがあちこちに……」
「アラタぁ! 何なのこれ? 何なの?!」
テンちゃんの体の特徴と言えば、まず馬の姿。
そして、大きな羽根が二枚。
その二枚の羽根の下に、もう二枚羽根が現れるそうだが、大人にならないと出てこないらしい。
故に子供。
年齢は三桁を越えているけれども。
そして、足が六本。
サラブレッドとは比べ物にならないくらい太い。
どんなに重い物を背に乗せても、骨折しそうにない感じ。
そして、馬のようにたてがみが生えているが、それ以外の毛は短くはないが、長くもない。
それと、あとはテンちゃんだけの特徴として、その毛の色は灰色。
ところが今朝のテンちゃんの体は、その体毛が所々抜けている。
地肌は、俺達日本人とほぼ同じ肌色だった。
灰色の毛の中に肌色の丸が無数にある。
「どう……したの? それ……」
「あたしが知りたいよお!」
テンちゃんは半泣きだ。
「病気……じゃないんですか?」
「体は元気だよ?」
「抜け毛の季節とか?」
「聞いたことないよっ!」
聞いたことない……って、そりゃ同属と共同生活してないから、自分の種族の特性とか、知りようがないとも思うんだが。
「何なのかしらこれ……」
「ちょっとストップ、ヨウミ」
「え? 何か見つけた? コーティ」
テンちゃんに近寄るヨウミのコーティは、腕組みをして気難しそうな顔をする。
普段から宙に浮いているコーティは、常に羽根をせわしなくパタパタと動かしている。
その羽根の動きは今回に限り、何となく意味深に思えるが……気のせいか。
「テンちゃん、体は元気でも、自分が知らない間に病が進んでるかもしれないこともあるんだからね」
まぁそういうこともあるな。
それに、体の不調があったとしても、気にしないようにすれば気にならなくなるもんだ。
それに気付かず、他人に感染させることだってある。
が……。
「病気……じゃないな」
この判別も、能力のおかげ。
つくづく便利なもんもらえたなぁ。
目に見えない細かい物がどこに存在するかなんて、そこまでは分からんが、その存在感を感知するくらいはできる。
つまり、病原体、病原菌がどこに潜んでるかまでは分からんが、あるかないかの判断は容易い。
それにしても、この力って誰がくれたんだ?
なくなりそうにもない感じだし。
まぁ有り難いことには違いない。
「……アラタがそう言い切るってことは、まぁとりあえず安全、と見ていいわね」
そこに触っても感染はすることはない。
が、触った途端しびれや冷たさを感じることがあるかも分からんが……。
「……テンちゃん、痛かぁねぇか?」
「……平気―」
ただ触れただけでは何の問題もないのか。
少し押してみる。
弾力は抜群だ。
「……何してるの? 痛くないよ?」
「んじゃこう……」
触ってる指先をスライドさせてみる。
「ちょっ! くすぐったいよお!」
バサッと音を立てるくらいに羽根を動かしてながら、俺の腕を払いのける。
その動作も、感情の動きも、どこにも何の違和感はない。
触ったところが赤く腫れたり出血したり、ということもない。
待てよ?
病気じゃないなら、神経性とか精神面が原因かもしれない。
「……これ、治るのかなぁ?」
「そのままほっといたら、また毛が伸びるんじゃないの?」
「んー……あ、伸びなかったら、全部剃れば、この跡がなくなるよね?」
……いろいろと……こう……何と言うか……。
発想がバカすぎる。
つか、毛を全部剃っても飛べるのか?
それはさておき、こういう言動を見ると……そんな細かい神経の持ち主じゃないよな。
「……とりあえず今日は……テンちゃんは集団戦、休んだ方がいいかもな」
「えー?」
「見る人が見たら、ちょっと気持ち悪い感じを受けるかもしれないし、こっちは平気でも相手は警戒を大げさにするかもしれないし」
「えー……。やりたかったのにぃ……」
そんなジト目でこっちを見るな。
毛並みが揃ったら、あるいはその脱毛症が目立たなくなるまで我慢すればいいだろうが。
朝っぱらからうるせぇなぁ。
と、思う間もなく、俺は頬を引っ叩かれた。
毎夜添い寝を求めてくるサミーのハサミのパンチが直撃したっぽい。
意外と大きいその音と衝撃で、サミーがあたふたしている。
何という不快な朝なんだ。
原因はテンちゃんの朝一番の大声だ。
ニワトリのコケコッコなら、これは大いに許せる。
そういう生き物だから。
けどテンちゃんは、天馬はそういう生き物じゃねぇだろ。
たしかこいつとは、四、五年くらい生活を共にしたはずだ。
一度たりとも、朝から大声を張り上げるなんてことはなかった。
おかげて、二度寝をしようとしても寝付けない。
もうこうなったら起きるしかない午前五時半。
隣でサミーが必死に頭を上下に動かしている。
ごめんなさいをしてるつもりっぽい。
しょうがねぇな。
「何なんだよ……。目覚ましがなくても起きられるんだから、それまでは寝かせてくれっての……」
崖に穴を掘り、その洞窟の入り口に店舗を構えている。
その店舗の隣にも洞窟を掘って、そこには荷車を収納させている。
そして奥には、フィールドの地中を住み家としているミアーノとンーゴ、そして俺と一緒の部屋にいるサミー以外の全員がそれぞれの寝床になるような部屋を作っている。
が、テンちゃんは、夜は時々自分の部屋ではなく、荷車の隣で寝てたりする。
いわば車庫。
テンちゃんには、自分のお腹に誰かを寝せたい、という性癖(?)がある。
が、それを満たそうとすると自分の部屋では狭すぎる。
そこで、余地も広い荷車の車庫で寝たりする、というわけだ。
そんな毎日の中でこの日の朝、大事件が起きた。
「何だよお……。もう少し寝かせてく……」
部屋の外からモーナーの声が聞こえたが、途中で止まった。
「ちょっと、テンちゃん……何な……何……それ……」
「テンちゃーん……あんた……え……」
続いて聞こえてきた声はヨウミ。
何やら喋る途中で絶句したようだ。
それに重なるタイミングで寝ぼけたような声を出したマッキーも。
さらにそのあとで、クリマー、コーティ、ライムも出てきて、それぞれ言葉を途中で止めている。
「何なんだよ……。一体何が起きた?」
本当にヤバい状態なら、俺を呼ぶはずだ。
なのに誰も顔を出さないということは、そんな深刻な問題じゃないだろう。
「よいしょっと……さて……何が起きて……何お前ら、ぼーっとしてんだよ。って……え……? ええぇぇ?!」
みんながあっけに取られて同じ方を向いている。
そこにはテンちゃんがいるのだが……。
「ご……五円ハゲがあちこちに……」
「アラタぁ! 何なのこれ? 何なの?!」
テンちゃんの体の特徴と言えば、まず馬の姿。
そして、大きな羽根が二枚。
その二枚の羽根の下に、もう二枚羽根が現れるそうだが、大人にならないと出てこないらしい。
故に子供。
年齢は三桁を越えているけれども。
そして、足が六本。
サラブレッドとは比べ物にならないくらい太い。
どんなに重い物を背に乗せても、骨折しそうにない感じ。
そして、馬のようにたてがみが生えているが、それ以外の毛は短くはないが、長くもない。
それと、あとはテンちゃんだけの特徴として、その毛の色は灰色。
ところが今朝のテンちゃんの体は、その体毛が所々抜けている。
地肌は、俺達日本人とほぼ同じ肌色だった。
灰色の毛の中に肌色の丸が無数にある。
「どう……したの? それ……」
「あたしが知りたいよお!」
テンちゃんは半泣きだ。
「病気……じゃないんですか?」
「体は元気だよ?」
「抜け毛の季節とか?」
「聞いたことないよっ!」
聞いたことない……って、そりゃ同属と共同生活してないから、自分の種族の特性とか、知りようがないとも思うんだが。
「何なのかしらこれ……」
「ちょっとストップ、ヨウミ」
「え? 何か見つけた? コーティ」
テンちゃんに近寄るヨウミのコーティは、腕組みをして気難しそうな顔をする。
普段から宙に浮いているコーティは、常に羽根をせわしなくパタパタと動かしている。
その羽根の動きは今回に限り、何となく意味深に思えるが……気のせいか。
「テンちゃん、体は元気でも、自分が知らない間に病が進んでるかもしれないこともあるんだからね」
まぁそういうこともあるな。
それに、体の不調があったとしても、気にしないようにすれば気にならなくなるもんだ。
それに気付かず、他人に感染させることだってある。
が……。
「病気……じゃないな」
この判別も、能力のおかげ。
つくづく便利なもんもらえたなぁ。
目に見えない細かい物がどこに存在するかなんて、そこまでは分からんが、その存在感を感知するくらいはできる。
つまり、病原体、病原菌がどこに潜んでるかまでは分からんが、あるかないかの判断は容易い。
それにしても、この力って誰がくれたんだ?
なくなりそうにもない感じだし。
まぁ有り難いことには違いない。
「……アラタがそう言い切るってことは、まぁとりあえず安全、と見ていいわね」
そこに触っても感染はすることはない。
が、触った途端しびれや冷たさを感じることがあるかも分からんが……。
「……テンちゃん、痛かぁねぇか?」
「……平気―」
ただ触れただけでは何の問題もないのか。
少し押してみる。
弾力は抜群だ。
「……何してるの? 痛くないよ?」
「んじゃこう……」
触ってる指先をスライドさせてみる。
「ちょっ! くすぐったいよお!」
バサッと音を立てるくらいに羽根を動かしてながら、俺の腕を払いのける。
その動作も、感情の動きも、どこにも何の違和感はない。
触ったところが赤く腫れたり出血したり、ということもない。
待てよ?
病気じゃないなら、神経性とか精神面が原因かもしれない。
「……これ、治るのかなぁ?」
「そのままほっといたら、また毛が伸びるんじゃないの?」
「んー……あ、伸びなかったら、全部剃れば、この跡がなくなるよね?」
……いろいろと……こう……何と言うか……。
発想がバカすぎる。
つか、毛を全部剃っても飛べるのか?
それはさておき、こういう言動を見ると……そんな細かい神経の持ち主じゃないよな。
「……とりあえず今日は……テンちゃんは集団戦、休んだ方がいいかもな」
「えー?」
「見る人が見たら、ちょっと気持ち悪い感じを受けるかもしれないし、こっちは平気でも相手は警戒を大げさにするかもしれないし」
「えー……。やりたかったのにぃ……」
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