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舞姫への悲恋編
そっちとこっちの境界線 その6
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二人が一年間、それぞれ進んだ道で頑張った結果、相手は国中で名が売れ、自分はと見てみれば、ようやくスタートラインに到着。
この二人、それぞれに人生においてすれ違うことすらない関係なら、全く何の問題もない。
それが何か? で済む話。
ところが将来を誓い合った間柄となれば……。
「……どうせ……俺なんかっ!」
と、努力が報われてない方は、こんな風にいじけて自虐して自棄になって、だよなぁ。
昨夜のこいつの対応を考えると尚更だ。
メインゲストを蔑ろにして、おまけのゲストに好意を持っちまったんだから。
その接客姿勢を窘められるのは、そりゃ当然としてもその窘めた奴がそのおまけだってんだから……。
見下された、と誤解、錯覚してもおかしくはねぇし、それは誰かから咎められるべきもんじゃねぇし禁止にされるべきもんでもねぇ。
つか、メイスとマイヤの二人の思惑がすれ違ってばかりなんだよな。
幼馴染として会えばよかったのに、冒険者と踊り子っつー肩書で会っちゃったもんだからなぁ。
「ちょ、ちょっと! マイル!」
その思いを口にすれば、メイスの奴ぁ尚更惨めな思いをするだろうし、この場にいたたまれなくなって……定番だよな。
この場から走り去るってのは。
当然マイヤはあいつを追いかける。
そして俺は……寝よっかな?
いや、その前に昼飯か。
「……アラタ。追いかけなくていいのか?」
「何で野郎を追いかけなきゃならん? いや、異性を追いかける趣味もないが。あ、同性にも興味はないぞ?」
「……そーいう話をしてんじゃねぇよ。アラタ。俺らはよく分からんが、あの女の子は……」
やっぱ分からなかったか?
まぁ俺だってすぐには分からんかったからなあ。
「昨日の踊り子だよ。マイヤ」
「マジか?! どういう関係だよ、メイスとあの子!」
冒険者達が騒ぎ出す。
買い物客がゼロ。
イールも今日は来ていないから、彼女を目当てに来る連中もいない。
騒ぎが広がることはなさそうで助かった。
仕事以外で騒ぎが起きると、米の区別の精度にまで響きかねねぇからな。
「んなことよりも、当人同士の問題だろ? 俺が興味半分面白半分で首突っ込んでいい話じゃない」
「……とりあえず、様子見てくらぁ。あ、昨日の分の費用はこれ……」
「あんたが払う義理はねぇよ。あいつにその金、持って来させろよ。昨日の夜の件、誘ったのはあいつでお前らじゃねえからな。それが責任ってやつだし、責任の果たし方ってのも身に付けさせる必要があるだろ? 師匠と呼ばれた者のとしちゃよ」
「そ……それもそうだな。そっちの方が筋は通ってるしな。ちょいと追いかけて連れ戻してくるわ。おぅ、みんな、行くぞ」
感情の爆発にその身を任せて行動を起こしても、まだ周りから赦される年齢かもしれん。
が、それは子供の特権だ。
大人がそんなことをしたら、まさに大人げないってやつだ。
そんなメイスを追いかけるマイヤ。
おそらくあいつをケアする気なんだろう。
大人じゃねぇか。
……自分から、相手に釣り合う理想像からかけ離れるようなことをしでかしてどうするっての。
社会的立場に大きな隔たりができちまった理由は、そこにもあるんじゃねぇの?
※※※※※ ※※※※※
で、メイスとマイヤがまた戻ってきた。
と言っても、俺らがフィールドで昼飯を食ってる間に、二人きりでやってきた。
のんびり飯を食ってるときにあーだこーだと喚かれたくないから、飯の時間が終わるまで待ってろと。
昼休みの時間にすることは、休むことだけだ。
いくら体力回復アイテムとして俺らのおにぎりが使われるとしても、ここは救急病院か何かじゃねぇから時間通りに予定を進めていきたいもんだ。
ということで、昼過ぎの時間。
シュルツ達はどこかで待ってんだろう。
二人で俺んとこに行け、と言われたらしい。
「……さて、だ」
「はい」
……はい、じゃねーよ。
昨夜の食事代と交通費持ってきたんじゃねぇのかよ。
まぁ払わなきゃ払わないで別に構わんが。
じゃあ何しに来たんだって話だが。
なんか二人してもじもじしてる。
てか、何しに来たんだこいつら。
「あの……アラタさん……」
「何だよメイス」
「……昨日は、ありがとうございました。それと、お金、払わせてしまってすいませんでした。これ、謝礼ということで、昨夜の分の埋め合わせにしていただけたら……」
「……おう」
若いから、爆発する感情を抑えないまま行動に出る。
が、おそらくシュルツ達から注意受けたんだろうな。
その注意を素直に受け入れて行動に起こすってのも、これもまた、若さなんだろうな。
いい大人に囲まれてんじゃねーか、こいつら。
けどまだ……わだかまりが残ってるっぽいな。
「で、お前ら……このままでいいのか?」
「え?」
「ひねくれてこじれて落ち込んで。本人だけの問題ならそれで終わりで済むけどよ。周りを巻き込んだんだぜ? 昨日はおまけとは言え、ゲストとして招かれた割には、今一つすっきりできねぇで帰る羽目になったわけだが。あぁ、金銭の問題じゃねぇ。……別に俺に言わなくてもいい。テメェで分かってるはずだ」
メイスは何も言わない。
言えないんだろうな。
そこら辺は、なりかけてる大人のプライド、か?
それがなきゃ、マイヤに「捨てないでー」とか泣きながら縋りたい思いだろうよ。
「俺が気にするこっちゃねぇし、俺が口出しすることでもねぇ。ただ……お嬢ちゃんにはシアンに話通したこともあるからよ」
「えっと、それは……」
言い淀むマイヤ。
それを聞いて歯を食いしばって握りこぶしを固くするメイス。
意思疎通はまだしてないらしい。
高みの見物で楽しめるもんなら、このまま放置でかまわねぇんだけどなぁ。
……誤解を解くってのは、当人同士じゃなかなか難しいもんだ。
第三者の介入がなかったら、俺はまだマイヤから、性的嗜好の誤解が続いてたとこだろうしな。
この二人、それぞれに人生においてすれ違うことすらない関係なら、全く何の問題もない。
それが何か? で済む話。
ところが将来を誓い合った間柄となれば……。
「……どうせ……俺なんかっ!」
と、努力が報われてない方は、こんな風にいじけて自虐して自棄になって、だよなぁ。
昨夜のこいつの対応を考えると尚更だ。
メインゲストを蔑ろにして、おまけのゲストに好意を持っちまったんだから。
その接客姿勢を窘められるのは、そりゃ当然としてもその窘めた奴がそのおまけだってんだから……。
見下された、と誤解、錯覚してもおかしくはねぇし、それは誰かから咎められるべきもんじゃねぇし禁止にされるべきもんでもねぇ。
つか、メイスとマイヤの二人の思惑がすれ違ってばかりなんだよな。
幼馴染として会えばよかったのに、冒険者と踊り子っつー肩書で会っちゃったもんだからなぁ。
「ちょ、ちょっと! マイル!」
その思いを口にすれば、メイスの奴ぁ尚更惨めな思いをするだろうし、この場にいたたまれなくなって……定番だよな。
この場から走り去るってのは。
当然マイヤはあいつを追いかける。
そして俺は……寝よっかな?
いや、その前に昼飯か。
「……アラタ。追いかけなくていいのか?」
「何で野郎を追いかけなきゃならん? いや、異性を追いかける趣味もないが。あ、同性にも興味はないぞ?」
「……そーいう話をしてんじゃねぇよ。アラタ。俺らはよく分からんが、あの女の子は……」
やっぱ分からなかったか?
まぁ俺だってすぐには分からんかったからなあ。
「昨日の踊り子だよ。マイヤ」
「マジか?! どういう関係だよ、メイスとあの子!」
冒険者達が騒ぎ出す。
買い物客がゼロ。
イールも今日は来ていないから、彼女を目当てに来る連中もいない。
騒ぎが広がることはなさそうで助かった。
仕事以外で騒ぎが起きると、米の区別の精度にまで響きかねねぇからな。
「んなことよりも、当人同士の問題だろ? 俺が興味半分面白半分で首突っ込んでいい話じゃない」
「……とりあえず、様子見てくらぁ。あ、昨日の分の費用はこれ……」
「あんたが払う義理はねぇよ。あいつにその金、持って来させろよ。昨日の夜の件、誘ったのはあいつでお前らじゃねえからな。それが責任ってやつだし、責任の果たし方ってのも身に付けさせる必要があるだろ? 師匠と呼ばれた者のとしちゃよ」
「そ……それもそうだな。そっちの方が筋は通ってるしな。ちょいと追いかけて連れ戻してくるわ。おぅ、みんな、行くぞ」
感情の爆発にその身を任せて行動を起こしても、まだ周りから赦される年齢かもしれん。
が、それは子供の特権だ。
大人がそんなことをしたら、まさに大人げないってやつだ。
そんなメイスを追いかけるマイヤ。
おそらくあいつをケアする気なんだろう。
大人じゃねぇか。
……自分から、相手に釣り合う理想像からかけ離れるようなことをしでかしてどうするっての。
社会的立場に大きな隔たりができちまった理由は、そこにもあるんじゃねぇの?
※※※※※ ※※※※※
で、メイスとマイヤがまた戻ってきた。
と言っても、俺らがフィールドで昼飯を食ってる間に、二人きりでやってきた。
のんびり飯を食ってるときにあーだこーだと喚かれたくないから、飯の時間が終わるまで待ってろと。
昼休みの時間にすることは、休むことだけだ。
いくら体力回復アイテムとして俺らのおにぎりが使われるとしても、ここは救急病院か何かじゃねぇから時間通りに予定を進めていきたいもんだ。
ということで、昼過ぎの時間。
シュルツ達はどこかで待ってんだろう。
二人で俺んとこに行け、と言われたらしい。
「……さて、だ」
「はい」
……はい、じゃねーよ。
昨夜の食事代と交通費持ってきたんじゃねぇのかよ。
まぁ払わなきゃ払わないで別に構わんが。
じゃあ何しに来たんだって話だが。
なんか二人してもじもじしてる。
てか、何しに来たんだこいつら。
「あの……アラタさん……」
「何だよメイス」
「……昨日は、ありがとうございました。それと、お金、払わせてしまってすいませんでした。これ、謝礼ということで、昨夜の分の埋め合わせにしていただけたら……」
「……おう」
若いから、爆発する感情を抑えないまま行動に出る。
が、おそらくシュルツ達から注意受けたんだろうな。
その注意を素直に受け入れて行動に起こすってのも、これもまた、若さなんだろうな。
いい大人に囲まれてんじゃねーか、こいつら。
けどまだ……わだかまりが残ってるっぽいな。
「で、お前ら……このままでいいのか?」
「え?」
「ひねくれてこじれて落ち込んで。本人だけの問題ならそれで終わりで済むけどよ。周りを巻き込んだんだぜ? 昨日はおまけとは言え、ゲストとして招かれた割には、今一つすっきりできねぇで帰る羽目になったわけだが。あぁ、金銭の問題じゃねぇ。……別に俺に言わなくてもいい。テメェで分かってるはずだ」
メイスは何も言わない。
言えないんだろうな。
そこら辺は、なりかけてる大人のプライド、か?
それがなきゃ、マイヤに「捨てないでー」とか泣きながら縋りたい思いだろうよ。
「俺が気にするこっちゃねぇし、俺が口出しすることでもねぇ。ただ……お嬢ちゃんにはシアンに話通したこともあるからよ」
「えっと、それは……」
言い淀むマイヤ。
それを聞いて歯を食いしばって握りこぶしを固くするメイス。
意思疎通はまだしてないらしい。
高みの見物で楽しめるもんなら、このまま放置でかまわねぇんだけどなぁ。
……誤解を解くってのは、当人同士じゃなかなか難しいもんだ。
第三者の介入がなかったら、俺はまだマイヤから、性的嗜好の誤解が続いてたとこだろうしな。
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