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米からの騒動編
例のブツが行方不明 その10
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で、その日の晩飯の時間。
母子はドーセンとこで晩飯を食ってる。
ガンジュウを連れた最初の日の騒ぎったらもうね。
想像に難くない。
一か月分も繰り返したら、もう慣れたっぽかった。
そしてこっちのフィールドはというと、だ。
「えぇ~?!」
「そんなこと言ったの?!」
「そりゃあ、俺達のお、言うこともお、聞かなかったけどさあ~」
忘れてたこと、これだった。
仲間らに、リースナー母子らを独立させることを伝えること。
「お前らなぁ。仲良しこよしもいいけどよ。仲良くなったから、自分らの思う通りの人生設計を立ててもらえるとか思うなよ」
気に入ったからずっとそばにいてほしい、と思うことは悪いことじゃねぇし、むしろ自然な感情の動きだ。
だがそれを実行するのは良くねぇだろ。
気に入った相手を、自分の思う通りに動かせる玩具扱いってことだ。
それはつまり、俺がここに来る前の……。
「でもさ、リースナー達の人生に責任、誰も持てるわけじゃないしね。あたしはアラタに賛成」
まさかのコーティが同意一号。
つか、リースナーさんに呼び捨てかよ。
ずいぶん仲良くなってんな、お前ら。
「そりゃあ……まぁ……そうなんだけど……」
「それに、リースナー達は独立する気なんでしょ? それを引き留めるってことは、今まであたし達が世話してやってんのに勝手に出ていくってどういうこと? みたいな、恩着せがましいことを言ってるも同然じゃない?」
ほんと、コーティが俺にここまで味方するってのは珍しい。
それも俺が言いたい事だった。
「ミィ……」
サミーが力なく、地面を同時に両腕で叩いてる。
喋れない。けど理解できる。
そんな種類の魔物という立ち位置なら、サミーが一番立場が近いかもしれない。
一番仲間意識が強そうなサミーも、独立に賛成の意思表示。
あの母子にも生活がある。それにガンジュウが従うなら、その生活を優先するなら母子の意志は尊重しなきゃならんし、ガンジュウの行動も引き留めることはしちゃならん。
それに、コーティの言う通り、誰にも何の貸し借りもなしっていう生活上の俺の姿勢は、この世界に来てから何の変化もない。
シアンの戴冠式の後も、だ。
「俺の言いたい要点はコーティにみんな言われたが、ま、そんなとこだ。あの母子には、俺たちへの礼はいらないとも言っといたしな」
「え?」
「アラタらしいってば、アラタらしいけどね」
らしい、か。
だが実際問題、よく考えてみれば、リースナー母子から礼を言われることはしていない。
襲い掛かってきたガンジュウは、国から全市町村に向けて、各地域防衛の指示を出されてた。
これにリースナー母子は関わってはいない。
彼女らが見つけた卵は、魔物商に買い取ってもらった。
管理責任は魔物商にあり、彼女達とはその時点で、責任という縁は切れた。
俺達だって、サキワ村から、防衛に手伝ってくれ、と言われた程度の縁。
俺達がしたことは、暴れようとしてたガンジュウをひっくり返して氷で地面とくっつけて、足止めした程度。
もう一体のガンジュウも、彼女らを追いかけただけ。
途中で、彼女らに傷つけようとした兄弟を倒した。
そんな風に考えると、俺ら個人では、勝手に騒いで勝手にあれこれ考えて、勝手にそっちで自滅、解決してもらっただけ。
冒険者らも、その後片付けをしてくれただけ。
だから、俺らしい言動というよりも、物事の道理上、礼を言われる筋合いじゃなかった、と考えたんだがな。
それでもリースナー母子はかなり恐縮してたが。
「礼を言わせるくらい、いいと思うんだけどね」
「そうですよ。気持ちの問題……気持ちだけの問題ってのもありますし」
勝手に決めるなっつー反論がないのが意外だな。
けど、俺の言ってること自体が、まさかの出来事って感じではあるな。
「いつまでも俺に頭が上がらない、なんてこと言われるのもやだったからな」
「じゃあ、今後のタオル販売の係はどうするの? もう終わり?」
「ガンジュウ討伐の際に、数日休ませてたろ? 施設からの連中の手伝い。ぼちぼち再開するつもりだから、そいつらにやらせるさ。あ、お前らの集団戦の訓練の相手の受け付けも再開する予定だから」
雰囲気がガラッと変わった。
よほど訓練させるのが好きらしい。
……好きなのは何なのかは分からんが。
まぁ俺と冒険者らは、あの後礼は言われたけどな。
ただ、息子がドーセンとこで働いてるから、そっちにも話通さないとってことで、ここを出るのはその挨拶の後ってことらしいが。
「でもさぁ、集団戦、一回くらいはやってみたかったなー。あんな種族初めて見たからさあ」
「ライムモー」
鉱物と魔物の合成めいた魔物は誰もが初めて目にしたわけだから、テンちゃんに限らず好奇心旺盛なのは分かるけども。
けど向こうの意思がこっちに伝わりづらい分、手加減とかも難しいわけだしな。
「でもさ、それでもこっちはいろいろ助かったところもあるわけだしさ、お見送りくらいはしたいよ」
「明日の夕方に立つっつってたな。冒険者らが隣村の隣の市? まで付き添って、いろいろと買い揃えるんだとよ」
「あー……。こっちじゃあまり品揃えがいい店なさそうだもんね」
おい、コーティ。
それ、村人には言うんじゃねぇぞ?
「隣村もそんな感じじゃなかったし」
こら、マッキー。
連鎖反応起こすんじゃない。
「紅丸……のことはまだもやもやするけど、いいもの揃えてるっぽいけど……」
「呼び出すのが面倒だ。ついでに買い物する時に傍に店があったら利用する、くらいな感じだな」
向こうは、注文があればどこでも飛んで行くつもりだろうが、俺はそこまでヤツと親密度が高いとは思ってないしな。
「だどもよ、ただ見送るだけでえぇんか? なんかお土産とか持たせたらどないよ?」
「んー、そうよねぇ。何かこう……単なる記念品とか思い出の品物ってんじゃなくて……いいのがあったらいいけどなー」
なんか、ヨウミが馬鹿な事言ってやがる。
何かを持たせる?
そんなん決まってんじゃねぇか。
「心配すんな。別に思い出の品じゃなくたっていいんだよ、んなもん」
「何それ?」
「ナニカイイノガ、アルノカ?」
「そりゃもう、売るだけあるっての。別にお前らが心配するこっちゃねぇよ」
母子はドーセンとこで晩飯を食ってる。
ガンジュウを連れた最初の日の騒ぎったらもうね。
想像に難くない。
一か月分も繰り返したら、もう慣れたっぽかった。
そしてこっちのフィールドはというと、だ。
「えぇ~?!」
「そんなこと言ったの?!」
「そりゃあ、俺達のお、言うこともお、聞かなかったけどさあ~」
忘れてたこと、これだった。
仲間らに、リースナー母子らを独立させることを伝えること。
「お前らなぁ。仲良しこよしもいいけどよ。仲良くなったから、自分らの思う通りの人生設計を立ててもらえるとか思うなよ」
気に入ったからずっとそばにいてほしい、と思うことは悪いことじゃねぇし、むしろ自然な感情の動きだ。
だがそれを実行するのは良くねぇだろ。
気に入った相手を、自分の思う通りに動かせる玩具扱いってことだ。
それはつまり、俺がここに来る前の……。
「でもさ、リースナー達の人生に責任、誰も持てるわけじゃないしね。あたしはアラタに賛成」
まさかのコーティが同意一号。
つか、リースナーさんに呼び捨てかよ。
ずいぶん仲良くなってんな、お前ら。
「そりゃあ……まぁ……そうなんだけど……」
「それに、リースナー達は独立する気なんでしょ? それを引き留めるってことは、今まであたし達が世話してやってんのに勝手に出ていくってどういうこと? みたいな、恩着せがましいことを言ってるも同然じゃない?」
ほんと、コーティが俺にここまで味方するってのは珍しい。
それも俺が言いたい事だった。
「ミィ……」
サミーが力なく、地面を同時に両腕で叩いてる。
喋れない。けど理解できる。
そんな種類の魔物という立ち位置なら、サミーが一番立場が近いかもしれない。
一番仲間意識が強そうなサミーも、独立に賛成の意思表示。
あの母子にも生活がある。それにガンジュウが従うなら、その生活を優先するなら母子の意志は尊重しなきゃならんし、ガンジュウの行動も引き留めることはしちゃならん。
それに、コーティの言う通り、誰にも何の貸し借りもなしっていう生活上の俺の姿勢は、この世界に来てから何の変化もない。
シアンの戴冠式の後も、だ。
「俺の言いたい要点はコーティにみんな言われたが、ま、そんなとこだ。あの母子には、俺たちへの礼はいらないとも言っといたしな」
「え?」
「アラタらしいってば、アラタらしいけどね」
らしい、か。
だが実際問題、よく考えてみれば、リースナー母子から礼を言われることはしていない。
襲い掛かってきたガンジュウは、国から全市町村に向けて、各地域防衛の指示を出されてた。
これにリースナー母子は関わってはいない。
彼女らが見つけた卵は、魔物商に買い取ってもらった。
管理責任は魔物商にあり、彼女達とはその時点で、責任という縁は切れた。
俺達だって、サキワ村から、防衛に手伝ってくれ、と言われた程度の縁。
俺達がしたことは、暴れようとしてたガンジュウをひっくり返して氷で地面とくっつけて、足止めした程度。
もう一体のガンジュウも、彼女らを追いかけただけ。
途中で、彼女らに傷つけようとした兄弟を倒した。
そんな風に考えると、俺ら個人では、勝手に騒いで勝手にあれこれ考えて、勝手にそっちで自滅、解決してもらっただけ。
冒険者らも、その後片付けをしてくれただけ。
だから、俺らしい言動というよりも、物事の道理上、礼を言われる筋合いじゃなかった、と考えたんだがな。
それでもリースナー母子はかなり恐縮してたが。
「礼を言わせるくらい、いいと思うんだけどね」
「そうですよ。気持ちの問題……気持ちだけの問題ってのもありますし」
勝手に決めるなっつー反論がないのが意外だな。
けど、俺の言ってること自体が、まさかの出来事って感じではあるな。
「いつまでも俺に頭が上がらない、なんてこと言われるのもやだったからな」
「じゃあ、今後のタオル販売の係はどうするの? もう終わり?」
「ガンジュウ討伐の際に、数日休ませてたろ? 施設からの連中の手伝い。ぼちぼち再開するつもりだから、そいつらにやらせるさ。あ、お前らの集団戦の訓練の相手の受け付けも再開する予定だから」
雰囲気がガラッと変わった。
よほど訓練させるのが好きらしい。
……好きなのは何なのかは分からんが。
まぁ俺と冒険者らは、あの後礼は言われたけどな。
ただ、息子がドーセンとこで働いてるから、そっちにも話通さないとってことで、ここを出るのはその挨拶の後ってことらしいが。
「でもさぁ、集団戦、一回くらいはやってみたかったなー。あんな種族初めて見たからさあ」
「ライムモー」
鉱物と魔物の合成めいた魔物は誰もが初めて目にしたわけだから、テンちゃんに限らず好奇心旺盛なのは分かるけども。
けど向こうの意思がこっちに伝わりづらい分、手加減とかも難しいわけだしな。
「でもさ、それでもこっちはいろいろ助かったところもあるわけだしさ、お見送りくらいはしたいよ」
「明日の夕方に立つっつってたな。冒険者らが隣村の隣の市? まで付き添って、いろいろと買い揃えるんだとよ」
「あー……。こっちじゃあまり品揃えがいい店なさそうだもんね」
おい、コーティ。
それ、村人には言うんじゃねぇぞ?
「隣村もそんな感じじゃなかったし」
こら、マッキー。
連鎖反応起こすんじゃない。
「紅丸……のことはまだもやもやするけど、いいもの揃えてるっぽいけど……」
「呼び出すのが面倒だ。ついでに買い物する時に傍に店があったら利用する、くらいな感じだな」
向こうは、注文があればどこでも飛んで行くつもりだろうが、俺はそこまでヤツと親密度が高いとは思ってないしな。
「だどもよ、ただ見送るだけでえぇんか? なんかお土産とか持たせたらどないよ?」
「んー、そうよねぇ。何かこう……単なる記念品とか思い出の品物ってんじゃなくて……いいのがあったらいいけどなー」
なんか、ヨウミが馬鹿な事言ってやがる。
何かを持たせる?
そんなん決まってんじゃねぇか。
「心配すんな。別に思い出の品じゃなくたっていいんだよ、んなもん」
「何それ?」
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