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米からの騒動編
例のブツが行方不明 その7
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村に来る、こっちに来るガンジュウは一体だけだと思っていた。
その一体は、ほぼ捕獲状態。
あとは仕留めて終わり。めでたしめでたし。
のはずだった。
もう一体、接近してくるとは思わなかった。
気配では、捕えた魔物と同じ種族。
まさかのレア種族がもう一体なんて、誰が想像できるかっての。
いや、文句は後だ。
現状確認!
今俺達は、フィールドの温泉の脱衣場の建物を背にしている。
左を向いたその方向には、奥に行けば行くほど魔物が多く潜むエリア。
サミーの家族も生息している地域だ。
右を向けばその先には俺達の店があり、サキワ村の中心地になる。
フィールドの半分くらいが氷で覆われている。
コーティとマッキーが氷の状態を魔法で保持。
サキワ村方面はかすかに下り坂になっている。
ガンジュウはフィールドの外のすぐの位置に、林道でひっくり返ったまま。
そのガンジュウは隣の村から、村をつなぐ道路ではなく、森林の中を突っ切って真っ直ぐこっちにやってきた。
隣村とこっちの村の槍衾の効果だ。
だから俺の店に向かって、多少は蛇行をしながらそこに至る。
「ところでえ、どこからあ、もう一体はあ、近づいてくるんだあ?」
「一体目と同じ所を通ってくるんでしょ?」
ヨウミ、残念。外れだ。
近づいてくるガンジュウは、魔物が多くいる山奥の方面から近づいてくる。
つまり俺達の身に何事もなければ、近づいてくるガンジュウは俺達の目の前を横切って、仰向けのガンジュウに接触するはずだ。
「えぇ?! だって……通り道なんてなさそうですよね? せいぜい獣道なんでしょう?」
「所々に開けたところもあるみたいなんだが、そこをあえて避けて通ってる感じだ。人の目になるべく触れないように、みたいな」
となれば、目の前のフィールドを横切ることはないかもな。
迂回して、林の中を通りながら仰向けガンジュウに接近、か。
「なるほどねぇ。だからレアな種族にされちゃってるのかもね」
ヨウミのそこら辺の考察は、いまはどうでもいいか。
それよりも、だ。
「とりあえず、全員ここに集合。コーティとマッキー、もう少し氷の保持、頑張ってくれ」
「しょーがないわね。やったげるわよ」
「うん、分かった」
「他は、リースナーさんらを守る態勢を取りつつ各々防御」
「はいよ」
「こっちからは何人か、あの母子の護衛に回るか、なあ、みんな」
「おう」
一時は慌てふためいたが、何とか持ち直したってところだな。
※※※※※ ※※※※※
接近してきたガンジュウは、俺の予想通りに林の中から林道に出たようだ。
ここからは状況は見えないが、地響き、振動、魔物の唸り声が伝わってきた。
気配の様子からは、おそらく仰向けガンジュウは一方的にやられっぱなし。
見にいってもいいが、ガンジュウが起き上がったりしたら間違いなく生贄になるだろうし、俺を襲う気がなくても、二体の魔物乱闘に巻き込まれちまう。
ここは我慢。
だが……魔物……魔獣にも血液ってのが流れてるんだろうな。
その匂いらしいものが漂ってきた。
「だ、大丈夫なの?」
「今のところは、な」
予想外の事が起きりゃ、流石に不安だ。
リースナー母子はよく踏ん張ってるな。
温泉の方から誰かがやってきた。
「アラタぁ、すまん。計画通りにいけんかったわ。で、ンーゴからの伝言やぁ。このまま湯船に浸かっててええんかて。なんかよう分からんがあ……どうなっとんの?」
最初の計画が上手くいかなかったのは、別に二人のせいじゃねぇよ。
計画通りにうまくいく、と思い込んでた俺に原因はあるが……こっちにやってくるガンジュウのせいってのが正解、だと思う。
「お、おぉ、ミアーノ。俺らからもよく分からん。だが氷漬けは有効な手段ってのは分かったから、ンーゴには、耐えられるならそのまま待機で」
「そりゃあ何の問題もねぇども。あんの母子、どっかに避難させた方がいくねぇか?」
リースナーを追いかけてるように見えたガンジュウは、今や虫の息。
追っかけてきたガンジュウに馬乗りにされて、おそらくはその腹を噛み切られてる。
同時に、力を落とした冒険者が多数続出。
素材が食い尽くされる、個体がでかけりゃ価値も大きい素材が細かく砕かれていく。
おそらくその現状を想像してんだろうな。
ご愁傷様。だが命あっての物種だろう?
だからここは安全……とは言い切れない。
が、ここから退避したとして、退避しながら防御態勢を取れるとは思えない。
襲い掛かってるガンジュウが、こっちにやってくる可能性だってあるんだ。
今は、とにかく目の前の同属の息の根を止めるつもりでいるようだがはてさて……。
※※※※※ ※※※※※
「……ケリがついた。こっちに向かってゆっくりやってくる」
血の匂いがひどい。
魔物、魔獣の中に体液があったら、人間みたいな成分なんだろうか。
「おい、アラタっ。こっちに襲いに来るのか?!」
「落ち着け。……甘えたい感情を持ってる。戦闘の必要はなさそうだ」
「ここは温泉だけに、かな?」
ヨウミがテンちゃん並みの下らねぇことを言うとは思わなかった。
つか、銭湯って、この世界にもあるのか。
いや、それどころじゃねぇ。
「刷り込み、なんだろうか。これまで得た情報をまとめると、多分あの母子の所に来ると思うぜ?」
「命の危険は」
「殺そう、死なそうとする目的はなさそうだ。だがその気はなくても死なせてしまうこともあり得る」
よな。
抱っこされただけで体が圧迫されることだって、ないとは言えねぇ。
そして、こっちが武器を使って攻撃を仕掛けても、俺らには敵意がないと思われることだってあるはずだ。
その力加減、向こうが分かってくれるんなら何の心配もねぇんだが。
「とりあえず、向こうには暴れるつもりはないから、警戒は解いても良さそうだ。あぁ、そうだ。コーティ、マッキー、お疲れ。魔法も解いてよさそうだ」
「やれやれ。終わってしまえば冷却の魔法をかけるだけの仕事だったわね」
「でもタイミングがちょっと心配だったよね。あ……あれがガンジュウ?」
林道から姿を見せたのは、確かに亀。
甲羅は岩。
俺達を見てびっくりした様子だが、それは一瞬だけ。
氷が解けて濡れた地面に鼻面を当ててる。
「リースナーさんらを連れてきてくれ。対面させてあとはどうなるか、だしな。あ、ンーゴにも湯船から出るように言っとかなきゃ」
「俺があ、行ってくるよお」
「あ、うん。頼むわ、モーナー」
ガンジュウは地面に鼻をスンスンさせて少しずつ近寄ってくる。
相当暴れたくせに、妙にここで慎重になってる。
というか、俺らを見てビビってんのかもしれん。
「えっと……みなさん、大丈夫……でした? なんか地響きとかいろいろあったようでしたが、お怪我は……ひっ!」
建物の中にいて、詳細が分からないまま長時間の滞在。
そりゃ不安にはなってただろうな。
そこんとこのケアはできんで、申し訳ない。
だが俺も、できれば詳しい状況知りたかったってのは同じだ。
しかも、すぐそこに自分の背丈に近い高さの体を持つ魔物がいたら、そりゃ腰抜けるわな。
……やっぱ説明不足だったか?
いや、話に聞くのと実際に見るのとでは、入ってくる情報量が格段に違う。
けど……乱闘の様子を知らない人から見れば……犬が恐る恐る人に近づいて懐こうとしてるような、そんな動きにも似てるな、このガンジュウ。
のそのそ動くが、動きが速いっつー話じゃなかったか?
いや、確かに動きが速いのを感じ取れたところはあった。
けど実際に早く動いたこいつを見たことはねぇからなぁ……。
「あの……アラタさん……」
あ、いかん。ボーっとしてた。
って……。
「ど、どうしましょう……これ……」
「お母さん、この子、かわいいねっ」
ガンジュウの奴がリースナーの体に頭を擦り付けている。
完全に懐いてやがる。
さっきまでこいつ、何してたっけ……。
「キャッ!」
「あはは。お母さん、この子かわいいよねっ。あ、あはは。あ、ちょっと痛いよ? あはは」
二人の顔を、口からちょこっと出した舌で舐めてる。
微笑ましいが、舌の表面がざらついてんだろうな。
「な、なぁ、アラタ」
「ん? どうした?」
冒険者の一人が話しかけてきた。
なんか恐る恐るって感じだが、何か俺に見落としがあったか?
「いや……くたばってる魔物の方に行ってみていいか? 俺ら、ここじゃやることなさそうだし」
忘れてた。
レアな魔物が倒れた後は、珍しい素材とか持ってくんだったよな。
「……俺は品質の高低は見ることはできるが、素材そのものの価値までは分からん。全部持ち去ってくれるとありがたいんだが……」
「いいのかよ!」
「俺達全部持ってくぜ?」
「あとで、やっぱりほしいとか言うんじゃねぇぞ! アラタ!」
価値の分かる奴に持ってってもらう方が、素材だって喜ぶだろうよ。
あぁ、それと……。
「そういえば、リースナーさんが行った魔物商の所に聞き取り調査しにいるよな?」
「あ、あぁ……。店に言った連中みんな、今回の件に参加してるな」
確認しなきゃならんだろう。
多分こいつら、その店に聞きたい質問だけをしたはずだ。
そしたら向こうは、言いたい事だけを答えた。
実際のことと食い違う部分があるはずだ。
「魔物のうんこを持ち込まれた時の事、それと魔物が逃げ出した時のことを、正確に知りたい。向こうは隠す気はないんだろうが、正直にすべてを話す義理もなかったはずだ。その二点の終始、正確な話を聞きたい」
「あぁ。まさか二体来るなんて思いもしなかったからな」
「返事を持ってくるには遅くなるが、構わんだろ?」
「気長に待つ気はないしできれば早く持ってきてほしいが、大至急ってんじゃねぇ。道中気をつけてな」
とりあえず、現場はこれで事が収まった、か?
やれやれ。
一っ風呂浴びて帰るかな。
その一体は、ほぼ捕獲状態。
あとは仕留めて終わり。めでたしめでたし。
のはずだった。
もう一体、接近してくるとは思わなかった。
気配では、捕えた魔物と同じ種族。
まさかのレア種族がもう一体なんて、誰が想像できるかっての。
いや、文句は後だ。
現状確認!
今俺達は、フィールドの温泉の脱衣場の建物を背にしている。
左を向いたその方向には、奥に行けば行くほど魔物が多く潜むエリア。
サミーの家族も生息している地域だ。
右を向けばその先には俺達の店があり、サキワ村の中心地になる。
フィールドの半分くらいが氷で覆われている。
コーティとマッキーが氷の状態を魔法で保持。
サキワ村方面はかすかに下り坂になっている。
ガンジュウはフィールドの外のすぐの位置に、林道でひっくり返ったまま。
そのガンジュウは隣の村から、村をつなぐ道路ではなく、森林の中を突っ切って真っ直ぐこっちにやってきた。
隣村とこっちの村の槍衾の効果だ。
だから俺の店に向かって、多少は蛇行をしながらそこに至る。
「ところでえ、どこからあ、もう一体はあ、近づいてくるんだあ?」
「一体目と同じ所を通ってくるんでしょ?」
ヨウミ、残念。外れだ。
近づいてくるガンジュウは、魔物が多くいる山奥の方面から近づいてくる。
つまり俺達の身に何事もなければ、近づいてくるガンジュウは俺達の目の前を横切って、仰向けのガンジュウに接触するはずだ。
「えぇ?! だって……通り道なんてなさそうですよね? せいぜい獣道なんでしょう?」
「所々に開けたところもあるみたいなんだが、そこをあえて避けて通ってる感じだ。人の目になるべく触れないように、みたいな」
となれば、目の前のフィールドを横切ることはないかもな。
迂回して、林の中を通りながら仰向けガンジュウに接近、か。
「なるほどねぇ。だからレアな種族にされちゃってるのかもね」
ヨウミのそこら辺の考察は、いまはどうでもいいか。
それよりも、だ。
「とりあえず、全員ここに集合。コーティとマッキー、もう少し氷の保持、頑張ってくれ」
「しょーがないわね。やったげるわよ」
「うん、分かった」
「他は、リースナーさんらを守る態勢を取りつつ各々防御」
「はいよ」
「こっちからは何人か、あの母子の護衛に回るか、なあ、みんな」
「おう」
一時は慌てふためいたが、何とか持ち直したってところだな。
※※※※※ ※※※※※
接近してきたガンジュウは、俺の予想通りに林の中から林道に出たようだ。
ここからは状況は見えないが、地響き、振動、魔物の唸り声が伝わってきた。
気配の様子からは、おそらく仰向けガンジュウは一方的にやられっぱなし。
見にいってもいいが、ガンジュウが起き上がったりしたら間違いなく生贄になるだろうし、俺を襲う気がなくても、二体の魔物乱闘に巻き込まれちまう。
ここは我慢。
だが……魔物……魔獣にも血液ってのが流れてるんだろうな。
その匂いらしいものが漂ってきた。
「だ、大丈夫なの?」
「今のところは、な」
予想外の事が起きりゃ、流石に不安だ。
リースナー母子はよく踏ん張ってるな。
温泉の方から誰かがやってきた。
「アラタぁ、すまん。計画通りにいけんかったわ。で、ンーゴからの伝言やぁ。このまま湯船に浸かっててええんかて。なんかよう分からんがあ……どうなっとんの?」
最初の計画が上手くいかなかったのは、別に二人のせいじゃねぇよ。
計画通りにうまくいく、と思い込んでた俺に原因はあるが……こっちにやってくるガンジュウのせいってのが正解、だと思う。
「お、おぉ、ミアーノ。俺らからもよく分からん。だが氷漬けは有効な手段ってのは分かったから、ンーゴには、耐えられるならそのまま待機で」
「そりゃあ何の問題もねぇども。あんの母子、どっかに避難させた方がいくねぇか?」
リースナーを追いかけてるように見えたガンジュウは、今や虫の息。
追っかけてきたガンジュウに馬乗りにされて、おそらくはその腹を噛み切られてる。
同時に、力を落とした冒険者が多数続出。
素材が食い尽くされる、個体がでかけりゃ価値も大きい素材が細かく砕かれていく。
おそらくその現状を想像してんだろうな。
ご愁傷様。だが命あっての物種だろう?
だからここは安全……とは言い切れない。
が、ここから退避したとして、退避しながら防御態勢を取れるとは思えない。
襲い掛かってるガンジュウが、こっちにやってくる可能性だってあるんだ。
今は、とにかく目の前の同属の息の根を止めるつもりでいるようだがはてさて……。
※※※※※ ※※※※※
「……ケリがついた。こっちに向かってゆっくりやってくる」
血の匂いがひどい。
魔物、魔獣の中に体液があったら、人間みたいな成分なんだろうか。
「おい、アラタっ。こっちに襲いに来るのか?!」
「落ち着け。……甘えたい感情を持ってる。戦闘の必要はなさそうだ」
「ここは温泉だけに、かな?」
ヨウミがテンちゃん並みの下らねぇことを言うとは思わなかった。
つか、銭湯って、この世界にもあるのか。
いや、それどころじゃねぇ。
「刷り込み、なんだろうか。これまで得た情報をまとめると、多分あの母子の所に来ると思うぜ?」
「命の危険は」
「殺そう、死なそうとする目的はなさそうだ。だがその気はなくても死なせてしまうこともあり得る」
よな。
抱っこされただけで体が圧迫されることだって、ないとは言えねぇ。
そして、こっちが武器を使って攻撃を仕掛けても、俺らには敵意がないと思われることだってあるはずだ。
その力加減、向こうが分かってくれるんなら何の心配もねぇんだが。
「とりあえず、向こうには暴れるつもりはないから、警戒は解いても良さそうだ。あぁ、そうだ。コーティ、マッキー、お疲れ。魔法も解いてよさそうだ」
「やれやれ。終わってしまえば冷却の魔法をかけるだけの仕事だったわね」
「でもタイミングがちょっと心配だったよね。あ……あれがガンジュウ?」
林道から姿を見せたのは、確かに亀。
甲羅は岩。
俺達を見てびっくりした様子だが、それは一瞬だけ。
氷が解けて濡れた地面に鼻面を当ててる。
「リースナーさんらを連れてきてくれ。対面させてあとはどうなるか、だしな。あ、ンーゴにも湯船から出るように言っとかなきゃ」
「俺があ、行ってくるよお」
「あ、うん。頼むわ、モーナー」
ガンジュウは地面に鼻をスンスンさせて少しずつ近寄ってくる。
相当暴れたくせに、妙にここで慎重になってる。
というか、俺らを見てビビってんのかもしれん。
「えっと……みなさん、大丈夫……でした? なんか地響きとかいろいろあったようでしたが、お怪我は……ひっ!」
建物の中にいて、詳細が分からないまま長時間の滞在。
そりゃ不安にはなってただろうな。
そこんとこのケアはできんで、申し訳ない。
だが俺も、できれば詳しい状況知りたかったってのは同じだ。
しかも、すぐそこに自分の背丈に近い高さの体を持つ魔物がいたら、そりゃ腰抜けるわな。
……やっぱ説明不足だったか?
いや、話に聞くのと実際に見るのとでは、入ってくる情報量が格段に違う。
けど……乱闘の様子を知らない人から見れば……犬が恐る恐る人に近づいて懐こうとしてるような、そんな動きにも似てるな、このガンジュウ。
のそのそ動くが、動きが速いっつー話じゃなかったか?
いや、確かに動きが速いのを感じ取れたところはあった。
けど実際に早く動いたこいつを見たことはねぇからなぁ……。
「あの……アラタさん……」
あ、いかん。ボーっとしてた。
って……。
「ど、どうしましょう……これ……」
「お母さん、この子、かわいいねっ」
ガンジュウの奴がリースナーの体に頭を擦り付けている。
完全に懐いてやがる。
さっきまでこいつ、何してたっけ……。
「キャッ!」
「あはは。お母さん、この子かわいいよねっ。あ、あはは。あ、ちょっと痛いよ? あはは」
二人の顔を、口からちょこっと出した舌で舐めてる。
微笑ましいが、舌の表面がざらついてんだろうな。
「な、なぁ、アラタ」
「ん? どうした?」
冒険者の一人が話しかけてきた。
なんか恐る恐るって感じだが、何か俺に見落としがあったか?
「いや……くたばってる魔物の方に行ってみていいか? 俺ら、ここじゃやることなさそうだし」
忘れてた。
レアな魔物が倒れた後は、珍しい素材とか持ってくんだったよな。
「……俺は品質の高低は見ることはできるが、素材そのものの価値までは分からん。全部持ち去ってくれるとありがたいんだが……」
「いいのかよ!」
「俺達全部持ってくぜ?」
「あとで、やっぱりほしいとか言うんじゃねぇぞ! アラタ!」
価値の分かる奴に持ってってもらう方が、素材だって喜ぶだろうよ。
あぁ、それと……。
「そういえば、リースナーさんが行った魔物商の所に聞き取り調査しにいるよな?」
「あ、あぁ……。店に言った連中みんな、今回の件に参加してるな」
確認しなきゃならんだろう。
多分こいつら、その店に聞きたい質問だけをしたはずだ。
そしたら向こうは、言いたい事だけを答えた。
実際のことと食い違う部分があるはずだ。
「魔物のうんこを持ち込まれた時の事、それと魔物が逃げ出した時のことを、正確に知りたい。向こうは隠す気はないんだろうが、正直にすべてを話す義理もなかったはずだ。その二点の終始、正確な話を聞きたい」
「あぁ。まさか二体来るなんて思いもしなかったからな」
「返事を持ってくるには遅くなるが、構わんだろ?」
「気長に待つ気はないしできれば早く持ってきてほしいが、大至急ってんじゃねぇ。道中気をつけてな」
とりあえず、現場はこれで事が収まった、か?
やれやれ。
一っ風呂浴びて帰るかな。
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