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米からの騒動編
仕事なら、米の選別以外はしたくねぇんだが その3
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その夜。
一応報告はしとかんとな。
ほう、れん、そう。
報告、連絡、相談。
相談しようにも、事情をよく知らない連中相手ならあんまり意味がない。
連絡したところで、それに関して連携が必要かどうかも不明。
報告位なら、何かが起きるトラブルがあったらすぐに対応できるだろうから、それはしといたほうがいいかってな。
ところが。
「アラタのお米を採る場所を荒らすってのは許せないっ」
「他のところも刈り取られる恐れがある、ってことよね?」
「おにぎりの店の高評価を聞いて、また何か真似をしようとする人達がいるってことでしょうか?」
怒りと不安のテンちゃん、マッキー、クリマー。
「今のところお、そういう現象があ、あるってことだけだよなあ?」
「ソレダケジャ、ナントモワカンナイネ」
「何かの対策を立てようにも立てようがないわよね」
「で、どうすんだ? アラタのあんちゃん……ってあんちゃんにも分からねーかい」
「オガワトカニ、ヘンカハ?」
冷静なモーナー、ライム、ミアーノ、ンーゴ。
だがまさか、コーティもそのグループに入るとは思わなかった。
「……なんか変なこと考えてんじゃないでしょうね」
「……いいや、別に」
鋭いんだよ、コーティ。
「モグモグ……えもぁー、おおあえっえのぶほっ」
「汚ぇなおいっ! 食いながら喋ってんじゃねぇよ! サミーを見習え!」
まず食うことが先のヨウミ。そして鼻先を料理にめり込ませて一心不乱にモムモムと食べているサミー。
「んぐっ……。ぷはっ。で、アラタはどう見てるの?」
「んー……」
どの視点から見てった方がいいか。
「アラタのお米を採ってく奴だよ? 懲らしめるべきじゃん!」
「何いきなり興奮してんだ。つか、藁クズ飛ばすんじゃねぇぞ?」
「藁クズじゃないもん! ご馳走だもん!」
まぁ、お前にはそうなんだろうけどな。
それは置いといてだ。
「……まずテンチャンよ、それは間違った解釈だ」
「間違った? どこが?」
「俺の米は、ススキモドキから採集した米が俺の米であって、生えてるススキモドキは俺のもんじゃねぇ」
前にも話したと思ったが、さらっと流した程度だったはずだ。
忘れてるのも無理はねぇな。
「店は崖に穴掘って、そこに居座ってるかたちだ。土地の持ち主が来て、出てけって言われたら出てくしかねぇ」
「え?」
「そうなの?」
これも言ったはずだがなぁ。
「けど放置されてる状態だ。魔物の生息範囲に近いからって理由だったはずだ。」
「キケンナバショダカラ、チカヅキタクナインダネ」
「だと思う。ススキモドキから米を採るってことも、はっきり言えば不法侵入かも分からん。が、自分の命と引き換えに自分の土地を守るつもりはないってことなんだろうな」
誰にも知られることなく米を盗まれた、なんて言われて叩かれても不思議じゃない。
けれども俺は今まで、米の採集作業への文句は誰からも言われちゃいない。
ということは、ススキモドキを刈り取った奴だって、誰からも文句を言われる筋合いはないってこった。
もちろん俺達からもな。
「ひょっとして、土地の持ち主がやったってことは……」
「何のために?」
驚いたことに、テンちゃんからの指摘は俺が考えもしない事だった。
冷静になり始めたか。
「うーん……何でだろ? 何だろうね、アラタ」
マッキーからの質問の答えをこっちに丸投げすんな!
「米が欲しかったからじゃない? 荒れた土地を整地しよう、ってことはないよね」
「セイチスルナラ、ネコソギトラナキャイミネーゾ」
流石地面の事ならンーゴが第一人者、か?
「あ、あの、アラタさん、いいですか?」
「一々許可もらうような事言わなくていいんだがな? 何だよ、クリマー」
「土地の持ち主だったら、土地の事ならその人の言うことが優先されますよね?」
「そりゃまぁ……そうだよな」
出てけって言われたら出て行かなきゃならん。
逆に、無関係な者から出てけって言われたら、何でこいつの言うことを聞かなきゃならん? と、逆にこっちが疑問に思う。
「あの土地綺麗にしたいから手伝ってくれ、あの土地からいい米からあるから手伝ってくれ、なんてことを言われて、お手当ても適量をもらえるなら手伝いますよね?」
「まあ、そうだな」
「……なら、なんでそんな狭い範囲で終わったんでしょう?」
「狭い?」
決して狭くはない。
俺一人で米を選別するススキモドキの範囲としては、一日分の広さだぞ?
「ええ、狭いです。ただ刈り取るだけの作業なら誰だってできるはずです。人を雇うことができなくても、家族全員でとか、お金がないなら贈答品を手当て代わりにするとかすれば……」
そうか。
なぜ一人で作業したか、ってことか。
俺の作業は、俺にしかできない事だからな。
これも気付かなかった。
三人寄れば文殊の知恵、とはよく言ったもんだ。
「んだなぁ。整地じゃねぇ。米目当てっちゅーことやが、ススキモドキ、根こそぎ持ってきゃええはずだよなぁ。整地にもなるんだからよお。土地の持ち主んなら、誰からも文句言われねぇ。整地する気ゃあねぇってこった。つまり……」
「アキラカニ、コメネライ、ダヨネ? アラタ」
「店の評判聞いて、ならあたしもー、なんて、楽して稼げるとでも思ったのかしらね?」
何とも言えん。
はっきり言えることは、人の仕業、米狙い、単独の行動。
これくらいか……。
「だが、槍衾製作と設置の手伝いの依頼が村からもあった。対象は魔物だが、今のところその気配はない。が、楽観はしないように。訓練中にそんな魔物に襲われたらシャレにならん」
「はーい」
「分かりました」
「オウ」
とりあえず、今夜のミーティングはこんなとこだな。
一応報告はしとかんとな。
ほう、れん、そう。
報告、連絡、相談。
相談しようにも、事情をよく知らない連中相手ならあんまり意味がない。
連絡したところで、それに関して連携が必要かどうかも不明。
報告位なら、何かが起きるトラブルがあったらすぐに対応できるだろうから、それはしといたほうがいいかってな。
ところが。
「アラタのお米を採る場所を荒らすってのは許せないっ」
「他のところも刈り取られる恐れがある、ってことよね?」
「おにぎりの店の高評価を聞いて、また何か真似をしようとする人達がいるってことでしょうか?」
怒りと不安のテンちゃん、マッキー、クリマー。
「今のところお、そういう現象があ、あるってことだけだよなあ?」
「ソレダケジャ、ナントモワカンナイネ」
「何かの対策を立てようにも立てようがないわよね」
「で、どうすんだ? アラタのあんちゃん……ってあんちゃんにも分からねーかい」
「オガワトカニ、ヘンカハ?」
冷静なモーナー、ライム、ミアーノ、ンーゴ。
だがまさか、コーティもそのグループに入るとは思わなかった。
「……なんか変なこと考えてんじゃないでしょうね」
「……いいや、別に」
鋭いんだよ、コーティ。
「モグモグ……えもぁー、おおあえっえのぶほっ」
「汚ぇなおいっ! 食いながら喋ってんじゃねぇよ! サミーを見習え!」
まず食うことが先のヨウミ。そして鼻先を料理にめり込ませて一心不乱にモムモムと食べているサミー。
「んぐっ……。ぷはっ。で、アラタはどう見てるの?」
「んー……」
どの視点から見てった方がいいか。
「アラタのお米を採ってく奴だよ? 懲らしめるべきじゃん!」
「何いきなり興奮してんだ。つか、藁クズ飛ばすんじゃねぇぞ?」
「藁クズじゃないもん! ご馳走だもん!」
まぁ、お前にはそうなんだろうけどな。
それは置いといてだ。
「……まずテンチャンよ、それは間違った解釈だ」
「間違った? どこが?」
「俺の米は、ススキモドキから採集した米が俺の米であって、生えてるススキモドキは俺のもんじゃねぇ」
前にも話したと思ったが、さらっと流した程度だったはずだ。
忘れてるのも無理はねぇな。
「店は崖に穴掘って、そこに居座ってるかたちだ。土地の持ち主が来て、出てけって言われたら出てくしかねぇ」
「え?」
「そうなの?」
これも言ったはずだがなぁ。
「けど放置されてる状態だ。魔物の生息範囲に近いからって理由だったはずだ。」
「キケンナバショダカラ、チカヅキタクナインダネ」
「だと思う。ススキモドキから米を採るってことも、はっきり言えば不法侵入かも分からん。が、自分の命と引き換えに自分の土地を守るつもりはないってことなんだろうな」
誰にも知られることなく米を盗まれた、なんて言われて叩かれても不思議じゃない。
けれども俺は今まで、米の採集作業への文句は誰からも言われちゃいない。
ということは、ススキモドキを刈り取った奴だって、誰からも文句を言われる筋合いはないってこった。
もちろん俺達からもな。
「ひょっとして、土地の持ち主がやったってことは……」
「何のために?」
驚いたことに、テンちゃんからの指摘は俺が考えもしない事だった。
冷静になり始めたか。
「うーん……何でだろ? 何だろうね、アラタ」
マッキーからの質問の答えをこっちに丸投げすんな!
「米が欲しかったからじゃない? 荒れた土地を整地しよう、ってことはないよね」
「セイチスルナラ、ネコソギトラナキャイミネーゾ」
流石地面の事ならンーゴが第一人者、か?
「あ、あの、アラタさん、いいですか?」
「一々許可もらうような事言わなくていいんだがな? 何だよ、クリマー」
「土地の持ち主だったら、土地の事ならその人の言うことが優先されますよね?」
「そりゃまぁ……そうだよな」
出てけって言われたら出て行かなきゃならん。
逆に、無関係な者から出てけって言われたら、何でこいつの言うことを聞かなきゃならん? と、逆にこっちが疑問に思う。
「あの土地綺麗にしたいから手伝ってくれ、あの土地からいい米からあるから手伝ってくれ、なんてことを言われて、お手当ても適量をもらえるなら手伝いますよね?」
「まあ、そうだな」
「……なら、なんでそんな狭い範囲で終わったんでしょう?」
「狭い?」
決して狭くはない。
俺一人で米を選別するススキモドキの範囲としては、一日分の広さだぞ?
「ええ、狭いです。ただ刈り取るだけの作業なら誰だってできるはずです。人を雇うことができなくても、家族全員でとか、お金がないなら贈答品を手当て代わりにするとかすれば……」
そうか。
なぜ一人で作業したか、ってことか。
俺の作業は、俺にしかできない事だからな。
これも気付かなかった。
三人寄れば文殊の知恵、とはよく言ったもんだ。
「んだなぁ。整地じゃねぇ。米目当てっちゅーことやが、ススキモドキ、根こそぎ持ってきゃええはずだよなぁ。整地にもなるんだからよお。土地の持ち主んなら、誰からも文句言われねぇ。整地する気ゃあねぇってこった。つまり……」
「アキラカニ、コメネライ、ダヨネ? アラタ」
「店の評判聞いて、ならあたしもー、なんて、楽して稼げるとでも思ったのかしらね?」
何とも言えん。
はっきり言えることは、人の仕業、米狙い、単独の行動。
これくらいか……。
「だが、槍衾製作と設置の手伝いの依頼が村からもあった。対象は魔物だが、今のところその気配はない。が、楽観はしないように。訓練中にそんな魔物に襲われたらシャレにならん」
「はーい」
「分かりました」
「オウ」
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