上 下
260 / 493
店の日常編

仲間達の新たな活動 2

しおりを挟む
 その日の晩飯時。
 晩飯に加わった冒険者達は、俺に相談を持ち掛けた奴とその仲間、全員で五人。
 そいつらが連れて来た新人冒険者達は四人の合計九人。

「え、えっと、先程はすいませんでした……。は、初めまして……」

 と自己紹介が始まる前の惨劇と言ったら……。
 そりゃこいつらの経験が浅いってのは分かる。
 けどな。
 フィールドでの晩飯に招かれて来て、ンーゴの姿を見た途端取り乱してな。
 晩飯投げるわ踏むわでもうね。
 コーティの電撃でそいつらを拘束。
 コーティの魔法は電撃に特化してて、最大出力は相当なモノらしいが、そればかりじゃなく、微調節もいとも簡単にできるとか何とか。
 魔法やら魔物討伐やらに疎い俺には、その価値はよく理解できんのだが、誰もが一目置くらしい。
 で、引率冒険者達からの「すまん」の意の言葉を聞きながら料理が再び運び込んで、ようやく落ち着いて自己紹介というわけだ。

「ペイド、と言います。剣技中心の戦士です。刃物全般を扱える……のを目指してます」

 ソードじゃねぇのか。
 まぁ……初心者がいきなり何でもござれの技術者なわけねぇよな。晩飯の時間が大幅に遅れることになっちまった。

「イーヤです。私も……剣士ってところでしょうか」

 女の子が剣士。
 肌を刃物で傷をつけたがる女性はいないと思うんだが……。
 まぁ好き好きだからな。

「ランブです。補助魔術担当してます」

 こいつは男。
 まぁ、男の子、かな。
 にしても……担当、ね。
 得意でもすごいでもないのな。
 物は言いよう。

「ハッツです。私は攻撃魔法を担当してます」

 不得意じゃない、というレベルなのか何なのか。
 まぁ俺がどうこう言う筋合いじゃねぇな。

「そ、それで……その……」
「ナァニカナ? ペイドクン」
「うわあっ!」

 ライムがペイドに気配を消しつつすり寄って、不意に話しかけた。
 ライムの奴、絶対からかってるよな。

「ほらほら、また料理に手ぇ出しちゃいそうだよ?」
「うわっ! あ、は……はい、すいません……」

 今度は反対側からコーティが。
 全くこいつらは……。
 面白がってんなぁ。
 他の三人も、サミーですら怖がってるし、宥めようと近づいたモーナーにもビビってる。
 にしてもなぁ……。
 驚かせようしてる奴らは……悪乗りしすぎだぞ?

「そういえば、エージたちもそうだったが、四人組が多いな」
「ん? あぁ、そりゃそうだろ。養成所出身の奴らは、成り立ては誰もが能力は似たり寄ったりだ。リーダーシップだって、ほんの少し他の奴より高けりゃできる。けど大人数を仕切るのはまず無理だ。せいぜい四人がいいところ」

 引率の冒険者の一人からこんな回答。
 なるほどなぁ。
 そういう事情もあるのか。
 冒険者稼業とは縁遠い俺には新鮮な情報だ。

「ねぇ、アラタ」
「ん? どした? ヨウミ」
「こっちの自己紹介もしないと、この子達怯えてばかりで話が進まないと思うんだけど。それにみんなの特徴も伝えないと、と思うんだけど」
「あー……、それもそうだな」

 言われてみれば、まったくだ。

「能力の紹介までするのか? その事まで知ったら練習の時は用心できるし、実戦だと能力不明の相手ばかりだろうから、ここでの練習が実戦で役に立つとも思えんのだが」

 なんて言う先輩冒険者の言うことも一理あるが。

「内緒にしたって、何度も……一回手を合わせただけでもうバレバレだろ。それに知ったとしてもすぐに対応できるたぁ思えん。実際こいつにおにぎりの作り方教えても、一発ではまともなおにぎりを作れなかったしな。なぁ? ヨウミ」
「そこであたしを引き合いに出さないでよ!」
「まぁ……ヨウミちゃんのことはともかく、確かにそういうこともある、かな」

 けど、紹介する相手にこんなにビビりまくられてたら自己紹介もなにもねぇんじゃねぇかなぁ……。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

お気楽、極楽⁉︎ ポンコツ女神に巻き込まれた俺は、お詫びスキルで異世界を食べ歩く!

にのまえ
ファンタジー
 目が覚めたら、女性が土下座をしていた。  その女性に話を聞くと、自分を女神だと言った。そしてこの女神のミス(くしゃみ)で、俺、鈴村凛太郎(27)は勇者召喚に巻き込まれたらしい。  俺は女神のミスで巻き込まれで、勇者ではないとして勇者特有のスキルを持たないし、元の世界には帰れないようだ。   「……すみません」  巻き込みのお詫びとして、女神は異世界で生きていくためのスキルと、自分で選んだスキルをくれた。  これは趣味の食べ歩きを、異世界でするしかない、  俺、凛太郎の異世界での生活が始まった。  

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...