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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その18
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「それで、さっきはね……」
があああ……って……、そうだ。
ついさっきもそうだっけ……。
「いやいやいや、もうあれは……」
「ちょっとえげつなかったわよねぇ」
「同じ男として、こう……なんというか」
聞きたくないんだがああぁぁ!
※※※※※ ※※※※※
「口を開いて二言目には『無関係』だのなんだのと、こっちの事情を決め付けんじゃねぇ!」
そう叫びながら、魔球を寄こせと迫ってきた一人の股間を蹴り上げたんだと。
しかも、やっぱり何のためらいもなく、だそうだ。
さらに続けて
「こいつをくれたあんの馬鹿王子の気持ち考えたら、くれるどころか、易々と他人に触らせられるもんじゃねぇ!」
と、ずっと仰向けに押さえられた、顔面血だらけの男の股間も蹴っ飛ばしたらしい。
「俺に謝罪する誠意のこもったもんだ! その気持ちこそ、テメェらにゃ関係ねぇもんだろうが! 関係ねぇもんが、深い関係がある奴に向かって『関係ねぇ』たぁ、どの口から出せんだテメェら!」
棒立ちの、そいつらの一人にも同じことをしたらしい。
「口先だけの謝罪をする奴なんざ、この世の中数えきれんほどいる! それを……っ! 俺からは何も言わねぇのに、自ら進んで、自分の気持ちを目に見える形に現わすような奴の気持ちを……踏みにじってんじゃねぇ!」
※※※※※ ※※※※※
「そこで、ようやく後ろから抑えてくれた人がいて」
その、後ろから抑えてた奴って、あの大男の冒険者か。
「それでも喚いてたもんね、アラタ」
まだなんか叫んでたのかよ……。
もう勘弁してくれよ……。
凹むわ。
※※※※※ ※※※※※
「俺の店を畳めってだけなら、俺が、俺だけが堪えりゃ済む問題だ! 店を畳みゃ、みんな穏やかに暮らしてけるんだら喜んで畳んでやらあ! けどな! 仲間を傷つけたり、人の思いを踏みにじるようなふざけたマネする奴ぁ! そこを何度蹴り飛ばしたって足りゃしねぇんだよ! 人の痛みは、一秒だって耐えらねぇんだよ! その人が苦しんだりする姿見て喜んでんだら、んなくだんねぇ根性、踏み殺してやる! 地獄の底まで追いかけて、踏み砕いてくれるわ!」
そこで、俺を抑え込んでた冒険者が話しかけたんだそうだが……。
「それにテメェら! どういうつもりでこいつらを足止めしてんだ! 野良の魔物がそこにいて、村を襲うかもしれねぇってぇから退治に協力しに来てくれてんだぞ! てめぇの命を省みねぇで駆けつけてくれた連中だ! 村を守り、村人を守ってくれるこいつらの邪魔して、テメェと無関係だからこっちに来んなってんだら、テメェらこそいなくなれ! 関係ねぇって叫んでんのはテメェらだけなんだよ!」
「アラタ、もう分かったから、少し落ち着け」
「これっきしのことで俺の気持ちが分かってたまるか! あいつだって、自分の魔力を期間かけて込めて、何個も俺にくれて、それでようやくあいつの気持ちを理解できたんだぜ?! そうでもしてくれねぇと理解できなかった謝罪の言葉だ! 俺の怒り、この気持ちが、怒鳴り声と蹴りの一発二発程度で理解できると思ってんじゃねぇ!」
「アラタ、お前、もう煩いから黙ろうな?」
「むぐっ! ぐうぅぅ!」
そこで口を塞がれて、体を持ち上げられたんだと。
※※※※※ ※※※※※
「まぁ言いたいことは、あたし達には心強かったしかっこいいと思ったけど……」
「問答無用で股間に一撃って、あのためらいのなさは、戦場では見習いたい心構えとも思うけどな」
「でも……やっぱり正直、ちょっと怖いわ。いきなり豹変するからな」
「人の気持ちを踏みにじるってのは、確かに人として良くないと思うし、人の都合を考えずに暴れる魔物と同系と思えなくはないけど……」
他の待機組は、俺達を遠巻きに見ている。
そいつらのほとんどは、俺のことは知ってるようだが俺はそれほど知らねぇからな。
危険人物視されてる気がする。
「おーい、アラタは落ち着いたか―?」
店の方から近寄ってくる冒険者達の一人から声をかけられた。
ということは、あのならず者達に付き添ってたグループだな?
「えぇ、何とか」
「あの事、全然覚えてなかったみたいです」
「だろうな。でなきゃいきなりあんな風に変わるわきゃねぇだろうしなぁ」
「まさに人が変わったってやつだったよなあ」
うぐ……。
何も言い返しようがない。
「まぁこの人の本音を知ることができましたし、何と言うか……真っ直ぐな方ってのも分かりはしましたけど……」
「怒らせると怖いですよね」
「おい、お前らなぁ……」
本人の前でそういうこと言うか?
そりゃ俺も悪いとこあったかもしれんけど、抑えられなかったんだしよぉ……。
「ま、それは置いといて、だ」
「こっちでも、ちょいと面白い話聞けたぜ?」
「面白い話?」
「またアラタさんを怒らせるようなことじゃないでしょうね」
人伝で聞いた話で怒るようなことはねぇよ。
……多分な。
「……誰か、アラタの耳塞げ」
「俺、そんなに信用失ったか?!」
があああ……って……、そうだ。
ついさっきもそうだっけ……。
「いやいやいや、もうあれは……」
「ちょっとえげつなかったわよねぇ」
「同じ男として、こう……なんというか」
聞きたくないんだがああぁぁ!
※※※※※ ※※※※※
「口を開いて二言目には『無関係』だのなんだのと、こっちの事情を決め付けんじゃねぇ!」
そう叫びながら、魔球を寄こせと迫ってきた一人の股間を蹴り上げたんだと。
しかも、やっぱり何のためらいもなく、だそうだ。
さらに続けて
「こいつをくれたあんの馬鹿王子の気持ち考えたら、くれるどころか、易々と他人に触らせられるもんじゃねぇ!」
と、ずっと仰向けに押さえられた、顔面血だらけの男の股間も蹴っ飛ばしたらしい。
「俺に謝罪する誠意のこもったもんだ! その気持ちこそ、テメェらにゃ関係ねぇもんだろうが! 関係ねぇもんが、深い関係がある奴に向かって『関係ねぇ』たぁ、どの口から出せんだテメェら!」
棒立ちの、そいつらの一人にも同じことをしたらしい。
「口先だけの謝罪をする奴なんざ、この世の中数えきれんほどいる! それを……っ! 俺からは何も言わねぇのに、自ら進んで、自分の気持ちを目に見える形に現わすような奴の気持ちを……踏みにじってんじゃねぇ!」
※※※※※ ※※※※※
「そこで、ようやく後ろから抑えてくれた人がいて」
その、後ろから抑えてた奴って、あの大男の冒険者か。
「それでも喚いてたもんね、アラタ」
まだなんか叫んでたのかよ……。
もう勘弁してくれよ……。
凹むわ。
※※※※※ ※※※※※
「俺の店を畳めってだけなら、俺が、俺だけが堪えりゃ済む問題だ! 店を畳みゃ、みんな穏やかに暮らしてけるんだら喜んで畳んでやらあ! けどな! 仲間を傷つけたり、人の思いを踏みにじるようなふざけたマネする奴ぁ! そこを何度蹴り飛ばしたって足りゃしねぇんだよ! 人の痛みは、一秒だって耐えらねぇんだよ! その人が苦しんだりする姿見て喜んでんだら、んなくだんねぇ根性、踏み殺してやる! 地獄の底まで追いかけて、踏み砕いてくれるわ!」
そこで、俺を抑え込んでた冒険者が話しかけたんだそうだが……。
「それにテメェら! どういうつもりでこいつらを足止めしてんだ! 野良の魔物がそこにいて、村を襲うかもしれねぇってぇから退治に協力しに来てくれてんだぞ! てめぇの命を省みねぇで駆けつけてくれた連中だ! 村を守り、村人を守ってくれるこいつらの邪魔して、テメェと無関係だからこっちに来んなってんだら、テメェらこそいなくなれ! 関係ねぇって叫んでんのはテメェらだけなんだよ!」
「アラタ、もう分かったから、少し落ち着け」
「これっきしのことで俺の気持ちが分かってたまるか! あいつだって、自分の魔力を期間かけて込めて、何個も俺にくれて、それでようやくあいつの気持ちを理解できたんだぜ?! そうでもしてくれねぇと理解できなかった謝罪の言葉だ! 俺の怒り、この気持ちが、怒鳴り声と蹴りの一発二発程度で理解できると思ってんじゃねぇ!」
「アラタ、お前、もう煩いから黙ろうな?」
「むぐっ! ぐうぅぅ!」
そこで口を塞がれて、体を持ち上げられたんだと。
※※※※※ ※※※※※
「まぁ言いたいことは、あたし達には心強かったしかっこいいと思ったけど……」
「問答無用で股間に一撃って、あのためらいのなさは、戦場では見習いたい心構えとも思うけどな」
「でも……やっぱり正直、ちょっと怖いわ。いきなり豹変するからな」
「人の気持ちを踏みにじるってのは、確かに人として良くないと思うし、人の都合を考えずに暴れる魔物と同系と思えなくはないけど……」
他の待機組は、俺達を遠巻きに見ている。
そいつらのほとんどは、俺のことは知ってるようだが俺はそれほど知らねぇからな。
危険人物視されてる気がする。
「おーい、アラタは落ち着いたか―?」
店の方から近寄ってくる冒険者達の一人から声をかけられた。
ということは、あのならず者達に付き添ってたグループだな?
「えぇ、何とか」
「あの事、全然覚えてなかったみたいです」
「だろうな。でなきゃいきなりあんな風に変わるわきゃねぇだろうしなぁ」
「まさに人が変わったってやつだったよなあ」
うぐ……。
何も言い返しようがない。
「まぁこの人の本音を知ることができましたし、何と言うか……真っ直ぐな方ってのも分かりはしましたけど……」
「怒らせると怖いですよね」
「おい、お前らなぁ……」
本人の前でそういうこと言うか?
そりゃ俺も悪いとこあったかもしれんけど、抑えられなかったんだしよぉ……。
「ま、それは置いといて、だ」
「こっちでも、ちょいと面白い話聞けたぜ?」
「面白い話?」
「またアラタさんを怒らせるようなことじゃないでしょうね」
人伝で聞いた話で怒るようなことはねぇよ。
……多分な。
「……誰か、アラタの耳塞げ」
「俺、そんなに信用失ったか?!」
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