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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その16
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クリマーが、この先って言ってたよな。
つまりこっちの方向だ!
けど冒険者どもがうじゃうじゃいやがって!
どいつもこいつも……っ!
「邪魔だあ! どきゃあがれえぇ!」
みんな俺を見て驚いている。
だが俺にしちゃ、進路妨害してるようにしか見えん!
駆け足で人混みをかき分けてようやく見えたその先には、冒険者達とライム、サミー、コーティがいて、ならず者の一人は何人かの冒険者達に取り押さえられている。
残りのならず者達は何やら文句を言ってるようだ。
が……知ったことかあっ!
「てめえかあああ!」
「ア、アラタ?」
「な、何であんたが来ちゃってるのよ!」
コーティがなんか叫んでる。
が、よく分からん。
そんなことよりもだ。
「そいつかあ! 俺の仲間に何しやがんだテメェはああああっ!」
「なんだてめぇはっ! 関係ねぇだろうが! つか、て、おめえら、いい加減放しやがれ!」
地面の上で仰向けに押さえつけられている。
おあつらえ向きじゃねぇかっ!
一発や二発で終わりと思うなや!
「くそがあぁぁっっっ!」
※※※※※ ※※※※※
急に体が重くなった。
というか、動かなくなった。
目の前で倒れているならず者に殴りかかろうとしても動けない。
「その辺で止めとけ、アラタ」
「アラタぁ。いくら何でもやりすぎ」
何がやりすぎだ?
そいつ、ただ寝転んでるだけじゃねぇか。
つか、一体俺の体はどうなってんだ?
何で動かねぇんだ?
「アラタ、いいから落ち着け。な?」
後ろの……頭の上から声が聞こえる。
「まったく……。アラタって、頭に血が上ると周りが見えなくなるのね。初めて知った」
あ?
俺のことか?
一体誰が何を言ってんだ?
俺の事を知ったふうに言ってくれる奴がいるもんだ。
「こら、アラタ! 落ち着きなさいってばっ!」
「うぉあっ!」
いきなり目の前にコーティが現れた。
腰が抜けそうになった。
いや、抜けた。
腰に力が入らない。
けど立っている。
「ありゃ。このまま支えとかねぇと立てねぇか?」
また後ろの上から声がする。
首は動く。
俺より身長が高い奴が……俺、後ろから抑えられてたのか。
「……お前、俺に何してんだ?」
「何って……アラタをあのままにしたら、そいつを殴り殺しちまいそうだったからよ」
後ろの冒険者に声をかけてみた。
が、何を言ってるのか分からない。
って、言われてみりゃ、両手の拳に鈍痛が。
げっ。
「何で俺の手が血まみれになってんだ?!」
「我を失うって、こういうことなのね……。まぁテンちゃんにあんな怪我させた奴だから自業自得だけど」
目の前に倒れていた男の顔をよく見ると、血まみれで顔が腫れ放題。
どうやら俺は、周りの制止を振り切ってそいつの上に馬乗りになって、とにかく力任せに拳をぶん回してたらしい。
ならず者の仲間が俺に蹴りを入れようとしたが冒険者達に止められて、その後で俺が後ろから羽交い絞めにされて抑えられた、とのこと。
「もう頭に血が上るこたぁねえから放してくんねぇか?」
「大丈夫か? 同じことしたら、すぐこの場から連れてくからな?」
「アラターっ。どこー?」
遠くからテンちゃんの声が聞こえてきた。
「アラタあー、どこだあ」
「そっちにいるのー?」
続いてモーナーとマッキーの声が聞こえてきた。
クリマーもその後についてきているっぽい。
「あれ? テンちゃん?」
「テンちゃん、大丈夫なの?」
テンちゃんの姿を見て驚いた声があちこちから聞こえてきた。
ならず者達も目を丸くする。
「治癒の魔球のおかげだ。こいつがなきゃ短時間の完治は無理だったろうな」
「治癒の魔球だと?!」
「何でテメェがそんなもんを持ってんだ!」
あ?
何でならず者どもが食いついてくるんだ。
「おい、それを寄こせ。それでこいつが殴られた件はチャラにしてやる」
「うぉ、ぉいつお言うおーいだっ。おーいぃよおえ」
他の四人が俺に急に近寄って、俺の財布……バッグか。強奪しようとしてきた。
「何しやがんだ、お前ら!」
「うるせぇ! そいつはお前に関係ねぇもんだろうが! こっちに寄こせ!」
関係ねぇ?
何言ってやがる。
こいつは……。
このバッグに入っている球はなあ……っ!
「ちょっと! アラタ!」
俺の意識、記憶はまた飛んだ。
つまりこっちの方向だ!
けど冒険者どもがうじゃうじゃいやがって!
どいつもこいつも……っ!
「邪魔だあ! どきゃあがれえぇ!」
みんな俺を見て驚いている。
だが俺にしちゃ、進路妨害してるようにしか見えん!
駆け足で人混みをかき分けてようやく見えたその先には、冒険者達とライム、サミー、コーティがいて、ならず者の一人は何人かの冒険者達に取り押さえられている。
残りのならず者達は何やら文句を言ってるようだ。
が……知ったことかあっ!
「てめえかあああ!」
「ア、アラタ?」
「な、何であんたが来ちゃってるのよ!」
コーティがなんか叫んでる。
が、よく分からん。
そんなことよりもだ。
「そいつかあ! 俺の仲間に何しやがんだテメェはああああっ!」
「なんだてめぇはっ! 関係ねぇだろうが! つか、て、おめえら、いい加減放しやがれ!」
地面の上で仰向けに押さえつけられている。
おあつらえ向きじゃねぇかっ!
一発や二発で終わりと思うなや!
「くそがあぁぁっっっ!」
※※※※※ ※※※※※
急に体が重くなった。
というか、動かなくなった。
目の前で倒れているならず者に殴りかかろうとしても動けない。
「その辺で止めとけ、アラタ」
「アラタぁ。いくら何でもやりすぎ」
何がやりすぎだ?
そいつ、ただ寝転んでるだけじゃねぇか。
つか、一体俺の体はどうなってんだ?
何で動かねぇんだ?
「アラタ、いいから落ち着け。な?」
後ろの……頭の上から声が聞こえる。
「まったく……。アラタって、頭に血が上ると周りが見えなくなるのね。初めて知った」
あ?
俺のことか?
一体誰が何を言ってんだ?
俺の事を知ったふうに言ってくれる奴がいるもんだ。
「こら、アラタ! 落ち着きなさいってばっ!」
「うぉあっ!」
いきなり目の前にコーティが現れた。
腰が抜けそうになった。
いや、抜けた。
腰に力が入らない。
けど立っている。
「ありゃ。このまま支えとかねぇと立てねぇか?」
また後ろの上から声がする。
首は動く。
俺より身長が高い奴が……俺、後ろから抑えられてたのか。
「……お前、俺に何してんだ?」
「何って……アラタをあのままにしたら、そいつを殴り殺しちまいそうだったからよ」
後ろの冒険者に声をかけてみた。
が、何を言ってるのか分からない。
って、言われてみりゃ、両手の拳に鈍痛が。
げっ。
「何で俺の手が血まみれになってんだ?!」
「我を失うって、こういうことなのね……。まぁテンちゃんにあんな怪我させた奴だから自業自得だけど」
目の前に倒れていた男の顔をよく見ると、血まみれで顔が腫れ放題。
どうやら俺は、周りの制止を振り切ってそいつの上に馬乗りになって、とにかく力任せに拳をぶん回してたらしい。
ならず者の仲間が俺に蹴りを入れようとしたが冒険者達に止められて、その後で俺が後ろから羽交い絞めにされて抑えられた、とのこと。
「もう頭に血が上るこたぁねえから放してくんねぇか?」
「大丈夫か? 同じことしたら、すぐこの場から連れてくからな?」
「アラターっ。どこー?」
遠くからテンちゃんの声が聞こえてきた。
「アラタあー、どこだあ」
「そっちにいるのー?」
続いてモーナーとマッキーの声が聞こえてきた。
クリマーもその後についてきているっぽい。
「あれ? テンちゃん?」
「テンちゃん、大丈夫なの?」
テンちゃんの姿を見て驚いた声があちこちから聞こえてきた。
ならず者達も目を丸くする。
「治癒の魔球のおかげだ。こいつがなきゃ短時間の完治は無理だったろうな」
「治癒の魔球だと?!」
「何でテメェがそんなもんを持ってんだ!」
あ?
何でならず者どもが食いついてくるんだ。
「おい、それを寄こせ。それでこいつが殴られた件はチャラにしてやる」
「うぉ、ぉいつお言うおーいだっ。おーいぃよおえ」
他の四人が俺に急に近寄って、俺の財布……バッグか。強奪しようとしてきた。
「何しやがんだ、お前ら!」
「うるせぇ! そいつはお前に関係ねぇもんだろうが! こっちに寄こせ!」
関係ねぇ?
何言ってやがる。
こいつは……。
このバッグに入っている球はなあ……っ!
「ちょっと! アラタ!」
俺の意識、記憶はまた飛んだ。
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