250 / 493
店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その13
しおりを挟む
もう一軒のおにぎりの店の報告を聞いた仲間達は憤慨してたが、お前らは今はそれどころじゃねぇだろうに。
作戦立案開始に乗り遅れんじゃねぇぞ?
こっちも、そのためのおにぎりの炊き出し……は、十分にあるな。
じゃあ俺が今やることと言ったら……。
いつもの通りじゃねぇか。しょうがねぇな。
※※※※※ ※※※※※
「話は聞いたぜ。俺も参加させてもらうわ」
「もちろん私も」
ゲンオウとメーナムも、思い返せば随分古い付き合いになったな。
準備期間の三日間、初日の昼前にやってきた。
今朝の作戦会議は五十人くらいの集会だった。
この時間あたりから、討伐参加に名乗りを上げて店に来る冒険者達が多くなってきた。
「大丈夫なんかな?」
「何が?」
人数が多くなりゃ、それだけ居場所の面積も広くなきゃならん。
店の前のスペースの話じゃねぇ。
討伐の舞台作りの話だ。
が、ずぶの素人が口出ししたって笑われて終わりだろ。
なんせ向こうはプロの集団だ。
こっちが言うべきことは既にすべて伝えてある。
「何が大丈夫っての? アラタ」
「んぁ? あ、ああ、すまん、ヨウミ。考え事」
「心配事なら何でも言わなきゃならないからね? 分かってる?」
「はいはい、分かったよ」
いろいろと懲りた。
分かってますよっと。
「んじゃキリキリ働け。お客さん待ってるぞ」
みんながみんな、ドラゴン討伐に首を突っ込みに来たわけではなく、今までと変わりなく、ダンジョン攻略やフィールド体験を積む目的で来る冒険者もいる。
つまり、俺の忙しさはあんまり変わらない。
「へいへい。えーと、次のお待ちのお客さまー」
「はいっ。自分らもドラゴン討伐に参加したいんですが!」
「それはこっちじゃねぇ! 向こうだ! って……エージじゃねぇか。お前らもか」
「収入、でかそうだから」
「そろそろ後輩達に、私達の先輩と引けは取らないところ見せつけないと、と思いまして」
続々と討伐志願者がやってくる。
それでも、あの気配のでかさを考えるとまだ足りねぇんじゃねぇか?
普通に考えれば、人数は多ければ多い方がいい。
しかしどれほど集まるものか。
冒険者達は、今朝の五十人くらいの人数では、多少なりとも不安があったようだった。
ところが、だ。
「お姉さまー!」
どこかで聞いたような声。
しかも女性。
「い゛?!」
ヨウミはどこから声を出してんだ。
って……。
ヨウミのファンだっていう女冒険者じゃねぇか。
随分久しぶりだな。
「お姉さまがお困りだって話を聞いて、いても立ってもいられず……」
「えーと……あは……、うん、えーと。……アラタ」
「何だよ」
「この場合、ありがとうって言うのは正解かなぁ?」
「正解ですよお」
当人に聞かれるような声で俺に聞くな。
「あ、あの……テンちゃんは……いますか?」
「え? えーっと、ドラゴン討伐完了まではバイト休むつもりでいるようだから、そこら辺に……って……」
人馬族の男がいた。
確かこいつ……。
「ワッツ。テンちゃんのことは諦めろって。それより、ドラゴン退治の方に集中しろよ」
「ぐむ……」
そうだ。
こいつ、テンちゃんにプロポーズっつーか、交際の申し込みしに来た奴だったよな。
つかここにきて、まさかファンクラブに加入している冒険者達が力になるとは思わなかった。
もっともおにぎりの店の噂もごちゃ混ぜになって、その重要度はどっちが上か分からない奴らが多かったが。
それでも、ミーティングごとに増えていく参加者を新たに増えて言った上での作戦変更をスムーズに進めていくリーダーの手腕ってのは大したもんだ。
そうして何事もなく三日の準備期間も過ぎ、いよいよ討伐日を迎えた。
作戦立案開始に乗り遅れんじゃねぇぞ?
こっちも、そのためのおにぎりの炊き出し……は、十分にあるな。
じゃあ俺が今やることと言ったら……。
いつもの通りじゃねぇか。しょうがねぇな。
※※※※※ ※※※※※
「話は聞いたぜ。俺も参加させてもらうわ」
「もちろん私も」
ゲンオウとメーナムも、思い返せば随分古い付き合いになったな。
準備期間の三日間、初日の昼前にやってきた。
今朝の作戦会議は五十人くらいの集会だった。
この時間あたりから、討伐参加に名乗りを上げて店に来る冒険者達が多くなってきた。
「大丈夫なんかな?」
「何が?」
人数が多くなりゃ、それだけ居場所の面積も広くなきゃならん。
店の前のスペースの話じゃねぇ。
討伐の舞台作りの話だ。
が、ずぶの素人が口出ししたって笑われて終わりだろ。
なんせ向こうはプロの集団だ。
こっちが言うべきことは既にすべて伝えてある。
「何が大丈夫っての? アラタ」
「んぁ? あ、ああ、すまん、ヨウミ。考え事」
「心配事なら何でも言わなきゃならないからね? 分かってる?」
「はいはい、分かったよ」
いろいろと懲りた。
分かってますよっと。
「んじゃキリキリ働け。お客さん待ってるぞ」
みんながみんな、ドラゴン討伐に首を突っ込みに来たわけではなく、今までと変わりなく、ダンジョン攻略やフィールド体験を積む目的で来る冒険者もいる。
つまり、俺の忙しさはあんまり変わらない。
「へいへい。えーと、次のお待ちのお客さまー」
「はいっ。自分らもドラゴン討伐に参加したいんですが!」
「それはこっちじゃねぇ! 向こうだ! って……エージじゃねぇか。お前らもか」
「収入、でかそうだから」
「そろそろ後輩達に、私達の先輩と引けは取らないところ見せつけないと、と思いまして」
続々と討伐志願者がやってくる。
それでも、あの気配のでかさを考えるとまだ足りねぇんじゃねぇか?
普通に考えれば、人数は多ければ多い方がいい。
しかしどれほど集まるものか。
冒険者達は、今朝の五十人くらいの人数では、多少なりとも不安があったようだった。
ところが、だ。
「お姉さまー!」
どこかで聞いたような声。
しかも女性。
「い゛?!」
ヨウミはどこから声を出してんだ。
って……。
ヨウミのファンだっていう女冒険者じゃねぇか。
随分久しぶりだな。
「お姉さまがお困りだって話を聞いて、いても立ってもいられず……」
「えーと……あは……、うん、えーと。……アラタ」
「何だよ」
「この場合、ありがとうって言うのは正解かなぁ?」
「正解ですよお」
当人に聞かれるような声で俺に聞くな。
「あ、あの……テンちゃんは……いますか?」
「え? えーっと、ドラゴン討伐完了まではバイト休むつもりでいるようだから、そこら辺に……って……」
人馬族の男がいた。
確かこいつ……。
「ワッツ。テンちゃんのことは諦めろって。それより、ドラゴン退治の方に集中しろよ」
「ぐむ……」
そうだ。
こいつ、テンちゃんにプロポーズっつーか、交際の申し込みしに来た奴だったよな。
つかここにきて、まさかファンクラブに加入している冒険者達が力になるとは思わなかった。
もっともおにぎりの店の噂もごちゃ混ぜになって、その重要度はどっちが上か分からない奴らが多かったが。
それでも、ミーティングごとに増えていく参加者を新たに増えて言った上での作戦変更をスムーズに進めていくリーダーの手腕ってのは大したもんだ。
そうして何事もなく三日の準備期間も過ぎ、いよいよ討伐日を迎えた。
0
お気に入りに追加
1,587
あなたにおすすめの小説


念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜
ばふぉりん
ファンタジー
こんなスキルあったらなぁ〜?
あれ?このスキルって・・・えい〜できた
スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。
いいの?

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~
黒色の猫
ファンタジー
孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。
僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。
そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。
それから、5年近くがたった。
5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる