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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その11
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雑っぽいおにぎりの店を横切り、崖沿いに進んだ先の角。
曲がって進むにつれ、奇妙な匂いが次第に強くなる。
俺の力にも身体にも影響はなし。
同行してる冒険者らの話によれば、害はないがハーブ系の植物からの匂いなんだと。
が、強すぎるあまり、ここで待機することにした奴が出た。
俺らからは、コーティが脱落。
残ったのはンーゴとライムと俺。
冒険者達は六人脱落で九人がさらに奥に進む。
「にしても、ところどころ草が掘り起こされてるな」
「ホリオコサレル、ッテイウヨリ、ハモノデタタキツケタ?」
まぁ、そうとも言うな。
「獣とか魔物との戦闘の跡じゃない。何だろうな」
しかもその地面が荒らされた跡は最近のもの、ってのは俺にでも分かる。
進めば進むほど、荒れた個所が増え、その箇所ごとの範囲も広くなっていく。
「ひょっとして、はぐれ魔物の仕業?!」
冒険者の一人が、とんでもないことに気付いたとばかりに声がでかくなった。
「いや、戦闘の跡じゃねぇってそちらさんが言ってただろうが。それにどう見ても、刀剣みたいな薄い刃物で切りつけた感じの跡だ。魔物とかが暴れたんなら爪とか牙でするだろ。こんな薄い形状って……ねぇよな?」
「それも……そうね」
「進んでいけば分かる。ところでアラタ。魔物の気配は?」
「あるにはある。三キロ……四キロ以上先だと思う」
「思う……って……。それより近かったらどうするの」
「近く見積もって三キロ。その相手が危険な存在なら、警戒して読み取るのが当たり前だろ?」
そっちは戦闘っつー抵抗手段があるんだ。
けどこっちにゃ逃げる一手しかねぇんだよ。
相手に追いつかれたら一巻の終わり。
だから警戒度マックスで辺りを感知しなきゃなんねぇっての。
つっても、そんな知恵は俺にしか使えねぇから、こいつらには分かんねえか。
けど、ゆっくり進んでいく間に……。
「……これだ、ハーブ系の植物。けど……地面が荒らされてるのが気になってたが、獣道を広げるように荒してるな」
その道はハーブ群を貫通しているっぽい。
が、奥に進めば進むほど、その荒れようは目立たなくなってる。
ということは。
「こっち側、村にいる人が荒らした、と言えるな」
「けどアラタ。村人がこんなとこまで来るもんかね?」
考えるまでもない。
俺の店を真似ようとするなら、その付近に冒険者が活動できる場所を作る必要があるってこったろ?
だったら店の人間がやらかしたことだろ。
まぁ荒しても、それはいいだの悪いだのの判定するところじゃあないな。
誰かの土地ならば別だろうが。
だがしかし。
「魔物の気配が察知できたということは……この荒れようと関係があるんじゃねぇか?」
「まさか……いや、アラタの言う通りかもしれん。俺達の何人かと、コーティさんがこの香りに耐えられなかった。魔物を遠ざける力があるのかもしれない」
となると、この区域を荒らしたということは……。
村はこのハーブ群にも守られてたってことか。
その守り手に損害を与えたということは、村は魔物に襲われやすくなったとも言える。
不味いんじゃね?
はぐれドラゴンを倒せたとしても、さらに奥に住み着いている魔物だってこっちに来やすくなるはずだ。
ということは。
「村人達が、このハーブによって魔物から守られていることを知っていたら……」
「村長とかに報せる必要はあるな。とりあえず、もう少し進んでみようか」
まだ俺達はハーブ群の中にいる。
そんな環境ならなおさら討伐の舞台は、このハーブ群を越えた先の、できれば広い場所に定めたい。
※※※※※ ※※※※※
「ハーブ群を越えたわけだが」
冒険者の一人がそんなことを言う。
確かに、生えている草の種類が変わったな。
それにしても、動くモノに比べて植物の気配って、分かりづらかったんだな。
ススキモドキ、しかも米しか注目してなかったもんなぁ。
「おい、アラタ。どうなんだ?」
「あ、すまん」
能力のことに意識が向いてた。
えーと、だ。
「多分三体の中で一番でかい奴の、頭から尻尾までの長さがンーゴの体長を越えてるかもしれん。奥に広い場所があるとは思えんが、ここよりも広い場所があれば理想的だな」
「ソウイエバ、ハーブノトコロ、ヒロバッテカンジダッタネ」
言われてみればそうだった。
樹木はなかったな。
けど、そこを戦場にするわけにはいかねぇだろ。
魔物が忌避するハーブなら、荒れた部分を修復して、さらに群生させる必要があるんじゃねぇか?
「チチュウヲカキマゼテ、ヒロバヲツクッテモイイガ?」
あぁ、ンーゴはそういうこともできるんだよな。
ミアーノと一緒なら、なお効率がいいかもしれんが……。
「はぐれ魔物のテリトリーなら問題なんじゃないか? ドラゴンの集団だったらかなり危険な地域に変わるだろうが」
「はぐれた魔物がその辺りを荒らすことも考えたら、必要最低限の広場作りもやむなし、だと思う」
「ハーブ群のお陰で村に近寄れない、とのことだが、念のため、さらに奥に入ってみてから決めてもいいんじゃないか? でも……広場を作るって……どういうこと? 樹木を押し倒すの?」
さぁ……ねぇ……。
仲間だからって、こいつらの事なんでも知ってるわけじゃねぇんだよな。
曲がって進むにつれ、奇妙な匂いが次第に強くなる。
俺の力にも身体にも影響はなし。
同行してる冒険者らの話によれば、害はないがハーブ系の植物からの匂いなんだと。
が、強すぎるあまり、ここで待機することにした奴が出た。
俺らからは、コーティが脱落。
残ったのはンーゴとライムと俺。
冒険者達は六人脱落で九人がさらに奥に進む。
「にしても、ところどころ草が掘り起こされてるな」
「ホリオコサレル、ッテイウヨリ、ハモノデタタキツケタ?」
まぁ、そうとも言うな。
「獣とか魔物との戦闘の跡じゃない。何だろうな」
しかもその地面が荒らされた跡は最近のもの、ってのは俺にでも分かる。
進めば進むほど、荒れた個所が増え、その箇所ごとの範囲も広くなっていく。
「ひょっとして、はぐれ魔物の仕業?!」
冒険者の一人が、とんでもないことに気付いたとばかりに声がでかくなった。
「いや、戦闘の跡じゃねぇってそちらさんが言ってただろうが。それにどう見ても、刀剣みたいな薄い刃物で切りつけた感じの跡だ。魔物とかが暴れたんなら爪とか牙でするだろ。こんな薄い形状って……ねぇよな?」
「それも……そうね」
「進んでいけば分かる。ところでアラタ。魔物の気配は?」
「あるにはある。三キロ……四キロ以上先だと思う」
「思う……って……。それより近かったらどうするの」
「近く見積もって三キロ。その相手が危険な存在なら、警戒して読み取るのが当たり前だろ?」
そっちは戦闘っつー抵抗手段があるんだ。
けどこっちにゃ逃げる一手しかねぇんだよ。
相手に追いつかれたら一巻の終わり。
だから警戒度マックスで辺りを感知しなきゃなんねぇっての。
つっても、そんな知恵は俺にしか使えねぇから、こいつらには分かんねえか。
けど、ゆっくり進んでいく間に……。
「……これだ、ハーブ系の植物。けど……地面が荒らされてるのが気になってたが、獣道を広げるように荒してるな」
その道はハーブ群を貫通しているっぽい。
が、奥に進めば進むほど、その荒れようは目立たなくなってる。
ということは。
「こっち側、村にいる人が荒らした、と言えるな」
「けどアラタ。村人がこんなとこまで来るもんかね?」
考えるまでもない。
俺の店を真似ようとするなら、その付近に冒険者が活動できる場所を作る必要があるってこったろ?
だったら店の人間がやらかしたことだろ。
まぁ荒しても、それはいいだの悪いだのの判定するところじゃあないな。
誰かの土地ならば別だろうが。
だがしかし。
「魔物の気配が察知できたということは……この荒れようと関係があるんじゃねぇか?」
「まさか……いや、アラタの言う通りかもしれん。俺達の何人かと、コーティさんがこの香りに耐えられなかった。魔物を遠ざける力があるのかもしれない」
となると、この区域を荒らしたということは……。
村はこのハーブ群にも守られてたってことか。
その守り手に損害を与えたということは、村は魔物に襲われやすくなったとも言える。
不味いんじゃね?
はぐれドラゴンを倒せたとしても、さらに奥に住み着いている魔物だってこっちに来やすくなるはずだ。
ということは。
「村人達が、このハーブによって魔物から守られていることを知っていたら……」
「村長とかに報せる必要はあるな。とりあえず、もう少し進んでみようか」
まだ俺達はハーブ群の中にいる。
そんな環境ならなおさら討伐の舞台は、このハーブ群を越えた先の、できれば広い場所に定めたい。
※※※※※ ※※※※※
「ハーブ群を越えたわけだが」
冒険者の一人がそんなことを言う。
確かに、生えている草の種類が変わったな。
それにしても、動くモノに比べて植物の気配って、分かりづらかったんだな。
ススキモドキ、しかも米しか注目してなかったもんなぁ。
「おい、アラタ。どうなんだ?」
「あ、すまん」
能力のことに意識が向いてた。
えーと、だ。
「多分三体の中で一番でかい奴の、頭から尻尾までの長さがンーゴの体長を越えてるかもしれん。奥に広い場所があるとは思えんが、ここよりも広い場所があれば理想的だな」
「ソウイエバ、ハーブノトコロ、ヒロバッテカンジダッタネ」
言われてみればそうだった。
樹木はなかったな。
けど、そこを戦場にするわけにはいかねぇだろ。
魔物が忌避するハーブなら、荒れた部分を修復して、さらに群生させる必要があるんじゃねぇか?
「チチュウヲカキマゼテ、ヒロバヲツクッテモイイガ?」
あぁ、ンーゴはそういうこともできるんだよな。
ミアーノと一緒なら、なお効率がいいかもしれんが……。
「はぐれ魔物のテリトリーなら問題なんじゃないか? ドラゴンの集団だったらかなり危険な地域に変わるだろうが」
「はぐれた魔物がその辺りを荒らすことも考えたら、必要最低限の広場作りもやむなし、だと思う」
「ハーブ群のお陰で村に近寄れない、とのことだが、念のため、さらに奥に入ってみてから決めてもいいんじゃないか? でも……広場を作るって……どういうこと? 樹木を押し倒すの?」
さぁ……ねぇ……。
仲間だからって、こいつらの事なんでも知ってるわけじゃねぇんだよな。
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