210 / 493
店の日常編
緩衝材なんて真っ平ご免 その3
しおりを挟む
「……とまぁ、日中こんなことがあってな」
その日の晩飯時。
いつものようにフィールドで全員で飯を食いながら、イールという女性冒険者の話をしていたのだが。
「モムモム」
「突きすぎだなあ。おにぎりがぁ、転がるぞお?」
サミーは一心不乱に、おにぎりを顔で突っつくように食べている。
食べる様子は、脱皮する前とあまり変わらない。
ただ、力強さも高くなったのか、おにぎりをコロコロと転がしてしまう。
モーナーがそれをサミーの元に戻してる。
「しょーがないですねぇ、サミーは。鼻先にご飯粒ついてますよ」
再びおにぎりに食いつく前に、クリマーがそのご飯粒を取ってサミーに食べさせている。
「あたしの干し草食べてみない? 日に日に味が良くなってんのよー」
「だぁれが干し草なんて食べるかっての! 食べ物以外口にできるの、テンしかいないでしょっ!」
「テンじゃなくてテンちゃんだってばっ! 大体干し草だって食べ物よ? 食べ物粗末に扱わないのっ!」
コーティが珍しくテンちゃんに絡んでる。
まぁ隣に座ってるから自ずとそうなるんだろうが。
「何? あたしの興味ある? って、焼き魚だから食材は食べ慣れてるのかな?」
「ヤイタノハ、ナイナ」
「試してみる? つっても、そんな大きい体にこんなちっさい一切れじゃ食べ応えないだろうけど」
「アジ、ワカル」
「マジ? ンーゴもいろいろ食べるようになったねぇ。ねぇ、ミアーノ」
「ん? いや、俺らは元々雑食よ? 何でも食うで? まぁゆーてもライムほどやないやがの」
「ン? ナンカイッタ?」
和気あいあいでにぎやか。
気が休まる時間だ。
けど、みんなに話しかけても反応が全く返ってこないのは、何と言うか……。
「タイミング、悪かっただけよ」
「……それもそうだな」
車座になってるから、対面との距離はけっこうある。
俺の声が届かないこともあるだろうしな。
それに、俺とヨウミ、あるいはライムとテンちゃんの四人の頃の昔話をしたところで、何かが変わるわけでなし。
まぁ喋らなくてもいいか。
「なぁなぁ、アラタのあんちゃん」
晩飯をあらかた食い終わったミアーノが俺のところに近づいて話しかけてきた。
その場で呼びかけてもいいだろうにな。
だがわざわざ俺のところに来るってことは……。
「何か起きたか?」
「相変わらず察しがいいよな、あんちゃん。実はな、こないだ夜中の捕物あったろ?」
「あぁ。あん時ゃお疲れ」
「おぅ。いや、それはいいんやが……。あの夜よっか……何日か前からか、森の中に潜んでる奴がいてな」
「え?」
何で今頃そんなことを。
つか、夜盗は全員捕まえたんじゃなかったっけ?
「ま、夜盗の一味なら、そいつもひっくるめてとっ捕まえりゃええやと思うてたんやけんどな」
「……今も潜んでるな。同一人物ってことでいいのか?」
そういえば、村人達からの謝罪云々の時もいたっけな。
そんときと今の気配は同一だ。
だが、ミアーノが感じ取った気配と同じとは……。
「おんなじや。一人がずっとこっちを気にしとるっちゅー感じするんやが……あんちゃんはどないよ?」
「俺もだ。ただ夜盗みたいな攻撃性がない感じだったから、そのことは特にみんなに注意を呼び掛けるほどじゃねぇかなって」
「アラタのあんちゃんらがいなくなったあとも、ずっとその辺りうろついとる。店を狙ってるっちゅうことじゃなさそうやけんど」
「偵察して、どこかに情報を伝えるってことも」
「ないな。何も喋っとる様子ないし。俺もンーゴも地中にいりゃ、範囲内なら地面にいる奴らは大体把握できる。そいつも範囲内におるけど、何にも言わんと、ずっとこっち見とる感じがするんでの」
ここにずっといて、俺らを見てるってことは……。
飯を食った後ねぐらに帰る俺達を見てるわけじゃないんだよな。
ってことは……。
ミアーノとンーゴを気にしてるってことか?
何のために?
まぁあれだ。
最近は、変な客が多くなってきたから、その一人、ということでいいんじゃないだろうか……。
害意ないし……なぁ。
その日の晩飯時。
いつものようにフィールドで全員で飯を食いながら、イールという女性冒険者の話をしていたのだが。
「モムモム」
「突きすぎだなあ。おにぎりがぁ、転がるぞお?」
サミーは一心不乱に、おにぎりを顔で突っつくように食べている。
食べる様子は、脱皮する前とあまり変わらない。
ただ、力強さも高くなったのか、おにぎりをコロコロと転がしてしまう。
モーナーがそれをサミーの元に戻してる。
「しょーがないですねぇ、サミーは。鼻先にご飯粒ついてますよ」
再びおにぎりに食いつく前に、クリマーがそのご飯粒を取ってサミーに食べさせている。
「あたしの干し草食べてみない? 日に日に味が良くなってんのよー」
「だぁれが干し草なんて食べるかっての! 食べ物以外口にできるの、テンしかいないでしょっ!」
「テンじゃなくてテンちゃんだってばっ! 大体干し草だって食べ物よ? 食べ物粗末に扱わないのっ!」
コーティが珍しくテンちゃんに絡んでる。
まぁ隣に座ってるから自ずとそうなるんだろうが。
「何? あたしの興味ある? って、焼き魚だから食材は食べ慣れてるのかな?」
「ヤイタノハ、ナイナ」
「試してみる? つっても、そんな大きい体にこんなちっさい一切れじゃ食べ応えないだろうけど」
「アジ、ワカル」
「マジ? ンーゴもいろいろ食べるようになったねぇ。ねぇ、ミアーノ」
「ん? いや、俺らは元々雑食よ? 何でも食うで? まぁゆーてもライムほどやないやがの」
「ン? ナンカイッタ?」
和気あいあいでにぎやか。
気が休まる時間だ。
けど、みんなに話しかけても反応が全く返ってこないのは、何と言うか……。
「タイミング、悪かっただけよ」
「……それもそうだな」
車座になってるから、対面との距離はけっこうある。
俺の声が届かないこともあるだろうしな。
それに、俺とヨウミ、あるいはライムとテンちゃんの四人の頃の昔話をしたところで、何かが変わるわけでなし。
まぁ喋らなくてもいいか。
「なぁなぁ、アラタのあんちゃん」
晩飯をあらかた食い終わったミアーノが俺のところに近づいて話しかけてきた。
その場で呼びかけてもいいだろうにな。
だがわざわざ俺のところに来るってことは……。
「何か起きたか?」
「相変わらず察しがいいよな、あんちゃん。実はな、こないだ夜中の捕物あったろ?」
「あぁ。あん時ゃお疲れ」
「おぅ。いや、それはいいんやが……。あの夜よっか……何日か前からか、森の中に潜んでる奴がいてな」
「え?」
何で今頃そんなことを。
つか、夜盗は全員捕まえたんじゃなかったっけ?
「ま、夜盗の一味なら、そいつもひっくるめてとっ捕まえりゃええやと思うてたんやけんどな」
「……今も潜んでるな。同一人物ってことでいいのか?」
そういえば、村人達からの謝罪云々の時もいたっけな。
そんときと今の気配は同一だ。
だが、ミアーノが感じ取った気配と同じとは……。
「おんなじや。一人がずっとこっちを気にしとるっちゅー感じするんやが……あんちゃんはどないよ?」
「俺もだ。ただ夜盗みたいな攻撃性がない感じだったから、そのことは特にみんなに注意を呼び掛けるほどじゃねぇかなって」
「アラタのあんちゃんらがいなくなったあとも、ずっとその辺りうろついとる。店を狙ってるっちゅうことじゃなさそうやけんど」
「偵察して、どこかに情報を伝えるってことも」
「ないな。何も喋っとる様子ないし。俺もンーゴも地中にいりゃ、範囲内なら地面にいる奴らは大体把握できる。そいつも範囲内におるけど、何にも言わんと、ずっとこっち見とる感じがするんでの」
ここにずっといて、俺らを見てるってことは……。
飯を食った後ねぐらに帰る俺達を見てるわけじゃないんだよな。
ってことは……。
ミアーノとンーゴを気にしてるってことか?
何のために?
まぁあれだ。
最近は、変な客が多くなってきたから、その一人、ということでいいんじゃないだろうか……。
害意ないし……なぁ。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる