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店の日常編
外の世界に少しずつ その2
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幅二センチ、長さ五センチほど剃り上げられていた俺の前髪の右側。
垂れた髪の毛で隠されてはいるが、不格好なのはすぐ分かる。
その髪の毛を掻き上げれば、そんな長方形の剃られた跡がくっきりと見える。
「なんじゃこりゃっ!」
「……すいません。笑い事じゃないかもしれませんね」
「あ?」
「何かに当たりました? 赤くはれてないし血も出てないし、外傷はなさそうですが……」
「いや、怪我はしてねえよ。痛みはねぇし」
だがベッドの上に細かい髪の毛が散乱してた。
サミーに黒い毛、あったかなぁ? と思ってたが、俺の毛ってことは分かったが……。
理髪店はこの世界にもある。
だが俺は一回も行ってない。
自分で適当にハサミを使って切っている。
そして昨日、俺はハサミを使ってないし、髪の毛を切るつもりはなかった。
つまり、髪の毛を切った奴は俺じゃない。
ということは……。
「サミー、お前、俺の髪の毛切ったか?」
背中によじ登ってきたサミーの反応は……。
「痛い痛い痛い。背中叩くな! 分かった! 分かったからっ!」
俺の背中を挟みの両腕で交互に叩いてきた。
力が強くなってきた。
成長は喜ばしい事なんだが……。
「アラタさん自身で切ったんではなくて、サミーちゃんでもない……? 誰かが侵入してきたんですか?」
「お前らのファンクラブの誰かが、夜中こっそり」
「それはないですよ、きっと」
「なんで?」
「お目当ての人は目もくれないじゃないですか。仮にそんな方がいたとしても、何でそんな少ない量を切り取るんです?」
言われてみればその通り。
お目当て以外何も考えられない、という目的なら、俺を目当てに来たんなら、もっと切り落としてもいい。
いや、剃り落としたっていい。
そもそも、そんな侵入者に、俺が気付かないはずはない。
どんなに爆睡していても、それだけはすぐに分かる。
睡眠中も警戒し続けてた生活をしてた習慣だ。
これは修正しようがない。
「じゃあ……でもサミーちゃんは新と一緒に寝るんですよね?」
サミーは、今度は両腕で同時に俺の背中を叩く。
その答えに嘘がないのは分かる。
が、切る行為の自覚なしに、ということであれば、状況は変わる。
こいつは時々寝相が悪い時がある。
その拍子、かもしれんが……。
となると、だ。
「昨日、夜は一緒に寝たよな?」
ミィミィ言いながら両手で同時に叩く。
肯定はその通り。
一緒に寝たもんだもんな。
問題はその後だ。
「起きるまでに、何か……楽しいことでもあったか?」
この質問にも両腕同時に叩いた。
「えーと、アラタさん。その質問の意味は……」
「分かった。多分こいつ、面白いか楽しい夢でも見たんだろ。それで興奮して髪を切るような行動を起こした。それだな」
髪を切り落とす行為をしていない認識を持ちながら、髪を切る者がほかに該当者がいないとすれば、このような結果に結び付けられる。
もちろん推測だ。
「でも……サミーちゃん、そんなとこまで切れますか?」
「ん?」
「だって、地肌見えてますもん。これ、切られたんじゃなくて剃られたんでしょ?」
そうだ。
剃るとしたらカミソリがなきゃここまで切ることはできん。
サミーのハサミはカニのように丸みを帯びている。
「実際、どう手を出したのか分かんなきゃ」
「……俺が問題にしなけりゃどうでもいい話だが……」
「そうも言ってられないと思いますよ? 最近のサミーの遊び相手は、双子ばかりじゃなくその友達も混ざってきてますから」
「ミィィ」
遊びに夢中になって、興奮した挙句こんな目に遭った、なんて事故があったら流石に自重しなきゃなるまい。
髪の毛ならほっときゃ戻る。
が、例えば眼球とか、傷跡が消えても生活が不便になるかもしれない傷をつけたら大変だしな。
しかしこいつはこっちの心配事もまるで他人事だよな。
背中から肩越しに、頬ずりしてきやがる。
可愛いったらありゃしねぇ。
「……アラタさん。それじゃないですか?」
「んあ? どれよ?」
「時々ぺろぺろ舐めますよね、サミーちゃん。それで髪の毛擦り下ろされるんじゃ」
摩り下ろすってお前、大根おろしとか生姜下ろしとかじゃねぇんだか……ら……?
いや……。
それは……。
「……あり得る……かもしれん……。でも眠りながらここを舐める……って……」
「サミーちゃんも、夢を見る程に楽しい思い出ができてきたってことなんじゃないですか? 体ばかりじゃなく心の成長も見られますね。ねー? サミーちゃんっ」
「ミッ?」
ただ舐められても、くすぐったかったりする程度だぞ?
それを繰り返して地肌見える程髪の毛擦り下ろすって……。
どんな夢見てたんだよお前はっ!
垂れた髪の毛で隠されてはいるが、不格好なのはすぐ分かる。
その髪の毛を掻き上げれば、そんな長方形の剃られた跡がくっきりと見える。
「なんじゃこりゃっ!」
「……すいません。笑い事じゃないかもしれませんね」
「あ?」
「何かに当たりました? 赤くはれてないし血も出てないし、外傷はなさそうですが……」
「いや、怪我はしてねえよ。痛みはねぇし」
だがベッドの上に細かい髪の毛が散乱してた。
サミーに黒い毛、あったかなぁ? と思ってたが、俺の毛ってことは分かったが……。
理髪店はこの世界にもある。
だが俺は一回も行ってない。
自分で適当にハサミを使って切っている。
そして昨日、俺はハサミを使ってないし、髪の毛を切るつもりはなかった。
つまり、髪の毛を切った奴は俺じゃない。
ということは……。
「サミー、お前、俺の髪の毛切ったか?」
背中によじ登ってきたサミーの反応は……。
「痛い痛い痛い。背中叩くな! 分かった! 分かったからっ!」
俺の背中を挟みの両腕で交互に叩いてきた。
力が強くなってきた。
成長は喜ばしい事なんだが……。
「アラタさん自身で切ったんではなくて、サミーちゃんでもない……? 誰かが侵入してきたんですか?」
「お前らのファンクラブの誰かが、夜中こっそり」
「それはないですよ、きっと」
「なんで?」
「お目当ての人は目もくれないじゃないですか。仮にそんな方がいたとしても、何でそんな少ない量を切り取るんです?」
言われてみればその通り。
お目当て以外何も考えられない、という目的なら、俺を目当てに来たんなら、もっと切り落としてもいい。
いや、剃り落としたっていい。
そもそも、そんな侵入者に、俺が気付かないはずはない。
どんなに爆睡していても、それだけはすぐに分かる。
睡眠中も警戒し続けてた生活をしてた習慣だ。
これは修正しようがない。
「じゃあ……でもサミーちゃんは新と一緒に寝るんですよね?」
サミーは、今度は両腕で同時に俺の背中を叩く。
その答えに嘘がないのは分かる。
が、切る行為の自覚なしに、ということであれば、状況は変わる。
こいつは時々寝相が悪い時がある。
その拍子、かもしれんが……。
となると、だ。
「昨日、夜は一緒に寝たよな?」
ミィミィ言いながら両手で同時に叩く。
肯定はその通り。
一緒に寝たもんだもんな。
問題はその後だ。
「起きるまでに、何か……楽しいことでもあったか?」
この質問にも両腕同時に叩いた。
「えーと、アラタさん。その質問の意味は……」
「分かった。多分こいつ、面白いか楽しい夢でも見たんだろ。それで興奮して髪を切るような行動を起こした。それだな」
髪を切り落とす行為をしていない認識を持ちながら、髪を切る者がほかに該当者がいないとすれば、このような結果に結び付けられる。
もちろん推測だ。
「でも……サミーちゃん、そんなとこまで切れますか?」
「ん?」
「だって、地肌見えてますもん。これ、切られたんじゃなくて剃られたんでしょ?」
そうだ。
剃るとしたらカミソリがなきゃここまで切ることはできん。
サミーのハサミはカニのように丸みを帯びている。
「実際、どう手を出したのか分かんなきゃ」
「……俺が問題にしなけりゃどうでもいい話だが……」
「そうも言ってられないと思いますよ? 最近のサミーの遊び相手は、双子ばかりじゃなくその友達も混ざってきてますから」
「ミィィ」
遊びに夢中になって、興奮した挙句こんな目に遭った、なんて事故があったら流石に自重しなきゃなるまい。
髪の毛ならほっときゃ戻る。
が、例えば眼球とか、傷跡が消えても生活が不便になるかもしれない傷をつけたら大変だしな。
しかしこいつはこっちの心配事もまるで他人事だよな。
背中から肩越しに、頬ずりしてきやがる。
可愛いったらありゃしねぇ。
「……アラタさん。それじゃないですか?」
「んあ? どれよ?」
「時々ぺろぺろ舐めますよね、サミーちゃん。それで髪の毛擦り下ろされるんじゃ」
摩り下ろすってお前、大根おろしとか生姜下ろしとかじゃねぇんだか……ら……?
いや……。
それは……。
「……あり得る……かもしれん……。でも眠りながらここを舐める……って……」
「サミーちゃんも、夢を見る程に楽しい思い出ができてきたってことなんじゃないですか? 体ばかりじゃなく心の成長も見られますね。ねー? サミーちゃんっ」
「ミッ?」
ただ舐められても、くすぐったかったりする程度だぞ?
それを繰り返して地肌見える程髪の毛擦り下ろすって……。
どんな夢見てたんだよお前はっ!
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