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紅丸編
トラブル連打 その9
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音信不通、消息不明の件は何とか解決できた。
だが魔物の泉現象が起きる気配を感知。
泉現象には、旗手の連中が来たらそいつらに任せりゃいいが、すぐに駆け付けてくれるとは限らない。
紅丸にもこの現象の被害を食い止めてもらいたいことを伝えたが、緊急に船を閉場し、地上から離れた。
ま、足を引っ張られなきゃ関係ない。
馬鹿王子は旗手に伝達するために王宮にでも戻ったか。
残ったのは俺達だけ。
おまけに、変なちっこい魔物にやたら絡まれてる。
ヨウミ曰く、妖精版アラタ、だとよ。
イジるのは結構だが、タイミングを考えろ。
けど絡まれてるっつーより、俺に手間をかけさせた代償を無理やり出させてるって感じだ。
助けを求められた俺が、ただ手を伸ばしただけで解決できたんなら、とっととどっかに行けってなもんだ。
けどその元凶がごねたり、泉現象と重なったりしたんだぜ?
その現象を食い止める手伝位くらいしてもらったって罰は当たらんだろ?
つーか、それくらいの手伝い、自分から進んでやる案件だろ?
「で、どこで何するっての?!」
ピクシー女子の怒鳴り声が甲高い。
しかも耳のそばで。
厭味ったらしいったらありゃしない。
小さい体だからだろうがな。
「いくら場所と時間が分かったっつっても、そこでボーっとしててもしょうがない。いったん店に戻って対策を万全にしようか」
「前みたいに、他の冒険者に頼むってのは?」
残念ながらそれはあまりよろしくない。
なぜならば。
「前回はダンジョンだったろ? モーナーが掘り、そこに行く冒険者達はその前に俺の店に来る。そして俺達が住む村でもある。助けてくれって縋り、頼り、依頼する理由はある。けれども……」
「隣村よりもさらに離れた場所、ですもんね」
「避難をお、呼びかけないとお」
それも難しい。
「俺たちはそこの村の隣村の住民だ。そんな人間がその村に呼びかけたところで、俺たちの行動を理解してもらえないだろうよ」
「でも危険を報せてくれるわけだし」
「どこに避難させるんだ? サキワ村か? 現象が起きたら一気にこっちまで襲撃されるかもしれん。そこの村に隣接する町、都市に安全地帯はないと見るべきだな」
雰囲気が暗くなる。
だがテンちゃん達が音信不通になった時よりははるかにマシだ。
「でも……いつも思うんだけど……」
「ん? どした?」
「アラタ、別に逃げてもいいんじゃないの? あそこで仕事するのは、ダンジョンがあるからでしょ?」
マッキーの指摘は、間違いじゃない。
けどな……。
言葉にできない、彼女の言葉への拒否感を表に出せないのがもどかしい。
それとな……。
「ちょっと。えーと、コーティちゃん? とサミー。アラタの肩でじゃれつかないのっ」
「あぁ? なんであたしがちゃんづけよ! つーか、なんてあたしがこんな防具っぽいのにじゃれつかれなきゃなんないのよ!」
防具?
サミーのどこが防具だよ?
つか、偉そうな口利いてて、サミーに付きまとわれてたのか。
体が小さいから遊び相手になってくれやすいとでも思ってんだろうか?
「……じゃれつくならほかんとこでしてくれ。肩が重くなる」
……確かに他のところでじゃれつけっつったよ?
それが、何で頭によじ登る?
「重い。頭が重い。首が疲れる。降りろ、サミー」
体重も増えてきたんだな。
モフモフは気持ちいいんだが、そろそろ体にとりついて甘えるのも卒業してほしいんだが。
「話が進まないんだけど。話し合いの邪魔は止めてね? サミー。……で、アラタがそう決めたんだから決定ってことにしよう。で、これから具体的にどうするの?」
ヨウミの言うことは聞くようになったな。
まぁ俺にしか甘えられないってんなら仕方がないが。
で……これからのことか?
「あ? あぁ。まず人に対してどうするかってことより、俺達が出来ることは何かってことを考えてな」
「うん」
「おにぎりのセットをできるだけ多く用意する」
「いつもと変わんないじゃん」
他に何かができると思ってたか?
※※※※※ ※※※※※
「何よここ! 貧乏くさい!」
おにぎりの店に戻ってきた。
なんか、何日ぶりって気がするが……丸一日、日中いっぱいだったんだよな。
それにしてもピクシー種とやらの生活基準はよく分からん。
まぁ実態自体分からんが。
けどな、一々文句を言うのに、そんな甲高い声を聞かせられるこっちの身になれよ。
「それにしても……武器も防具も、もうちょっと良さそうな物、なかったわね……」
「しょうがないよお。今までまるまる商会にい、頼ってたってことだなあ」
「品揃えがいつもと変わらない状態に戻ったってことね。あたし達人間には魔物と戦う力なんてないから、身を守るものは欲しかったけど」
「人間でも冒険者達は頑張ってるわよ?」
「マモノトタタカウニンゲンハ、チョットフツウトチガウニンゲン、ダヨ」
「普通と違う人間……アラタ」
なんでそこで俺の名前が出る!
「あれ? 何よ、これっ!」
あぁ?
あぁ……おにぎりは知らないのか。
そう言えば馬鹿王子、ピクシーって半透明とか言ってなかったか?
まぁ……生活の文化とか慣習が違えば……っておい!
勝手に食うな!
「何これ! 美味しいじゃない! 誰が作ったのよ、これ!」
あれ?
食い物ってことは本能で分かるのか?
「全部もらおうっと!」
「止めんか! 魔物の泉現象から出てきた魔物対策だ!」
「うるせぇな! ケチッ!」
見た目かわいいが、この口の悪さも何とかしてほしいが。
「いつもなら店の売り物だからな? 金払えばいいってもんじゃないが、万引き、泥棒と同じことしてんだぞ?」
万引きって、いろんな物ってんじゃなくて、間引きからの訛りって聞いたが……。
いや、そんなこと考えてる場合じゃねぇ!
「防具や武器の補強とか、満足にできなかったから、せめて力の補充する品くらいはまともに用意しなきゃならねぇってのに邪魔すんなや!」
「何よ、あんた作ってんの? んなわきゃないでしょ? こんなかわいいあたしにあんなむごいことを言う奴に」
助けを求めてたこと、すっかり忘れてんのか?
鳥頭もいいとこだ。
「米粒選びは俺にしかできねぇ。その米を炊いて作ったのがそのおにぎり。美味しいって褒めてくれたのはうれしいが、既にその評判は仲間から受けてる。自惚れるつもりはねぇが、それをできて当たり前のレベルの仕事にしなきゃ、みんなの助けにならねぇんだよ。仕事の邪魔すんな。明日一日でどこまでできるかの勝負だからな」
囚われてたピクシー種。
それを助けた代償として、こっちの手伝いをしてもらいたかったが……。
外れくじどころか足引っ張りになりかねねぇな……。
隣の村でそれに備えて買い物をみんなでしたけど、満足できる品物があまりなかった。
顔見知りの冒険者達と会ったりすれ違ったりしたが、俺から頼むのは筋が違うよな。
ジリ貧間違いなし。
また何日か寝込む覚悟で、ライム頼みか……。
だが魔物の泉現象が起きる気配を感知。
泉現象には、旗手の連中が来たらそいつらに任せりゃいいが、すぐに駆け付けてくれるとは限らない。
紅丸にもこの現象の被害を食い止めてもらいたいことを伝えたが、緊急に船を閉場し、地上から離れた。
ま、足を引っ張られなきゃ関係ない。
馬鹿王子は旗手に伝達するために王宮にでも戻ったか。
残ったのは俺達だけ。
おまけに、変なちっこい魔物にやたら絡まれてる。
ヨウミ曰く、妖精版アラタ、だとよ。
イジるのは結構だが、タイミングを考えろ。
けど絡まれてるっつーより、俺に手間をかけさせた代償を無理やり出させてるって感じだ。
助けを求められた俺が、ただ手を伸ばしただけで解決できたんなら、とっととどっかに行けってなもんだ。
けどその元凶がごねたり、泉現象と重なったりしたんだぜ?
その現象を食い止める手伝位くらいしてもらったって罰は当たらんだろ?
つーか、それくらいの手伝い、自分から進んでやる案件だろ?
「で、どこで何するっての?!」
ピクシー女子の怒鳴り声が甲高い。
しかも耳のそばで。
厭味ったらしいったらありゃしない。
小さい体だからだろうがな。
「いくら場所と時間が分かったっつっても、そこでボーっとしててもしょうがない。いったん店に戻って対策を万全にしようか」
「前みたいに、他の冒険者に頼むってのは?」
残念ながらそれはあまりよろしくない。
なぜならば。
「前回はダンジョンだったろ? モーナーが掘り、そこに行く冒険者達はその前に俺の店に来る。そして俺達が住む村でもある。助けてくれって縋り、頼り、依頼する理由はある。けれども……」
「隣村よりもさらに離れた場所、ですもんね」
「避難をお、呼びかけないとお」
それも難しい。
「俺たちはそこの村の隣村の住民だ。そんな人間がその村に呼びかけたところで、俺たちの行動を理解してもらえないだろうよ」
「でも危険を報せてくれるわけだし」
「どこに避難させるんだ? サキワ村か? 現象が起きたら一気にこっちまで襲撃されるかもしれん。そこの村に隣接する町、都市に安全地帯はないと見るべきだな」
雰囲気が暗くなる。
だがテンちゃん達が音信不通になった時よりははるかにマシだ。
「でも……いつも思うんだけど……」
「ん? どした?」
「アラタ、別に逃げてもいいんじゃないの? あそこで仕事するのは、ダンジョンがあるからでしょ?」
マッキーの指摘は、間違いじゃない。
けどな……。
言葉にできない、彼女の言葉への拒否感を表に出せないのがもどかしい。
それとな……。
「ちょっと。えーと、コーティちゃん? とサミー。アラタの肩でじゃれつかないのっ」
「あぁ? なんであたしがちゃんづけよ! つーか、なんてあたしがこんな防具っぽいのにじゃれつかれなきゃなんないのよ!」
防具?
サミーのどこが防具だよ?
つか、偉そうな口利いてて、サミーに付きまとわれてたのか。
体が小さいから遊び相手になってくれやすいとでも思ってんだろうか?
「……じゃれつくならほかんとこでしてくれ。肩が重くなる」
……確かに他のところでじゃれつけっつったよ?
それが、何で頭によじ登る?
「重い。頭が重い。首が疲れる。降りろ、サミー」
体重も増えてきたんだな。
モフモフは気持ちいいんだが、そろそろ体にとりついて甘えるのも卒業してほしいんだが。
「話が進まないんだけど。話し合いの邪魔は止めてね? サミー。……で、アラタがそう決めたんだから決定ってことにしよう。で、これから具体的にどうするの?」
ヨウミの言うことは聞くようになったな。
まぁ俺にしか甘えられないってんなら仕方がないが。
で……これからのことか?
「あ? あぁ。まず人に対してどうするかってことより、俺達が出来ることは何かってことを考えてな」
「うん」
「おにぎりのセットをできるだけ多く用意する」
「いつもと変わんないじゃん」
他に何かができると思ってたか?
※※※※※ ※※※※※
「何よここ! 貧乏くさい!」
おにぎりの店に戻ってきた。
なんか、何日ぶりって気がするが……丸一日、日中いっぱいだったんだよな。
それにしてもピクシー種とやらの生活基準はよく分からん。
まぁ実態自体分からんが。
けどな、一々文句を言うのに、そんな甲高い声を聞かせられるこっちの身になれよ。
「それにしても……武器も防具も、もうちょっと良さそうな物、なかったわね……」
「しょうがないよお。今までまるまる商会にい、頼ってたってことだなあ」
「品揃えがいつもと変わらない状態に戻ったってことね。あたし達人間には魔物と戦う力なんてないから、身を守るものは欲しかったけど」
「人間でも冒険者達は頑張ってるわよ?」
「マモノトタタカウニンゲンハ、チョットフツウトチガウニンゲン、ダヨ」
「普通と違う人間……アラタ」
なんでそこで俺の名前が出る!
「あれ? 何よ、これっ!」
あぁ?
あぁ……おにぎりは知らないのか。
そう言えば馬鹿王子、ピクシーって半透明とか言ってなかったか?
まぁ……生活の文化とか慣習が違えば……っておい!
勝手に食うな!
「何これ! 美味しいじゃない! 誰が作ったのよ、これ!」
あれ?
食い物ってことは本能で分かるのか?
「全部もらおうっと!」
「止めんか! 魔物の泉現象から出てきた魔物対策だ!」
「うるせぇな! ケチッ!」
見た目かわいいが、この口の悪さも何とかしてほしいが。
「いつもなら店の売り物だからな? 金払えばいいってもんじゃないが、万引き、泥棒と同じことしてんだぞ?」
万引きって、いろんな物ってんじゃなくて、間引きからの訛りって聞いたが……。
いや、そんなこと考えてる場合じゃねぇ!
「防具や武器の補強とか、満足にできなかったから、せめて力の補充する品くらいはまともに用意しなきゃならねぇってのに邪魔すんなや!」
「何よ、あんた作ってんの? んなわきゃないでしょ? こんなかわいいあたしにあんなむごいことを言う奴に」
助けを求めてたこと、すっかり忘れてんのか?
鳥頭もいいとこだ。
「米粒選びは俺にしかできねぇ。その米を炊いて作ったのがそのおにぎり。美味しいって褒めてくれたのはうれしいが、既にその評判は仲間から受けてる。自惚れるつもりはねぇが、それをできて当たり前のレベルの仕事にしなきゃ、みんなの助けにならねぇんだよ。仕事の邪魔すんな。明日一日でどこまでできるかの勝負だからな」
囚われてたピクシー種。
それを助けた代償として、こっちの手伝いをしてもらいたかったが……。
外れくじどころか足引っ張りになりかねねぇな……。
隣の村でそれに備えて買い物をみんなでしたけど、満足できる品物があまりなかった。
顔見知りの冒険者達と会ったりすれ違ったりしたが、俺から頼むのは筋が違うよな。
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