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紅丸編
行商人とのコンタクト その3
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昼飯の時は、紅丸という行商人の案内で、彼の事業の飲食店に行った。
まぁいろんな話が聞けて収穫がたくさんあった。
戻ってからヨウミ達に報告をすると、全員から感嘆のため息と羨望の眼差しを浴びた。
気分転換になったはいいが、ドーセンのところで晩飯を食ってる間、気分は一気にどん底に落とされた。
「店に魔物の種族の従業員がいた? ……うん、まぁ……みんな知ってることだな」
「え?」
「そうなの?」
「へえぇ」
「うちらみたいだね」
俺ばかりじゃなく、テンちゃんもヨウミも驚いてる。
テンちゃんはともかく、ヨウミは知ってなきゃおかしい……って、俺と一緒に行動する前は、祖父さんの手伝いばかりしてたんだっけか。
まぁ……知らなかったことかもしれんな。
マッキーも、まぁ間違っちゃいないが……。
なんか、違う。うん。
「船の中に店が並んでた? あぁ、うん……。そんな事業も展開してるな」
「え?」
「そんなことしてるんだぁ」
「へえぇ。入ってみたいなー」
テンちゃん並みの大きさの魔物も働いてたし、あいつの話だと魔物と一緒に出入りできる店もあるとか。
気配りできる……っつーか、みんなの意見を一度は聞くっつってたな。
その取り入れた意見の一つってことかもしれない。
「うん……まぁ、なんだ。さぼれっつーわけじゃねぇけどよ……。受映機せっかく買ったんだからさぁ……。世の中の事、少しくらいは知っとけよ」
「うぐ……」
「買ったばっかりだけど、確かに見てないなあ」
「何だよそれ。せっかく手配して買ったってのに。使ってないってどういうこった」
「あぅ……」
正論だ。
何も言えない。
「まるまる商会の代表と一緒に食事した、なんて、そりゃ羨ましい限りだが……会話の中身が何というか……親子の会話のレベルだな、それ」
「うぅ……」
「商売が上手になるコツとか、そんな話は聞かなかったのか?」
「えっと……」
「名前と顔、一回見ただけで覚えろとか言われなかったか?」
「ぐぅぅ……」
収穫だと思っていた情報は、周知の事実。
聞き流したい話は、苦い薬。
ドーセンにズバリ言い当てられた。
結局、実質的な俺にとっての収穫は、その情報量に対してこんなにわずかなもんだったとは……。
「ドーセンさん、指摘、鋭いっ」
「流石にぐうの音も出ないね」
お前らなぁ……。
「それに、俺がうらやましいと思ってるのはあの商会の代表と対面して会話したことであって、店で食事したってことじゃねぇぞ?」
「え?」
「当たり前だろ。ここよりも少しは豪華な店って感じだったろうけど、誰でも入れるぞ?」
誰でも入れる……って……。
「船だぞ? 船の一部だぞ? 離着陸する船。いつどこに降りるかなんて分かんねぇだろ」
「だから受映機を見ろっつってんだよ。広告とか出してるんだぞ?」
「まじで?!」
天気予報かよ!
「じゃああたし達も行けるの?!」
「でも仕事あるからなぁ」
「何だよ、お前ら。俺んとこは俺とゴーアしかいねぇし、基本休日ないから俺の独断で休みはねぇけど、お前らもねぇのか? あんなに魔物とかいてよぉ」
「そう言えば、休日ないよね」
「冒険者達も毎日来るし」
一日でも米研ぎ欠かしたら、あっという間に売り切れ、なんてことになりかねない。
いくら貯蔵庫にストックがたくさんあったとしてもな。
「当番制じゃねぇのか。疲れが溜まっちまうんじゃねぇのか?」
「休みをもらってもねぇ」
「行くところ……あ」
「あ……。休みがあったら行ってみたいね」
まぁ……俺が休まない限りは品物の在庫が切れる心配はない。
休み、与えなきゃなぁ。
つーか、今まではダンジョンとかフィールドの案内が、店での仕事の気分転換になってたりしてたからなぁ。
「でもいつここからいなくなるか分からないよね」
「それも滞在予定期間っつぅことで広告出してるぞ?」
「ホント?!」
「行ってみたい! どんなメニューあるのかなぁ」
「俺のとこで飯食いながら盛り上がる話題じゃねぇだろ!」
もっともだ。
俺はその件で口を開いてないからな?
しかし……おかしいな。
「待て待て。この村は日本大王国の端って聞いたぞ? そんな端の所に立ち寄るか?」
「それだけアラタに関心があったんじゃねぇの?」
「おいおい……」
「アラタ、意外と人気あるねぇ」
冗談じゃない。
俺にまでファンクラブできててたまるかっ!
「ま、どんな情報でも、人から見たらくだらねぇ他愛のねぇもんだったりするが、別の人から見たらとんでもねぇ大金を掴むようなもんだったりする。ひょっとしたら、お前の情報はとんでもない大金を得るカギになってんのかもなぁ? ……皇太子様と知り合いとかって話はしたのか?」
……何でいきなりあの馬鹿王子が出てくる?
「するわきゃないだろ。ただの顔見知りだ」
「王家とのコネ、さらに強くしたいのかもよ?」
「何だよ、それ」
さらに、ってどういうことだ。
前々から繋がってたんだろ?
だったら別にそれだけでいいんじゃねぇのか?
「代が変わるんだ。人とのつながりも変わるだろうよ。しかも一緒に変わるわけじゃねぇ。片方が先に死んだら、その息子ととのつながりはいくらか薄くなる。さらにそっちも次の代になったら、親同士のつながりの強さは必ずしも、子供同士に受け継がれるとは限らねぇ。今は孫同士だろ? 親は親、その前の代はその前の代。でも俺達の世代はそれとは別って考えもあるだろうよ」
難儀なこった。
あれ?
でも見た目……あの紅丸ってやつと馬鹿王子、考えてみれば見た目、似た年代って感じがするな。
「商会は、初代の時と同じくらい強いコネを持ちたい。でもそっちは素っ気ない、なんてことかもしんねえし、そんなことまったく考えてないかもしれないし。あれ? 片方が素っ気ないって、まるでお前と皇太子みたいなもんじゃねぇか? くぁはははは」
一緒にすんなや。
でもテレビか……。
あれ?
テレビ見てる余裕もなかったな。
電源入れてどこかの局の放映を流してたけど、それを見て面白いとか感動したとか腹立ったとか……。
そんな記憶もないな。
それに比べて今は……。
顔見知りはたくさんできたな。
社会人時代の周りの連中と比べて、気のいい奴ばかりだ。
友人、と呼んでいいんだろうか。
そう呼ばなきゃならない理由はどこにもないが……。
「ところで……アンコ、作ってみたんだ」
「へ?」
「いや、米の選別してもらってからよ、客が増えたって話したろ?」
「あ、あぁ。そんな話は聞いたぞ。覚えてる」
人の話は覚えてるんだよな。
不思議なもんだ。
「感謝の気持ちを形に現わしてみた。金だと生々しいだろ?」
「え?」
「じゃあおはぎ、作り放題?!」
「い、いや、そこまでたくさん作ったわけじゃないが……」
「……まぁせっかくの好意だ。こっちからは頼んでない、あれば有り難い物を作ってくれたんだし、有り難く受け取っとくか。おやっさん、ありがとよ」
何か知らんが、じっと見られてるな。
何だよ。
「アラタ、なんかいい顔してた」
「初めて見るな。いつもむっとした感じしてるから」
「やば、ちょっと惚れるかも」
やかましい!
「素直に言えるじゃねぇか。そういうのは商人には必要だと思うぞ?」
「う、うるせぇっ。ふんっ」
からかわれてるんだか真面目なアドバイスなんだか、どっちなんだっつーのっ。
まぁいろんな話が聞けて収穫がたくさんあった。
戻ってからヨウミ達に報告をすると、全員から感嘆のため息と羨望の眼差しを浴びた。
気分転換になったはいいが、ドーセンのところで晩飯を食ってる間、気分は一気にどん底に落とされた。
「店に魔物の種族の従業員がいた? ……うん、まぁ……みんな知ってることだな」
「え?」
「そうなの?」
「へえぇ」
「うちらみたいだね」
俺ばかりじゃなく、テンちゃんもヨウミも驚いてる。
テンちゃんはともかく、ヨウミは知ってなきゃおかしい……って、俺と一緒に行動する前は、祖父さんの手伝いばかりしてたんだっけか。
まぁ……知らなかったことかもしれんな。
マッキーも、まぁ間違っちゃいないが……。
なんか、違う。うん。
「船の中に店が並んでた? あぁ、うん……。そんな事業も展開してるな」
「え?」
「そんなことしてるんだぁ」
「へえぇ。入ってみたいなー」
テンちゃん並みの大きさの魔物も働いてたし、あいつの話だと魔物と一緒に出入りできる店もあるとか。
気配りできる……っつーか、みんなの意見を一度は聞くっつってたな。
その取り入れた意見の一つってことかもしれない。
「うん……まぁ、なんだ。さぼれっつーわけじゃねぇけどよ……。受映機せっかく買ったんだからさぁ……。世の中の事、少しくらいは知っとけよ」
「うぐ……」
「買ったばっかりだけど、確かに見てないなあ」
「何だよそれ。せっかく手配して買ったってのに。使ってないってどういうこった」
「あぅ……」
正論だ。
何も言えない。
「まるまる商会の代表と一緒に食事した、なんて、そりゃ羨ましい限りだが……会話の中身が何というか……親子の会話のレベルだな、それ」
「うぅ……」
「商売が上手になるコツとか、そんな話は聞かなかったのか?」
「えっと……」
「名前と顔、一回見ただけで覚えろとか言われなかったか?」
「ぐぅぅ……」
収穫だと思っていた情報は、周知の事実。
聞き流したい話は、苦い薬。
ドーセンにズバリ言い当てられた。
結局、実質的な俺にとっての収穫は、その情報量に対してこんなにわずかなもんだったとは……。
「ドーセンさん、指摘、鋭いっ」
「流石にぐうの音も出ないね」
お前らなぁ……。
「それに、俺がうらやましいと思ってるのはあの商会の代表と対面して会話したことであって、店で食事したってことじゃねぇぞ?」
「え?」
「当たり前だろ。ここよりも少しは豪華な店って感じだったろうけど、誰でも入れるぞ?」
誰でも入れる……って……。
「船だぞ? 船の一部だぞ? 離着陸する船。いつどこに降りるかなんて分かんねぇだろ」
「だから受映機を見ろっつってんだよ。広告とか出してるんだぞ?」
「まじで?!」
天気予報かよ!
「じゃああたし達も行けるの?!」
「でも仕事あるからなぁ」
「何だよ、お前ら。俺んとこは俺とゴーアしかいねぇし、基本休日ないから俺の独断で休みはねぇけど、お前らもねぇのか? あんなに魔物とかいてよぉ」
「そう言えば、休日ないよね」
「冒険者達も毎日来るし」
一日でも米研ぎ欠かしたら、あっという間に売り切れ、なんてことになりかねない。
いくら貯蔵庫にストックがたくさんあったとしてもな。
「当番制じゃねぇのか。疲れが溜まっちまうんじゃねぇのか?」
「休みをもらってもねぇ」
「行くところ……あ」
「あ……。休みがあったら行ってみたいね」
まぁ……俺が休まない限りは品物の在庫が切れる心配はない。
休み、与えなきゃなぁ。
つーか、今まではダンジョンとかフィールドの案内が、店での仕事の気分転換になってたりしてたからなぁ。
「でもいつここからいなくなるか分からないよね」
「それも滞在予定期間っつぅことで広告出してるぞ?」
「ホント?!」
「行ってみたい! どんなメニューあるのかなぁ」
「俺のとこで飯食いながら盛り上がる話題じゃねぇだろ!」
もっともだ。
俺はその件で口を開いてないからな?
しかし……おかしいな。
「待て待て。この村は日本大王国の端って聞いたぞ? そんな端の所に立ち寄るか?」
「それだけアラタに関心があったんじゃねぇの?」
「おいおい……」
「アラタ、意外と人気あるねぇ」
冗談じゃない。
俺にまでファンクラブできててたまるかっ!
「ま、どんな情報でも、人から見たらくだらねぇ他愛のねぇもんだったりするが、別の人から見たらとんでもねぇ大金を掴むようなもんだったりする。ひょっとしたら、お前の情報はとんでもない大金を得るカギになってんのかもなぁ? ……皇太子様と知り合いとかって話はしたのか?」
……何でいきなりあの馬鹿王子が出てくる?
「するわきゃないだろ。ただの顔見知りだ」
「王家とのコネ、さらに強くしたいのかもよ?」
「何だよ、それ」
さらに、ってどういうことだ。
前々から繋がってたんだろ?
だったら別にそれだけでいいんじゃねぇのか?
「代が変わるんだ。人とのつながりも変わるだろうよ。しかも一緒に変わるわけじゃねぇ。片方が先に死んだら、その息子ととのつながりはいくらか薄くなる。さらにそっちも次の代になったら、親同士のつながりの強さは必ずしも、子供同士に受け継がれるとは限らねぇ。今は孫同士だろ? 親は親、その前の代はその前の代。でも俺達の世代はそれとは別って考えもあるだろうよ」
難儀なこった。
あれ?
でも見た目……あの紅丸ってやつと馬鹿王子、考えてみれば見た目、似た年代って感じがするな。
「商会は、初代の時と同じくらい強いコネを持ちたい。でもそっちは素っ気ない、なんてことかもしんねえし、そんなことまったく考えてないかもしれないし。あれ? 片方が素っ気ないって、まるでお前と皇太子みたいなもんじゃねぇか? くぁはははは」
一緒にすんなや。
でもテレビか……。
あれ?
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そんな記憶もないな。
それに比べて今は……。
顔見知りはたくさんできたな。
社会人時代の周りの連中と比べて、気のいい奴ばかりだ。
友人、と呼んでいいんだろうか。
そう呼ばなきゃならない理由はどこにもないが……。
「ところで……アンコ、作ってみたんだ」
「へ?」
「いや、米の選別してもらってからよ、客が増えたって話したろ?」
「あ、あぁ。そんな話は聞いたぞ。覚えてる」
人の話は覚えてるんだよな。
不思議なもんだ。
「感謝の気持ちを形に現わしてみた。金だと生々しいだろ?」
「え?」
「じゃあおはぎ、作り放題?!」
「い、いや、そこまでたくさん作ったわけじゃないが……」
「……まぁせっかくの好意だ。こっちからは頼んでない、あれば有り難い物を作ってくれたんだし、有り難く受け取っとくか。おやっさん、ありがとよ」
何か知らんが、じっと見られてるな。
何だよ。
「アラタ、なんかいい顔してた」
「初めて見るな。いつもむっとした感じしてるから」
「やば、ちょっと惚れるかも」
やかましい!
「素直に言えるじゃねぇか。そういうのは商人には必要だと思うぞ?」
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