118 / 493
三波新、定住編
おにぎりのひみつ その1
しおりを挟む
子育てって、大変なのな。
それが人であろうとペットであろうと。
サミーが生まれた翌日から大惨事。
生まれた夜、屋外で一緒に過ごしたのは、いつも通りのンーゴと、野ざらしで睡眠は慣れてるミアーノ。
布団の代わりになってくれたテンちゃんに、サミーの添い寝に付き添った俺。
ボディガード代わりのライムだったんだが。
「起きて、アラタ」
「……んー……、ん?」
「この子にオネショされた」
日が昇り始める時間帯だった。
テンちゃんの灰色の体毛の一部が、サミーのおしっこの色に染まっている。
思わず笑い出しそうになったが、その被害が俺に及びそうになって慌てて起きた。
「まじかよっ!」
跳び起きて確認する。
トイレの躾、先にすべきだった!
けどどう躾していいのか分からん。
で、サミーはどこにいる?
オネショの跡から離れたはずなのに、その臭いがひどい。
が、サミーはすぐに見つけた。
俺が寝ていたときの頭の上の位置。
「アラタ……」
「何だよ、テンちゃん」
「髪の毛の色、変」
「え?」
思わず触りそうになった。
だが脳内に危険信号が響いた。
サミーのおねしょの臭いが強いまま。
そして俺の髪の毛の色が変。
そしてサミーが眠ってる位置。
「……頭、洗ってくるっ!」
「ちょっ! あたしのお腹、お腹も洗ってよぉ!」
「自分で洗えや」
「起き上がれるわけないでしょう! ちょっと!」
お腹で眠らせたかったのはお前だっ!
俺は知らんっ!
生まれたばかりの赤ちゃんは何も知らない。
そして一人きりでは何もできない。
俺が世話をしなきゃならない相手はサミーだ。
どんな生き物のおしっこにもバイキンはあるだろう。
まずは自分の頭を洗い流すのが先だ。
サミーの体を洗うのはその後。
テンちゃんは自分で洗え。
「なんだが騒がしいなや。何があったんかい?」
「まぁ生まれたての赤ちゃんなら誰でもするんだろうな。俺とテンちゃんがオネショ食らった」
「アヒャヒャ! 健康で何よりだなや。おぅ、サミー、おはよう。おはよう、分かるがい?」
「まだ分からんだろ」
「アラタ、オハヨウ」
「おう、おはよう、ンーゴ」
さて、可愛いトラブルで始まった朝も、おにぎり作りから始めんとな。
※※※※※ ※※※※※
この日から食事形式が変わった。
形式というか、予定というか。
今までは、一緒に食事ができるメンバー達とは、なるべく一緒に食事してた。
同じ釜の飯を食うって言葉もあるしな。
それが今は、まずはある程度成長するまでは、俺はサミーにつきっきりの形になった。
それに優先しなきゃならないこともある。
ミアーノとンーゴの食事の件だ。
二人で一食につきおにぎり十個。
そして今んとこ、サミーも一食につき一個で十分のようだから、一日で三十三個作っておく。
作り終わって二人におにぎりを一食分持って行き、そこでサミーも朝食を食べる。
それが終わって俺の朝飯の時間になる。
「それにしてもミアーノ。いや、ンーゴに直接聞いてもいいんだが」
「ン?」
「何があったんかい?」
二人はあっという間にそのおにぎりを食い終わる。
サミーはちょこちょこと齧るから、結構時間がかかる。
その様子を眺めながら聞いてみた。
「ミアーノはまだ納得がいくんだが、ンーゴの体長って……十メートルくらいあるんじゃないか?」
「めーとる? なんじゃそりゃ」
ミアーノもンーゴも、人間のいろんな知識はほとんど持ち合わせていない。
だから俺らが知ってて当然の事を理解できない時がある。
「あー……体が大きいだろ? よくおにぎり六個程度で満足できるなってさ。満腹にならんだろ」
「あー……そーゆーことかい。まぁ確かに食う量少なんだら、体持たんわな。けどこんな、俺の手でも収まるおにぎり六個で、ンーゴは十分っちゅうとる。何でか分らん? つーより、今までアラタぁ、分かんなかったんかい!」
いや、ここはツッコミが来る場面じゃないだろ。
「分かんないも何も、俺はただ、実りのいい米だけを収穫して、それを炊いて食ったり食わせたりしてきたわけだが……それだけだぞ?」
「実りのいいて……それしか感じられんかったんか?」
「それしか……って、それを感じ取れる奴自体いないって聞いたし」
ミアーノの奴、腕組みをして考え込んでいる。
なにか問題でもあるのか?
俺が考える最善の手段を尽くしているだけだが。
「実りのいい、ねぇ。……まぁ何つーか……。随分な手間かけんだの。稲刈りしたりせんかったりか?」
「何を言ってる。稲刈りどころか田植えもしたことねぇぞ」
「米泥棒してんのか、お前!」
「誰がするか!」
会話が微妙にすれ違ってる。
こんなやりとりの最中にサミーは食べ終わり、えっちらおっちらと俺の体をよじ登って俺の頭の上でくつろいでいる。
「おい、サミー。そこでションベンすんなよ? ……で、ミアーノ、俺は田んぼの米にはあまり興味ないんだ」
「興味ない? そりゃ興味深い話やの」
うまいことを言ったつもりか?
くだらない反応は放置。
そして俺は一から説明した。
この世界では、道端に生えているススキからも米が穫れることを知った。
その実り具合が田んぼの稲よりも抜群に良い。
所有者不明の、手入れを全くされてない土地に生えているそれらの中で、いい感じの物ばかりを収穫している。
「なるほどなぁ。理屈は分からんが、いい物があるからもらおうと。ま、誰のもんでもないもんを持ってくのは問題ないけどなぁ。理屈しらんとは思わんかった」
「ミアーノは知ってんのか」
「知ってるっつーか心当たりっつーか。こういうことかって感じでな」
どういうことだよ。
それが人であろうとペットであろうと。
サミーが生まれた翌日から大惨事。
生まれた夜、屋外で一緒に過ごしたのは、いつも通りのンーゴと、野ざらしで睡眠は慣れてるミアーノ。
布団の代わりになってくれたテンちゃんに、サミーの添い寝に付き添った俺。
ボディガード代わりのライムだったんだが。
「起きて、アラタ」
「……んー……、ん?」
「この子にオネショされた」
日が昇り始める時間帯だった。
テンちゃんの灰色の体毛の一部が、サミーのおしっこの色に染まっている。
思わず笑い出しそうになったが、その被害が俺に及びそうになって慌てて起きた。
「まじかよっ!」
跳び起きて確認する。
トイレの躾、先にすべきだった!
けどどう躾していいのか分からん。
で、サミーはどこにいる?
オネショの跡から離れたはずなのに、その臭いがひどい。
が、サミーはすぐに見つけた。
俺が寝ていたときの頭の上の位置。
「アラタ……」
「何だよ、テンちゃん」
「髪の毛の色、変」
「え?」
思わず触りそうになった。
だが脳内に危険信号が響いた。
サミーのおねしょの臭いが強いまま。
そして俺の髪の毛の色が変。
そしてサミーが眠ってる位置。
「……頭、洗ってくるっ!」
「ちょっ! あたしのお腹、お腹も洗ってよぉ!」
「自分で洗えや」
「起き上がれるわけないでしょう! ちょっと!」
お腹で眠らせたかったのはお前だっ!
俺は知らんっ!
生まれたばかりの赤ちゃんは何も知らない。
そして一人きりでは何もできない。
俺が世話をしなきゃならない相手はサミーだ。
どんな生き物のおしっこにもバイキンはあるだろう。
まずは自分の頭を洗い流すのが先だ。
サミーの体を洗うのはその後。
テンちゃんは自分で洗え。
「なんだが騒がしいなや。何があったんかい?」
「まぁ生まれたての赤ちゃんなら誰でもするんだろうな。俺とテンちゃんがオネショ食らった」
「アヒャヒャ! 健康で何よりだなや。おぅ、サミー、おはよう。おはよう、分かるがい?」
「まだ分からんだろ」
「アラタ、オハヨウ」
「おう、おはよう、ンーゴ」
さて、可愛いトラブルで始まった朝も、おにぎり作りから始めんとな。
※※※※※ ※※※※※
この日から食事形式が変わった。
形式というか、予定というか。
今までは、一緒に食事ができるメンバー達とは、なるべく一緒に食事してた。
同じ釜の飯を食うって言葉もあるしな。
それが今は、まずはある程度成長するまでは、俺はサミーにつきっきりの形になった。
それに優先しなきゃならないこともある。
ミアーノとンーゴの食事の件だ。
二人で一食につきおにぎり十個。
そして今んとこ、サミーも一食につき一個で十分のようだから、一日で三十三個作っておく。
作り終わって二人におにぎりを一食分持って行き、そこでサミーも朝食を食べる。
それが終わって俺の朝飯の時間になる。
「それにしてもミアーノ。いや、ンーゴに直接聞いてもいいんだが」
「ン?」
「何があったんかい?」
二人はあっという間にそのおにぎりを食い終わる。
サミーはちょこちょこと齧るから、結構時間がかかる。
その様子を眺めながら聞いてみた。
「ミアーノはまだ納得がいくんだが、ンーゴの体長って……十メートルくらいあるんじゃないか?」
「めーとる? なんじゃそりゃ」
ミアーノもンーゴも、人間のいろんな知識はほとんど持ち合わせていない。
だから俺らが知ってて当然の事を理解できない時がある。
「あー……体が大きいだろ? よくおにぎり六個程度で満足できるなってさ。満腹にならんだろ」
「あー……そーゆーことかい。まぁ確かに食う量少なんだら、体持たんわな。けどこんな、俺の手でも収まるおにぎり六個で、ンーゴは十分っちゅうとる。何でか分らん? つーより、今までアラタぁ、分かんなかったんかい!」
いや、ここはツッコミが来る場面じゃないだろ。
「分かんないも何も、俺はただ、実りのいい米だけを収穫して、それを炊いて食ったり食わせたりしてきたわけだが……それだけだぞ?」
「実りのいいて……それしか感じられんかったんか?」
「それしか……って、それを感じ取れる奴自体いないって聞いたし」
ミアーノの奴、腕組みをして考え込んでいる。
なにか問題でもあるのか?
俺が考える最善の手段を尽くしているだけだが。
「実りのいい、ねぇ。……まぁ何つーか……。随分な手間かけんだの。稲刈りしたりせんかったりか?」
「何を言ってる。稲刈りどころか田植えもしたことねぇぞ」
「米泥棒してんのか、お前!」
「誰がするか!」
会話が微妙にすれ違ってる。
こんなやりとりの最中にサミーは食べ終わり、えっちらおっちらと俺の体をよじ登って俺の頭の上でくつろいでいる。
「おい、サミー。そこでションベンすんなよ? ……で、ミアーノ、俺は田んぼの米にはあまり興味ないんだ」
「興味ない? そりゃ興味深い話やの」
うまいことを言ったつもりか?
くだらない反応は放置。
そして俺は一から説明した。
この世界では、道端に生えているススキからも米が穫れることを知った。
その実り具合が田んぼの稲よりも抜群に良い。
所有者不明の、手入れを全くされてない土地に生えているそれらの中で、いい感じの物ばかりを収穫している。
「なるほどなぁ。理屈は分からんが、いい物があるからもらおうと。ま、誰のもんでもないもんを持ってくのは問題ないけどなぁ。理屈しらんとは思わんかった」
「ミアーノは知ってんのか」
「知ってるっつーか心当たりっつーか。こういうことかって感じでな」
どういうことだよ。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
お気楽、極楽⁉︎ ポンコツ女神に巻き込まれた俺は、お詫びスキルで異世界を食べ歩く!
にのまえ
ファンタジー
目が覚めたら、女性が土下座をしていた。
その女性に話を聞くと、自分を女神だと言った。そしてこの女神のミス(くしゃみ)で、俺、鈴村凛太郎(27)は勇者召喚に巻き込まれたらしい。
俺は女神のミスで巻き込まれで、勇者ではないとして勇者特有のスキルを持たないし、元の世界には帰れないようだ。
「……すみません」
巻き込みのお詫びとして、女神は異世界で生きていくためのスキルと、自分で選んだスキルをくれた。
これは趣味の食べ歩きを、異世界でするしかない、
俺、凛太郎の異世界での生活が始まった。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる