上 下
114 / 493
三波新、定住編

ある日森の中卵に出会った その9

しおりを挟む
 グダグダな話し合いがあったが、まず冒険者達の屋外活動範囲に到着し、そこでおにぎりの店全員集合させることにした。
 移動速度が速い、ということで、マッキーにヨウミ達を呼びに行かせた。
 かかる日数は五日くらいと仮定したんだっけか。
 それが一日くらいで済んだものだから、留守番組は仰天。
 マッキーに軽く説明を頼んでおいたから、事情はある程度分かっていたはずだが……。

「えぇぇぇ!?」
「ひぃぃぃ!」

 モーナーとクリマーの絶叫はまだいいとして。

「た、助けてぇぇ!」

 ヨウミのこれはないだろう。
 仲間入りを希望するンーゴ本人を前にして、だ。
 つくづく巨大ミミズといった印象は否めないが。

「アンシンシロ。ヒト、クワナイ」
「へ? あ、はい……」

 明るいところで見ると、口らしきものはあるが、目と耳と鼻が見当たらない。
 表情がない分不気味さが増す。
 けど、口調は穏やかなんだよな。
 感情はあるとは思うんだが。
 ちなみにンーゴは、地面から二メートルくらい体を出している。
 残りは地中に沈めたまま。
 一体全長何メートルあるのやら。

「それにしても……なんか一気に人員が増えたな。互いに自己紹介が必要かな」
「自己紹介もいいけど……アラタが紹介した方が良くない?」

 何だよヨウミ、その突拍子もない意見は。

「だってアラタはリーダーだもんね。その自覚もあるもんね」
「んだなぁ。一人一人から説明聞いてもよ、結局誰がリーダーかって分かんねぇもんな。まぁ今までの事見てりゃアラタのあんちゃんはみんなから頼られてらあってのは分かるけどよお」

 一番長くいた奴と、一番の新参者からの意見が一致しちまった。
 まぁいいけどよ。

「まずこっちの二人。モグラの獣人族、でいいんだよな? ミアーノ。それと、見た奴みんなが驚きの声を上げるワーム種? のンーゴ。この二人は古くからの友人……でいいのか?」

 その通り、と二人は首を縦に振る。

「卵を戻しに行った際、想像を超える力を借りた。ミアーノはおにぎり四個、ンーゴは六個、一食ごとに作ってやることを条件に……まぁ給料代わりだな。で仲間になってくれた。みんな、よろしくしてやってくれ」
「よろしゅうな」
「オニギリ、イママデ、クッタナカデ、イチバンウマイ。スキ」

 この二人を見る全員の命は、俺のおにぎりにかかってる。
 みたいな言い方やめてくれ。

「で、ミアーノ、ンーゴ。こっちは俺のおにぎりの店を手伝ってくれるメンバー……まぁ仲間ってことでな」
「オレモ、ナカマイリ」
「けっこういたんだな」

「俺と同じ人間のヨウミ・エイス」
「よ、よろしくね」

 ワームにはまだ慣れてなさそうだ。

「ヨウミはこの中で一番の古株」
「その言い方、なんかイヤな感じ」

 気のせいだ。

「仲間になった順番とはちと違うが、次に知り合ったプリズムスライムのライムと天馬のテンちゃん。で、ヨウミの次に仲間になったダークエルフのマッキー。この三人はもう分かるよな?」
「あぁ。改めてよろしゅうな」
「ヨロシク」
「うん。よろしくね」
「うん。でもンーゴを乗せて飛ぶのは難しいなー」

 だろうな。

「ヨロシクナー」

 口調がンーゴに似てきたな、ライム。

「で、この村に来て最初に仲間になった、巨人族の血を引くモーナー。ライムとテンちゃんはモーナーに続いて仲間になった」
「よろしくなあ。けどお、俺よりでかいのはあ、初めて見るなあ」
「二人との物理的な距離が一番近かったかもな」
「そうなんか。へぇ、穴掘ってるんか。おもしろそうだの。あとで見させてや」
「オレハ、ムリダナ」

 あぁ。無理かもな。

「で、ドッペルゲンガー種のクリマー。ここに来る前は弟と一緒の生活をしてた。今は村の宿で仕事してる」
「ふーん。よろしくなあ」
「ヨロシク」
「は、はい……。よろしくお願いします……」

 意外と礼儀正しいんだよな、クリマー。
 その態度は一番好感が持てるんだが。
 それにしても……大所帯になったな。

「あとはすむ場所なんだが」
「それと、その卵はどうするの?」

 忘れてた。
 まだ説明してなかったな。

「ミアーノとンーゴのお陰で、生みの親と対面できた。ほっといても生まれるそうだ。温めなくてもいいんだと。ミアーノの通訳のお陰でそんな話を聞くことができた」
「じゃあ親は……」
「俺らに託すってことだな。生みの親の顔を知らないってのは不憫だが」
「しょーがねーべ。そういう習性なんだもんよ。子供だって生みの親は、卵から出てきた時にそばにいたもんだって思うべや」

 托卵、とは違うか。
 カッコウ、とも違うか。
 刷り込み……でもないのか?
 まぁ、みんなが丸く収まるっつんなら、その方がいいんだろうが、何か釈然としない。

「みんな、それでさぁ、アラタってばぁ」

 ん?
 あ……。
 人の……馬の口にも戸は立てられなかった。

「……アラタ……。お店はアラタがいなきゃやってけないの、自覚してる?」
「命があるだけでもお、大儲けって思わにゃあなあ」
「そこまでいくと、命知らず、ですよね」

 返事に困る詰め寄り方はやめてくれ。
 俺が悪かったよ。

「分かったよ。もう無茶しないから。それより、洞穴の部屋増やさないと、とは思うんだが……」

 宿を利用しているモーナーと、車庫と部屋を一緒にしているテンちゃんは洞窟の中を利用しないとしても、ヨウミ、一応ライム、マッキー、クリマー、そして俺の五人で部屋は埋まっている。
 だが寝室として使ったことはほとんどない。
 ロビーに横たわるテンちゃんが、無理やり全員をお腹に誘ってくるからだ。
 まぁそれはそれとして、だ。
 さらにミアーノが加わる。
 それはいいんだが……。

「ンーゴはどうしよう? 一人だけ外れるのはちょっとな」
「オレ? ナニガ?」
「ンーゴよお、お前の部屋どうしようっつー話だよ。体でけぇもんな」
「イママデドオリ、ナカデイイゾ?」
「中?」

 今まで通り、中って……。

「んじゃンーゴ、おめぇ、自分で寝床作れるんだな?」
「モンダイナイ」
「んだそうだ」

 だそうだ……って。

「ココ、マモノ、ソトカラヤッテコナイ。ソノソトノシタニイル。ツクッタラシラセル」

 野生の動物や魔物の行動範囲外ということは理解してるようだ。
 その場所にねぐらを作ることにも意味があるらしい。
 危険な魔物が入り込んできた時の防衛と、そして冒険者に経験を積ませるためという話を聞いて、そいつらにさらに適度な経験を積ませるために、魔物退治の相手にちょうど良さそうな魔物を誘導させることも考えてるんだと。

「俺も手伝ったるよ。そいつらの安全を確保できりゃいいんじゃろ?」
「ああ、そうしてくれると助かる。以前泉現象が起きてな」
「なんざそりゃ? 泉?」

 より強力な魔物が急に発生する現象は知らないらしい。
 ミアーノもンーゴも首を傾げている。

「んー……ま、気を付けたるわ。飯の恩の分はきっちり働かんとなぁ。な? ンーゴ」

 ミアーノも、それに頷くンーゴも、実に頼もしい。
 俺達にはない能力を持ってそうだしな。

「それはいいんだけどさ」
「ん?」
「その卵、どうするの?」
「……そりゃ、育てるさ」
「生まれたら……その子の部屋も必要よね」

 まぁそうなるな。
 部屋の追加は二つ、ということで。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...