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三波新、定住編
アラタの店の、アラタな問題 その1
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おにぎりの店をサキワ村で構えて毎日毎日目の前の仕事をこなしていくうちに、一人一人のスケジュールに違いが現れてくる。
まず店を始めたスタート時点で、モーナーの寝泊まりする場所が俺達と違い、ドーセンの宿屋にしている。
にしている、というか、それは以前から変わらずというか。
日中の仕事では、マッキーとテンちゃんが初級冒険者達のモーナーのダンジョンでの探索行動に付き添い、ライムとヨウミは俺と一緒に店での仕事を担当。
モーナーは、ダンジョンの掘削作業か俺の担当するおにぎり作りの準備に協力。
ところがドーセンの宿屋の建て替え云々の悩み相談が持ち上がる。
そこから発展した俺達の店の営業方針転換。
モーナーは掘削作業を兼ねて、ダンジョンに入る冒険者のケアをテンちゃんと一緒にすることになった。
モーナーにとっては、俺がここで店を構える前の仕事に戻ったってことになる。
マッキーはというと、メイン種族がエルフなだけあって、フィールド、つまり森の中で活動する初級冒険者のケアをする。
なお、深入りしないように、店の前に看板を立てた。
『生還が絶対条件』
これはダンジョン探索組にも当てはまるけどな。
立ち入り禁止の看板とかロープを張ったところで、破ろうとする奴は破るもんだ。
魔獣の行動範囲内に入っても、無事に戻ってきて、村に被害を及ぼさなければ問題ないわけだし。
まぁそんなことをする奴には、こっちも一切そいつらに構うことはしない。
つまりおにぎりを売ることもしない、ということ。
回復手段がゼロになった連中には痛いお仕置になるはずだ。
ちなみにダンジョン、フィールドどちらに行く連中にも、一応記名させている。
宿を利用する連中は宿屋でも記名するが、フィールドに行く連中の人数とか把握できないし、安全確認のためのチェックならいくつあっても問題ない。
ライムは、ずっと店担当の俺とヨウミ、そして店の警護。
それと飲み物の加工や雑用担当。
ライムも俺たち同様に意思はあるが、それを他者に伝える術が未発達って感じだ。
だから冒険者とライムのみだと、とても心許ない。
それに行商時代から飲み物の加工は評判だったからな。
けれど……まさか……。
「コウジ」
「どうした? ライム」
「ミズ、イレモノ、タリナイ、ハタラケ、ボウズ」
「……水筒は竹を加工するんだろ? おにぎりを包む竹の皮作りも併せて、お前の仕事だろ? ライム」
「……ソウダッタ ワスレンボダナ オマエ」
「忘れん坊はお前だろうが!」
なんか……口が悪くなってきてる。
誰のせいだ?
俺じゃないと思うが。
しかも声色がテンちゃんに似てきた。
ちょっと嫌すぎる。
「ノミモノ、カズイイカ? タリナイカ?」
「えーっと……おにぎりのセットがこんだけだから……。うん、問題ない。竹の皮も十分だ。あまりありすぎると品質に問題が出るかもしれないしな」
「ソウカ アタシノ オシッコ マニアッタカ」
「ちょっと待て!」
おしっこじゃなくて、お前の体を漏斗みたいに通してろ過したり栄養分加えたりしてるんだろ!
おしっこと違うだろ!
あれは排泄物だからな!
間違うな!
まったく……頭痛の種が増えてしまいそうだ。
「口が悪いの、アラタのせいだね」
「何で俺だよ!」
「だって、ダンジョンとフィールドに来る冒険者達にそんな感じで言ってるじゃない」
「あぁ? 言ってねぇよ」
「男女関係なく、みんなに坊主坊主って言ってるし、トイレのこともおしっことかうんちとか毎度毎度平気で言うし」
分かりやすく言っただけだろうよ!
学力がどんくらいか分かんねぇやつもいるしよ!
「川でされちゃ、飲用水とかに使えなくなっちゃうだろ! 監視をマッキーにしたのもそういうことがあるからだよ!」
自然に悪影響を及ぼしそうな予感は百パーセント当たるんだそうだ。
そういう意味でも俺の勘が得た人選は正しいと言える。
もちろん森に生息している生き物に、むやみやたらに接近させない役目もさせている。
はぐれた魔獣で、そんなに強くない物なら仕留めさせてるようだ。
魔獣も自然の中では弱肉強食の世界。
行動範囲から外れた弱そうな魔獣は、その生息圏に無理やり戻しても他種族のエサになるだけだ。
その違いは、他の魔獣に食われるか、未熟な冒険者の狩猟の鍛錬の的となり糧となるかくらい。
「あたしは……別に食べなくてもいいけどね。食用の草木でしのげるし」
「木を食うのか。お前、虫か?」
「だぁれが虫だ! あたしの矢に刺されたいか?! 食べ物っつったら木の実だ木の実!」
木の実を食う虫もいるが?
まぁいいけど。
つか、矢じりをこっちに向けるんじゃないっ!
刺さったら死ぬから。
もしくは死ぬと思うくらい痛がるから。
俺、一応一般人だからっ!
「遊んでないで仕事してよアラタ。収入不足で人を雇えないけど、増やしたいくらいには忙しいんだからね?」
「へいへい。ほら、坊主ども、今日はもう活動終わりだろ? 自分の名前の横に、もう一回名前書けな」
「ヨルハ オネショ スンナヨー」
ほんっっとに、どこで覚えたその言葉!
ライムが虹色のまま、悪い色に染まっていく……。
まず店を始めたスタート時点で、モーナーの寝泊まりする場所が俺達と違い、ドーセンの宿屋にしている。
にしている、というか、それは以前から変わらずというか。
日中の仕事では、マッキーとテンちゃんが初級冒険者達のモーナーのダンジョンでの探索行動に付き添い、ライムとヨウミは俺と一緒に店での仕事を担当。
モーナーは、ダンジョンの掘削作業か俺の担当するおにぎり作りの準備に協力。
ところがドーセンの宿屋の建て替え云々の悩み相談が持ち上がる。
そこから発展した俺達の店の営業方針転換。
モーナーは掘削作業を兼ねて、ダンジョンに入る冒険者のケアをテンちゃんと一緒にすることになった。
モーナーにとっては、俺がここで店を構える前の仕事に戻ったってことになる。
マッキーはというと、メイン種族がエルフなだけあって、フィールド、つまり森の中で活動する初級冒険者のケアをする。
なお、深入りしないように、店の前に看板を立てた。
『生還が絶対条件』
これはダンジョン探索組にも当てはまるけどな。
立ち入り禁止の看板とかロープを張ったところで、破ろうとする奴は破るもんだ。
魔獣の行動範囲内に入っても、無事に戻ってきて、村に被害を及ぼさなければ問題ないわけだし。
まぁそんなことをする奴には、こっちも一切そいつらに構うことはしない。
つまりおにぎりを売ることもしない、ということ。
回復手段がゼロになった連中には痛いお仕置になるはずだ。
ちなみにダンジョン、フィールドどちらに行く連中にも、一応記名させている。
宿を利用する連中は宿屋でも記名するが、フィールドに行く連中の人数とか把握できないし、安全確認のためのチェックならいくつあっても問題ない。
ライムは、ずっと店担当の俺とヨウミ、そして店の警護。
それと飲み物の加工や雑用担当。
ライムも俺たち同様に意思はあるが、それを他者に伝える術が未発達って感じだ。
だから冒険者とライムのみだと、とても心許ない。
それに行商時代から飲み物の加工は評判だったからな。
けれど……まさか……。
「コウジ」
「どうした? ライム」
「ミズ、イレモノ、タリナイ、ハタラケ、ボウズ」
「……水筒は竹を加工するんだろ? おにぎりを包む竹の皮作りも併せて、お前の仕事だろ? ライム」
「……ソウダッタ ワスレンボダナ オマエ」
「忘れん坊はお前だろうが!」
なんか……口が悪くなってきてる。
誰のせいだ?
俺じゃないと思うが。
しかも声色がテンちゃんに似てきた。
ちょっと嫌すぎる。
「ノミモノ、カズイイカ? タリナイカ?」
「えーっと……おにぎりのセットがこんだけだから……。うん、問題ない。竹の皮も十分だ。あまりありすぎると品質に問題が出るかもしれないしな」
「ソウカ アタシノ オシッコ マニアッタカ」
「ちょっと待て!」
おしっこじゃなくて、お前の体を漏斗みたいに通してろ過したり栄養分加えたりしてるんだろ!
おしっこと違うだろ!
あれは排泄物だからな!
間違うな!
まったく……頭痛の種が増えてしまいそうだ。
「口が悪いの、アラタのせいだね」
「何で俺だよ!」
「だって、ダンジョンとフィールドに来る冒険者達にそんな感じで言ってるじゃない」
「あぁ? 言ってねぇよ」
「男女関係なく、みんなに坊主坊主って言ってるし、トイレのこともおしっことかうんちとか毎度毎度平気で言うし」
分かりやすく言っただけだろうよ!
学力がどんくらいか分かんねぇやつもいるしよ!
「川でされちゃ、飲用水とかに使えなくなっちゃうだろ! 監視をマッキーにしたのもそういうことがあるからだよ!」
自然に悪影響を及ぼしそうな予感は百パーセント当たるんだそうだ。
そういう意味でも俺の勘が得た人選は正しいと言える。
もちろん森に生息している生き物に、むやみやたらに接近させない役目もさせている。
はぐれた魔獣で、そんなに強くない物なら仕留めさせてるようだ。
魔獣も自然の中では弱肉強食の世界。
行動範囲から外れた弱そうな魔獣は、その生息圏に無理やり戻しても他種族のエサになるだけだ。
その違いは、他の魔獣に食われるか、未熟な冒険者の狩猟の鍛錬の的となり糧となるかくらい。
「あたしは……別に食べなくてもいいけどね。食用の草木でしのげるし」
「木を食うのか。お前、虫か?」
「だぁれが虫だ! あたしの矢に刺されたいか?! 食べ物っつったら木の実だ木の実!」
木の実を食う虫もいるが?
まぁいいけど。
つか、矢じりをこっちに向けるんじゃないっ!
刺さったら死ぬから。
もしくは死ぬと思うくらい痛がるから。
俺、一応一般人だからっ!
「遊んでないで仕事してよアラタ。収入不足で人を雇えないけど、増やしたいくらいには忙しいんだからね?」
「へいへい。ほら、坊主ども、今日はもう活動終わりだろ? 自分の名前の横に、もう一回名前書けな」
「ヨルハ オネショ スンナヨー」
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