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三波新、定住編
おにぎりの店の日々 その3
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俺は主に米の選別とおにぎり作り。
最近はヨウミも作れるようになったので大分負担は軽くなった。
が、ヨウミの仕事は主に会計と接客。
だから俺は、相変わらず表に出ない。
ということは、どんな奴が客としてやって来るのかは分からない。
おそらく、今ドーセンの宿屋に入ってきた連中も俺の店の客だろう。
「ドーセンさーん。アイテム鑑定できるー?」
「あいよ。毎度お疲れ、マッキー。……最近は質の高いモン持ってくるようになったな」
その集団の最後に入ってきたのはマッキー。
魔物討伐後や探索時に得たアイテムを拾い集め、それを鑑定してもらうために来たんだろう。
「ライムが汚れを落としてくれるからねー」
ライムは、体を洗う風呂代わりになってくれたこともあった。
体の汚れを落とせるんなら、拾ったアイテムも綺麗にできるんじゃね?
ということで、おにぎりを買った連中には、ダンジョンから出た時に結果報告も兼ねて店に寄らせている。
ライムも水の加工の仕事でいつも店にいることでもあるし、拾ったアイテムがさらに高価なものになるということで、その義務づけは初級冒険者達に好評だ。
ドーセンはドーセンで、サキワ村に来る行商人に、買い取ったアイテムをさらに高く売りつけることができる、ということで、意外にも経済的に宿屋が潤う副収入にもなっている。
じゃあ今までガイダンスしてきたモーナーはどうかというと、ますます張り切っている。
というのも、実は数多く、しかも重い物運びの仕事は意外と少ない。
つまり店にいても、随時仕事があるわけじゃない。
じゃあ何で張り切っているかというと……。
「モーナー。ダンジョンのことなんだが」
「んー? 俺は案内の仕事お、できなくなったんだろお?」
「提案なんだけどさ、さらに下に、奥深く掘ってみないか?」
「できなくはないけどお、何でだあ?」
先の魔物の泉現象がずっと頭に引っかかっていた。
その現象が近くの場所で二回三回と続けて起きたこともあった。
もちろん回数が多くなればなるほど、そのケースは稀なんだが。
で、あの時は確か地下五階まで掘られていた。
仮に地下一階までだった場合、そのダンジョンで泉現象が起きたとしたら、地下一階がその現場になるはずだ。
ということは。
「例えば地下二十階まで掘ったとする。泉現象が現在起きるとしたら、最深部では五階なわけだ」
「そうだなあ。それでえ?」
「地上まで出てくる時間が、地下五階と地下二十階。どっちが時間かかる?」
「そりゃあ二十階だろお? 誰だって分かるぞお」
「長く時間がかかった場合、付近の人達の避難にも時間をかけられる。もちろん二十階まで掘ったけど、地下一階で現象が起きる可能性はある」
「なるほどなあ。その場合はあ、必ず地下一階で起きるとは限らないもんなあ。村人を助けるためになるんだなあ」
「そういうことだ。それと掘ってできた瓦礫は、できれば放置してくれるといいかもな」
「それはなんでだあ?」
「その瓦礫の中に鉱物とかがあるかもしれないからな。初級の冒険者達には、ただの石ころか鉱物かを見極める練習になるんじゃないか?」
こんな俺の提案で、モーナーは掘削作業に再び力を入れることができた。
実際冒険者達が拾ってきた石の中に、レアなアイテムも入ってたりしてたことがあった。
その話を聞いたモーナーは落ち込んでたな。
「俺が捨てた瓦礫の中にい、そんな高価な物があったかもしれない……」
「だぁからオメェはノロマって、散々俺に呼ばれてんだろうよ」
「ノロマと気付くか気付かないかはあ、関係ないぞお」
確かにな。
まぁモーナーとドーセンの掛け合いはともかく。
そのアイテムの価値ってのも、その価値はそこそこって感じだ。
今まではほとんど無価値だったらしい。
それが、初級冒険者達の間で噂になり、功を奏した。
ベテランや、アイテム売買で得た金で生活する者にとっては、その価値は物足りない。
たまにレアな物は出るが滅多に出ない。
だが、なかなか仕事が見つからない初級冒険者達にはとても高価な物とみられるわけだ。
まさに、初級冒険者天国って感じなんだろうな。
高価な回復薬は買えないが、それより効果は低いものの、それ以上に売値が安いおにぎりが売られていればなおのこと。
「アラタ、どうしようか」
「どうした? おやっさん」
「部屋が足りねぇ」
「知らねぇよ。増築したら?」
「むー……」
悩むところじゃないだろうに、と思うが、別のところに問題があるらしい。
そんなにたくさん客が入っても、食事を出せるかどうかが分からないんだと。
「人口増やしたい過疎地で、人口は増えたはいいが、みんな飢えてるってのもなぁ」
「何の話だ? 人口の話じゃないんだが?」
まあそうなんだが。
詳しく聞けば、米はたくさんある、が、米だけたくさんあっても、美味いと言ってくれるめにゅーはできないだろうってことらしい。
好事魔多しっていうが……。
魔って程のトラブルでもないがな。
「あたしのこと、呼んだ?」
馬じゃねぇよ、馬鹿天馬。
最近はヨウミも作れるようになったので大分負担は軽くなった。
が、ヨウミの仕事は主に会計と接客。
だから俺は、相変わらず表に出ない。
ということは、どんな奴が客としてやって来るのかは分からない。
おそらく、今ドーセンの宿屋に入ってきた連中も俺の店の客だろう。
「ドーセンさーん。アイテム鑑定できるー?」
「あいよ。毎度お疲れ、マッキー。……最近は質の高いモン持ってくるようになったな」
その集団の最後に入ってきたのはマッキー。
魔物討伐後や探索時に得たアイテムを拾い集め、それを鑑定してもらうために来たんだろう。
「ライムが汚れを落としてくれるからねー」
ライムは、体を洗う風呂代わりになってくれたこともあった。
体の汚れを落とせるんなら、拾ったアイテムも綺麗にできるんじゃね?
ということで、おにぎりを買った連中には、ダンジョンから出た時に結果報告も兼ねて店に寄らせている。
ライムも水の加工の仕事でいつも店にいることでもあるし、拾ったアイテムがさらに高価なものになるということで、その義務づけは初級冒険者達に好評だ。
ドーセンはドーセンで、サキワ村に来る行商人に、買い取ったアイテムをさらに高く売りつけることができる、ということで、意外にも経済的に宿屋が潤う副収入にもなっている。
じゃあ今までガイダンスしてきたモーナーはどうかというと、ますます張り切っている。
というのも、実は数多く、しかも重い物運びの仕事は意外と少ない。
つまり店にいても、随時仕事があるわけじゃない。
じゃあ何で張り切っているかというと……。
「モーナー。ダンジョンのことなんだが」
「んー? 俺は案内の仕事お、できなくなったんだろお?」
「提案なんだけどさ、さらに下に、奥深く掘ってみないか?」
「できなくはないけどお、何でだあ?」
先の魔物の泉現象がずっと頭に引っかかっていた。
その現象が近くの場所で二回三回と続けて起きたこともあった。
もちろん回数が多くなればなるほど、そのケースは稀なんだが。
で、あの時は確か地下五階まで掘られていた。
仮に地下一階までだった場合、そのダンジョンで泉現象が起きたとしたら、地下一階がその現場になるはずだ。
ということは。
「例えば地下二十階まで掘ったとする。泉現象が現在起きるとしたら、最深部では五階なわけだ」
「そうだなあ。それでえ?」
「地上まで出てくる時間が、地下五階と地下二十階。どっちが時間かかる?」
「そりゃあ二十階だろお? 誰だって分かるぞお」
「長く時間がかかった場合、付近の人達の避難にも時間をかけられる。もちろん二十階まで掘ったけど、地下一階で現象が起きる可能性はある」
「なるほどなあ。その場合はあ、必ず地下一階で起きるとは限らないもんなあ。村人を助けるためになるんだなあ」
「そういうことだ。それと掘ってできた瓦礫は、できれば放置してくれるといいかもな」
「それはなんでだあ?」
「その瓦礫の中に鉱物とかがあるかもしれないからな。初級の冒険者達には、ただの石ころか鉱物かを見極める練習になるんじゃないか?」
こんな俺の提案で、モーナーは掘削作業に再び力を入れることができた。
実際冒険者達が拾ってきた石の中に、レアなアイテムも入ってたりしてたことがあった。
その話を聞いたモーナーは落ち込んでたな。
「俺が捨てた瓦礫の中にい、そんな高価な物があったかもしれない……」
「だぁからオメェはノロマって、散々俺に呼ばれてんだろうよ」
「ノロマと気付くか気付かないかはあ、関係ないぞお」
確かにな。
まぁモーナーとドーセンの掛け合いはともかく。
そのアイテムの価値ってのも、その価値はそこそこって感じだ。
今まではほとんど無価値だったらしい。
それが、初級冒険者達の間で噂になり、功を奏した。
ベテランや、アイテム売買で得た金で生活する者にとっては、その価値は物足りない。
たまにレアな物は出るが滅多に出ない。
だが、なかなか仕事が見つからない初級冒険者達にはとても高価な物とみられるわけだ。
まさに、初級冒険者天国って感じなんだろうな。
高価な回復薬は買えないが、それより効果は低いものの、それ以上に売値が安いおにぎりが売られていればなおのこと。
「アラタ、どうしようか」
「どうした? おやっさん」
「部屋が足りねぇ」
「知らねぇよ。増築したら?」
「むー……」
悩むところじゃないだろうに、と思うが、別のところに問題があるらしい。
そんなにたくさん客が入っても、食事を出せるかどうかが分からないんだと。
「人口増やしたい過疎地で、人口は増えたはいいが、みんな飢えてるってのもなぁ」
「何の話だ? 人口の話じゃないんだが?」
まあそうなんだが。
詳しく聞けば、米はたくさんある、が、米だけたくさんあっても、美味いと言ってくれるめにゅーはできないだろうってことらしい。
好事魔多しっていうが……。
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「あたしのこと、呼んだ?」
馬じゃねぇよ、馬鹿天馬。
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