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四人目の相棒は許嫁

ミュウワって、意外と度胸あるのな

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 慈善事業者になる気はない。
 俺がいなくなった後の屋根裏部屋がどうなろうと知ったこっちゃない。
 が、流石にあれだけ頼りにされるとな。
 誰にでもできる事じゃない事をやり続けてきたこともある。
 鍛錬したわけじゃないから自信とか実感ってのはあまりない。
 けど、多くの冒険者とやらが喜んでくれた現実は無視できない。
 引き継げる者が他にいないからしょうがない。
 けど、自分の身を犠牲にするとか生贄にするとかこの身を捧げるとか、そんな気持ちじゃなく、純粋にこの部屋のことと俺のことを気に掛ける異性がいる。
 けど、それを理由に一緒になるってのは……俺の理由じゃないからその流れに乗ることはできない。
 ましてや子供ができるとなると、一人の命、人生が生まれる。
 それに親としての責任、持てるのか?
 ただでさえ、ここでの握り飯作ることで手一杯だぞ?

「……しょいこんでますね。コウジさんが黙る時って、自分でいろいろ考え込んじゃってるんですよね。それくらいは分かるようになりました」

 ぐうの音も出ない。
 片方が言い返せなくなる会話は、会話として成立しないんだぞ?
 コミュニケーションをそっちから拒否しているも同然だ、うん。

「そうですね……。うん、私はお婆様みたいに後悔しません」
「後悔?」

 考え込んでいるというのは当たってる。
 でもいきなり何の話だ?

「……寿命の長さが違いますよね。おそらく私がコウジさんを看取ることになるかと」
「まぁそうだな……って、妻と子供を遺して死ぬわけにはいかないーっていうセリフは、テレビとかで色々見たことがあるぞ」

 そうだ。
 カウラはまだ健在だ。
 だがその夫である俺の先祖はすでに。

「女手一つでも育てていきますよ、うん」

 俺の思案が会話について行ってないんだが。
 とりあえず、ミュウワ一人で……まぁそっちは大家族だからみんなに養ってもらえるんじゃないかとは思うが……。
 っていう発想は、既に父親としての責任放棄だよな。

「女手一つって、どうやって? お前、ずっと俺の手伝いをしただけだろ」
「……私も冒険者めいたこと、しようと思ってます」

 今まで耳にした連中の話から推測すれば、危険度が高ければ高いほど金目のアイテムが落ちてるってことだ。
 危険度が低くても、それなりのものが落ちてる。
 つまりそこらに金が落ちてるのとおんなじだよな。
 そういう意味では、俺の世界じゃそんなのはとても無理。
 金脈掘り当てるか宝石掘りあてるかくらいしないと生計を立てるのは難しい。
 掘り当てたとしても、権力者に地権を奪われてそれまでだ。

「なんか、情けないような」
「バカ言わないでください! たくさんの人の命を助けたコウジさんのどこが情けないんですか!」

 う……。
 まぁ、そりゃ、なぁ……。

「一日三百は作ってるんですよね? 一年で十万個は超えてますよ? 何年続けましたか? 命を救った延べ人数はそれ以上でしょう。カレーも出したって言う話も聞きましたし。情けなくなんかないですよ。そんな人との子供を宿すって……あ」
「ん?」
「まるで神様の妻になるような感じですねっ!」

 いきなりメルヘンな思考に変わるんじゃねぇよ!
 けど……まぁ俺たちの将来がどうあれ、俺の方が先に寿命が尽きるのは分かり切ってる。
 誰が言った言葉だったかな?
 献身は失敗の理由にはならない、ってな。

「明日からの仕事、空いた時間を見て、ちょっとやってみますね。冒険者稼業みたいなこと」
「……無理すんなよ?」

 まったく……。
 こっちの悩みを放置して、自分はまばゆいばかりの笑顔をこっちに見せてくれる。
 やれやれだな。
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