147 / 196
シルフ族の療法司ショーア
女を泣かせた男 泣きながら「聖女」の称号を捨てたがった女
しおりを挟む
「シュースって人馬族の女の子、いたろ?」
この男戦士、こいつはこいつで何をいきなり言い出すやら。
「あの娘も『フロンティア』に所属してたんだけど、あいつらがそうなる前に脱退してコルトの後を追いかけてったんだと」
何者か知らんが、お前に居座られた俺の気持ちも分っただろうよ、コルト。
「追い返された。当り前だよな。コルトの所属が所属なだけによ。けど、何やら言いつけられたらしくて、しばらくしたら公認の付き人してるらしい。もちろんコルトも納得の上でな」
だから俺が覚えてねぇ奴の話をされてもな。
「そう言えばそんな娘いたっけな。すっかり忘れてた。あの娘もおにぎり食べてたっけな。あの連中は……」
「食べてない。それを知った時、ひょっとしたらコウジのおにぎりって……って思ってな。それで調べてみたんだ」
……そいつはご苦労なこって。
だが俺の記憶にない、ここに来たことのある連中のことも話題に上がってきた。
それで盛り上がっていくと、もうこうなったら俺は蚊帳の外。
おかしいなぁ。
俺はこの部屋の主なのになぁ。
明日の予定を今日に変更するか。
もっともその予定はショーアと俺だけの、激辛カレーの話だが。
何、俺は時々いたたまれない気持ちになる時がある。
だから予定変更の買い出しにはちょうどいい。
「あいつらに総菜屋の握り飯、試しに食わせてみるかな。それで違いがなければ、俺に何かあるってことじゃないからな」
つっても、あいつら全員に握り飯を買う気はない。
これもショーアに実験台になってもらおう。
※※※※※ ※※※※※
で、夜の握り飯の時間が終わったわけだが。
総菜屋の握り飯は明朝食ってもらって、久々に激辛カレーを用意した。
「コウジの彼女だけかぁ」
「激辛は食ったことねぇなぁ」
だから食堂か何かじゃねぇっての。
何度言えば分かるんだこいつらは。
「ここで食っていいよ。俺らは別に気にしねぇから」
お前らは気にしないだろうが、注目されながら食う俺らの立場になれっての。
食レポの番組か何かじゃねぇんだぞ!
「匂いを手掛かりに、国に帰ったら再現してみたいからさ」
匂いだけでできるかよ。
俺だって、原材料から作ってみろって言われたってできねぇのに。
それはともかく、こいつらはショーアに何かを期待してるわけだ。
期待を無視したり裏切る性格じゃないショーア。
「……じゃあこちらで頂きます」
と、流しの横で俺と一緒に晩飯のカレーを食うことになった。
が、辛さのことは伝えていない。
一口目。
カレーを掬ったスプーンを口元に近づけると、そこで一瞬動きが止まった。
きつい匂いで気付いたか?
生唾を飲み込む音が隣にいても聞こえた。
ゆっくりと口を開け、その動きに合わせてスプーンを口の中に入れる。
そのまま少し固まっていたようだが、口を閉じるのは一瞬。
見開いた眼が宙を泳ぐ。
そして無言。
ショーアを見ている彼らも無言。
そんなこいつらを見ながら、ハフハフ言いながらせっせとカレーを口の中に入れる。
時々水を飲まなきゃ食ってられない。
「うぅ……」
ショーアが何かうめいている。
様子を伺うと、彼女が涙をにじませていた。
流石に激辛はやりすぎたかな、と自省していたら、猛烈な速さで食べ始めた。
辛党どころではない。
コルトと気が合うかもしれん。
「……コウジさん……」
皿の上は、まるで舐めて掬い取ったかと思われるほどきれいになっている。
もちろんそんなことはしていない。
すべて、スプーンで掬い取っていた。
「何だよ」
「……私、『聖女』の資格を失ってでも、これを求めます……。お代わりくださいっ!」
「ありません」
「え……」
今回はレトルト二袋しか買ってこなかった。
お代わりは当然ありません。
何か、問題でも?
……いや、こっち向いて恨めしそうに見ながら泣かれても。
「……意地悪……」
おいちょっと待て。
何だよ意地悪って。
サービスだろうが。
……実験でもあったけどさ。
「女を泣かせるって、男としちゃどうかと思うんだよな、俺」
「まったくだ。女を満足させてこそ男ってもんだろうが」
……お前ら……。
お前らはとっとと家に帰れ!
この男戦士、こいつはこいつで何をいきなり言い出すやら。
「あの娘も『フロンティア』に所属してたんだけど、あいつらがそうなる前に脱退してコルトの後を追いかけてったんだと」
何者か知らんが、お前に居座られた俺の気持ちも分っただろうよ、コルト。
「追い返された。当り前だよな。コルトの所属が所属なだけによ。けど、何やら言いつけられたらしくて、しばらくしたら公認の付き人してるらしい。もちろんコルトも納得の上でな」
だから俺が覚えてねぇ奴の話をされてもな。
「そう言えばそんな娘いたっけな。すっかり忘れてた。あの娘もおにぎり食べてたっけな。あの連中は……」
「食べてない。それを知った時、ひょっとしたらコウジのおにぎりって……って思ってな。それで調べてみたんだ」
……そいつはご苦労なこって。
だが俺の記憶にない、ここに来たことのある連中のことも話題に上がってきた。
それで盛り上がっていくと、もうこうなったら俺は蚊帳の外。
おかしいなぁ。
俺はこの部屋の主なのになぁ。
明日の予定を今日に変更するか。
もっともその予定はショーアと俺だけの、激辛カレーの話だが。
何、俺は時々いたたまれない気持ちになる時がある。
だから予定変更の買い出しにはちょうどいい。
「あいつらに総菜屋の握り飯、試しに食わせてみるかな。それで違いがなければ、俺に何かあるってことじゃないからな」
つっても、あいつら全員に握り飯を買う気はない。
これもショーアに実験台になってもらおう。
※※※※※ ※※※※※
で、夜の握り飯の時間が終わったわけだが。
総菜屋の握り飯は明朝食ってもらって、久々に激辛カレーを用意した。
「コウジの彼女だけかぁ」
「激辛は食ったことねぇなぁ」
だから食堂か何かじゃねぇっての。
何度言えば分かるんだこいつらは。
「ここで食っていいよ。俺らは別に気にしねぇから」
お前らは気にしないだろうが、注目されながら食う俺らの立場になれっての。
食レポの番組か何かじゃねぇんだぞ!
「匂いを手掛かりに、国に帰ったら再現してみたいからさ」
匂いだけでできるかよ。
俺だって、原材料から作ってみろって言われたってできねぇのに。
それはともかく、こいつらはショーアに何かを期待してるわけだ。
期待を無視したり裏切る性格じゃないショーア。
「……じゃあこちらで頂きます」
と、流しの横で俺と一緒に晩飯のカレーを食うことになった。
が、辛さのことは伝えていない。
一口目。
カレーを掬ったスプーンを口元に近づけると、そこで一瞬動きが止まった。
きつい匂いで気付いたか?
生唾を飲み込む音が隣にいても聞こえた。
ゆっくりと口を開け、その動きに合わせてスプーンを口の中に入れる。
そのまま少し固まっていたようだが、口を閉じるのは一瞬。
見開いた眼が宙を泳ぐ。
そして無言。
ショーアを見ている彼らも無言。
そんなこいつらを見ながら、ハフハフ言いながらせっせとカレーを口の中に入れる。
時々水を飲まなきゃ食ってられない。
「うぅ……」
ショーアが何かうめいている。
様子を伺うと、彼女が涙をにじませていた。
流石に激辛はやりすぎたかな、と自省していたら、猛烈な速さで食べ始めた。
辛党どころではない。
コルトと気が合うかもしれん。
「……コウジさん……」
皿の上は、まるで舐めて掬い取ったかと思われるほどきれいになっている。
もちろんそんなことはしていない。
すべて、スプーンで掬い取っていた。
「何だよ」
「……私、『聖女』の資格を失ってでも、これを求めます……。お代わりくださいっ!」
「ありません」
「え……」
今回はレトルト二袋しか買ってこなかった。
お代わりは当然ありません。
何か、問題でも?
……いや、こっち向いて恨めしそうに見ながら泣かれても。
「……意地悪……」
おいちょっと待て。
何だよ意地悪って。
サービスだろうが。
……実験でもあったけどさ。
「女を泣かせるって、男としちゃどうかと思うんだよな、俺」
「まったくだ。女を満足させてこそ男ってもんだろうが」
……お前ら……。
お前らはとっとと家に帰れ!
0
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?
不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ
ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。
賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!?
フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。
タイトル変えました。
旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~
※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。
あまりシリアスにするつもりもありません。
またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。
感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。
想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。
※カクヨムさんでも連載はじめました。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる