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未熟な冒険者のコルト
泣きじゃくった後で知ったこと
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「おじ……お兄さん、さみしくないの?」
「よしよし、いいぞ。お兄さんだからな?」
「コウジさん……」
コルトが嘆いている。
いや、意外とそういうことは重要な部分だぞ?
しかも相手は子供だ。今のうちに修正しとかないと、後々大人になって辛い目に遭うことも……。
いや、それはともかく。
「コホン……。まあ寂しいってば寂しいかな。祖母ちゃんは五年くらい前。祖父ちゃんはその三年くらい前に死んじゃった。兄弟もいない。俺はここで一人暮らしだ」
親戚はかなり多くいるけどな。
って、急にお前ら泣き止むなよ。割と不気味だぞ?
しかも何で俺を憐みの目で見てるんだよ。
そんな目で見るなぁッ、なんてことは言わんけどさ。
「さみしいのに、どうしてそんなに元気なの?」
「今言っただろ。五年も前の話だぞ? いつまでも寂しがっててもしょうがないしな」
今更そんな昔……まぁ昔というほどでもないかもしれんが、昔の話を蒸し返しても、特に面白い話でもなし。
「そりゃ父ちゃん母ちゃんが死んだときは泣いたさ。俺もずっと入院してたけど、そのうちの最初の三日はずっと泣き通しだった」
親父とお袋のことを父ちゃん母ちゃんなんて言うのも随分久しぶりだ。
目の前の子供らにゃそんな言い方の方が聞きやすかろ?
って、子供らは互いに見合わせてる。
俺の話はもういいのか?
「それで? その後どうなったの?」
なんでコルトが食いつくんだ。
「それでな、気付いたんだよ」
「何に?」
こいつらも気付くよ。間違いなく。
自分で気付くのが一番いいんだろうけど、ま、こういう話をするのも大人の役目だ。
いや、お兄さんの役目だ。
「甘えさせてもらえる父さん母さんがいなくなった。いつも守ってくれる父さん母さんがいなくなった。ショックで食欲も失った。でも腹は鳴るんだよな」
四人の子供達の視線は俺の方に釘付けだ。
女魔導師も他の冒険者達も俺の方を見てる。
何か演説してるみたいで、だんだん俺が落ち着かなくなりそうだ。
そんな大仰な話じゃねぇよ。
「おまけにおしっこもうんちもがまんできなくなる。物を食えなくなったからうんちの方は出なくなったが、おしっこは出るもんでな」
子供らはぷっと噴き出した。
笑う元気が出てくりゃ問題ないだろうが。
「いくら泣いても、しなきゃならないことはしなきゃならない。変わらない事実は変わらない。どんだけ泣き叫んでも父さんも母さんも戻ってこない」
また泣きそうになってる。
泣きたきゃ泣いても構わない年頃……いや、大人だって、泣いていい時だってある。
「父さん母さんにいろんなことをしてもらった。手伝ってもらった。そんな人達がいなくなったら、自分で手助けなしでやるしかない。もっとも祖父ちゃん祖母ちゃんは元気だったから、その二人には甘えさせてもらったけどな」
でも親父お袋と同じように手伝ってくれるわけでもなし、同じように俺の代わりにやってくれるとは限らなかったし。
「だから、泣くだけの毎日じゃどこにも進めない。自分一人で出来ることが全く増えない。そして自分から動きださなきゃ物事を進めることができないってことを実感した」
分かってくれるかなぁ、この感覚。
ここで泣きじゃくってれば、慰めてくれる人はたくさん現れる。
けど慰めてもらっても、お前らはここから家に帰ることすらできないんだよな。
「それと、死んでしまった者が戻ってくることもない。泣いてばかりじゃ力も湧き出ることもない。その現実を……受け止めないと先に進めないこともな」
四人とも、うつむいてしまった。
酷なことを言っちまったか?
けどな。
「すぐに立ち上がれ、なんて言わない。いつかは立ち上がることはできるはずだ。だって四人一緒だもんな。お前ら、友達だろ?」
「「「「うんっ!」」」」
いい反応と返事するじゃねぇか。
すぐ顔をあげて、力の入った声と頷き方しやがる。
「ここには好きなだけいられる。俺の許可を得る必要もないし、帰る時も声をかける必要もない。元気が出たら、元気よく帰るべきところに帰ればいい。俺からは、そのくらいのことしか言えない。じゃあな」
洗い物が残ってるんだ。こいつらが寝るまで相手してやるわけにはいかないんでな。
「「「「ありがとうございましたっ!」」」」
久々に、見てて気持ちいい連中を見た。
微笑ましいな。
今は辛かろうが、頑張れよ?
「よしよし、いいぞ。お兄さんだからな?」
「コウジさん……」
コルトが嘆いている。
いや、意外とそういうことは重要な部分だぞ?
しかも相手は子供だ。今のうちに修正しとかないと、後々大人になって辛い目に遭うことも……。
いや、それはともかく。
「コホン……。まあ寂しいってば寂しいかな。祖母ちゃんは五年くらい前。祖父ちゃんはその三年くらい前に死んじゃった。兄弟もいない。俺はここで一人暮らしだ」
親戚はかなり多くいるけどな。
って、急にお前ら泣き止むなよ。割と不気味だぞ?
しかも何で俺を憐みの目で見てるんだよ。
そんな目で見るなぁッ、なんてことは言わんけどさ。
「さみしいのに、どうしてそんなに元気なの?」
「今言っただろ。五年も前の話だぞ? いつまでも寂しがっててもしょうがないしな」
今更そんな昔……まぁ昔というほどでもないかもしれんが、昔の話を蒸し返しても、特に面白い話でもなし。
「そりゃ父ちゃん母ちゃんが死んだときは泣いたさ。俺もずっと入院してたけど、そのうちの最初の三日はずっと泣き通しだった」
親父とお袋のことを父ちゃん母ちゃんなんて言うのも随分久しぶりだ。
目の前の子供らにゃそんな言い方の方が聞きやすかろ?
って、子供らは互いに見合わせてる。
俺の話はもういいのか?
「それで? その後どうなったの?」
なんでコルトが食いつくんだ。
「それでな、気付いたんだよ」
「何に?」
こいつらも気付くよ。間違いなく。
自分で気付くのが一番いいんだろうけど、ま、こういう話をするのも大人の役目だ。
いや、お兄さんの役目だ。
「甘えさせてもらえる父さん母さんがいなくなった。いつも守ってくれる父さん母さんがいなくなった。ショックで食欲も失った。でも腹は鳴るんだよな」
四人の子供達の視線は俺の方に釘付けだ。
女魔導師も他の冒険者達も俺の方を見てる。
何か演説してるみたいで、だんだん俺が落ち着かなくなりそうだ。
そんな大仰な話じゃねぇよ。
「おまけにおしっこもうんちもがまんできなくなる。物を食えなくなったからうんちの方は出なくなったが、おしっこは出るもんでな」
子供らはぷっと噴き出した。
笑う元気が出てくりゃ問題ないだろうが。
「いくら泣いても、しなきゃならないことはしなきゃならない。変わらない事実は変わらない。どんだけ泣き叫んでも父さんも母さんも戻ってこない」
また泣きそうになってる。
泣きたきゃ泣いても構わない年頃……いや、大人だって、泣いていい時だってある。
「父さん母さんにいろんなことをしてもらった。手伝ってもらった。そんな人達がいなくなったら、自分で手助けなしでやるしかない。もっとも祖父ちゃん祖母ちゃんは元気だったから、その二人には甘えさせてもらったけどな」
でも親父お袋と同じように手伝ってくれるわけでもなし、同じように俺の代わりにやってくれるとは限らなかったし。
「だから、泣くだけの毎日じゃどこにも進めない。自分一人で出来ることが全く増えない。そして自分から動きださなきゃ物事を進めることができないってことを実感した」
分かってくれるかなぁ、この感覚。
ここで泣きじゃくってれば、慰めてくれる人はたくさん現れる。
けど慰めてもらっても、お前らはここから家に帰ることすらできないんだよな。
「それと、死んでしまった者が戻ってくることもない。泣いてばかりじゃ力も湧き出ることもない。その現実を……受け止めないと先に進めないこともな」
四人とも、うつむいてしまった。
酷なことを言っちまったか?
けどな。
「すぐに立ち上がれ、なんて言わない。いつかは立ち上がることはできるはずだ。だって四人一緒だもんな。お前ら、友達だろ?」
「「「「うんっ!」」」」
いい反応と返事するじゃねぇか。
すぐ顔をあげて、力の入った声と頷き方しやがる。
「ここには好きなだけいられる。俺の許可を得る必要もないし、帰る時も声をかける必要もない。元気が出たら、元気よく帰るべきところに帰ればいい。俺からは、そのくらいのことしか言えない。じゃあな」
洗い物が残ってるんだ。こいつらが寝るまで相手してやるわけにはいかないんでな。
「「「「ありがとうございましたっ!」」」」
久々に、見てて気持ちいい連中を見た。
微笑ましいな。
今は辛かろうが、頑張れよ?
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