上 下
28 / 196
未熟な冒険者のコルト

更なる儲けを狙った販売戦略

しおりを挟む
 こんなことで、コルトにまた防具作りを頼んで五日後。
 女性用の防具一式を二組作ってもらった。
 前回と同じく革製品のような、胸部、腰部。そして両手足の四か所の防具。

 まあ俺も性別は男だから、胸部のふくらみにはドキッとさせられる。
 しかし、である。

「で、こういう風につけて……」

 とレクチャーするコルトが胸部の防具をつける。
 真っ先に俺の頭の中に浮かんだのは

「上げ底」

 の一言。

 動画を載せたらどんなコメントが来るか、大体想像できる。
 二つの派閥の論争がまず始まるだろうな。
 そしてもう一組の防具のモデルについては、俺はうざったいほど迫って来る女魔術師に根負けした。

「そうまでしてうどん食いたいのか」
「休む以外は退屈だしねー」

 他の女性冒険者達がこいつを羨ましそうに睨んでいる。
 今ここに居る女性冒険者達は、おそらくみんなここには初めて来たんだろう。
 俺に対してこんなに近づく女性冒険者はこいつだけ。
 ここに来るのは三回目か四回目くらいか。
 馴れ馴れしくもなるんだろうな。

 二人一緒に動画を撮る分手間が省けるということと、うざったい奴から早く解放されたいということで俺の方が折れた。

「職種は違うけど、特別な加工はされてないし、身につけるだけだからね」

 自分で繕ったんだろう。
 女魔術師はつぎはぎだらけのマントとその職用の衣装を周りの目を気にせずに脱ぐ。

「あのな、デリカシーってもんをな」
「着替える場所なんてないじゃない。コルトちゃんはコウジに専用のスペース作ってもらったようだけど、流石に私がそこも利用させてもらうわけにはいかないでしょ」
「そ、そんなこと……ないですけど……」

 この魔術師、女、捨ててるだろ。
 けどその体型は見事なもんで、コルトの体型の残念さが浮き彫りにさせられている。

「あら? サイズが小さいわね」

 うるせぇ。
 お前に合わせて作ったんじゃなく、その防具の販売価格をあげるためのプロモーションのための撮影だ。
 とっとと終わらすぞ。

 そりゃ異性の体に興味がないわけじゃないが、異世界に住む存在が相手なら、同じ人間体でもどんな仕掛けがあるか分からん。

「……うらまやしいです」

 魔術師の、肌の露出が多くなった体を見て、いきなり何を言い出してんだ、コルトは。
 そいつが付けた胸部の防具が体から浮いてる感じになってんだが……胸を覆うというより、下着を覆ってる感じだな。
 まぁいいや。

「んじゃ改めて防具のつけ方と外し方を見せたいから。言っとくがお前らの体がメインじゃねぇからな?」
「コウジのえっちぃ」
「やかましい!」

 コルトはともかく、この部屋から去ったらもう来ないかもしれない奴に一々構ってられるか。
 それと、欲望に身を任せたような、前回の動画のコメントにもなっ。
 もっとアップにしてくれ、などと言うコメントにも付き合ってられん。
 こっちは販売中心なんだ!
 っていうか、店の死活問題にも響く。
 己の欲望に振り回されてる場合ではないっ。

「よし、こんなもんだな。服、着ていいぞ」

「あ……はい……」

 コルトは元気がないな。
 うどんは生卵に天ぷらも入れてやるか。

「……コウジさん、興味ないの?」
「何がだよ」

 女魔術師はなんかつまんなそうに着替えている。
 こっちの知ったこっちゃない。
 うどんくらいは作ってやるがな。

 前回と同じように、コルトの説明も入れながらの撮影だったから、編集作業も特に必要なさそうだ。
 サイトにあげて、そしていつもの握り飯作り。
 夜の握り飯タイムが終わった後には購入者は決まってるだろう。
 俺の所持金だけで俺の計画を立てられれば、コルトも俺も負担がかなり減ることになる。
 けどまだまだ期間はかかりそうだな。

 ※※※※※ ※※※※※

 夜の握り飯タイムがやってきた。
 この時間は週に一度のうどんタイムでもある。
 が、いつものうどんタイムに、日中の約束通り、女魔術師も混ざる。

「あ、テンプラ、でしたっけ? も入ってるー。卵もだー」

 コルトは子供のようにはしゃいでる。
 天ぷらうどんを出したこともあるが、こんな風には喜んでなかった。
 卵があってこそか。

「おい、お前」
「女性に向かってお前って言い方はないんじゃない?」
「だって俺、お前の名前知らねぇもん」

 女魔術師は呆れた顔を俺に向けた。

「私は……」
「一々一人一人に合わせて作るのも面倒だから、天たまうどんにしたから。好みに合わなきゃコルトに食わせて、握り飯に切り替えろ。それとお前におかわりはないから。コルトにはあるけど」
「コウジさん、あなたねぇ……」

 コルトは戸惑っている。
 こいつに比べて優遇されてると思ってるんだろう。
 けどそれは、俺にとっちゃ当たり前。
 ずっとここにいる。そして働かせてください。
 俺にそう言って、俺はそれを受け入れた以上この待遇の差は当然だ。

「食うんならとっとと食え。いただきまーす」
「「いただきます……」」

 と、挨拶をした直後から、俺はスマホを取り出して、防具が売れたかどうかを見てみる。

「食事しながら何かを見るとか読むとかは行儀悪いですよ?」

 異世界でも行儀の良し悪しはあるのか。
 けど売れ行きが気になってしょうがない。
 握り飯を作ってる間は、数が多いから目を離すわけにはいかなかったからな。

 ……って……俺の目がおかしいわけじゃないよな。

 前回売れた値段の二倍弱の値段で売れた。
 けどこれは……。

 文字が読めないなら見せてもいいが、見せても意味が分からないから意味がない。
 読めるのなら、二人には見せられない。

 コメントには、俺の想像通りのことが目いっぱい書かれてた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...