4 / 6
蝶
しおりを挟むSさんのおかげで、店舗のNo. 1になることができたのは、入店から2年目が過ぎた頃だった。Sさんがお金を使って、なんでもない日に2000万円使ってくれたことがあった。その事が、一気に拡散されて、私は店の頂点へと、いや歌舞伎町の頂点へと上り詰めた。
それ以降、Sさん以外にもお金を使ってくれる人が一気に増えた。
高卒の底辺だった私が、人生逆転を決めた瞬間だった。
たくさんお金を稼いでは、全て使い果たす日々を過ごした。
まず、食べるものが変わった。それから、顔を変えた。
あっという間に、20歳を過ぎた私は、日々お酒を飲み続け体調は悪化していた。その代わり、体調の悪化に比例する様に、売上は伸び続けていた。
伸びたのは売上だけではなく、店舗内での地位もどんどん上がっていった。
本当のバースデーじゃないけど、適当に2月14日が誕生日って設定にしていた。この日付は私が決めたものだった。なんとなく、だけど。
誕生日とバレンタインイベントが被る。
イベントは、だからね、誕生日にはよくシャンパンタワーを二つ建ててもらった。
私はナンバーワンだったから誕生日イベントは、1日では終わらず3日間続くこともあった。
3日、私のためだけの総額一億円以上のシャンパンタワーが店の中に立ち並んだ。
シャンパンタワーってね。専門の業者が設置してくれるの。
私は、シャンパンタワーをしてもらう優越感に浸るのがあまりにも好きすぎて、業者の人たちがせっせと私の背よりずっと高いシャンパンタワーを設置する様子をよく眺めてた。
不思議な感覚だった。
こんなに私の誕生日を祝うためにお金を出してくれる人がいるなんて。
両親は、家に居付かない人達だった。兄弟もいなかった。友達はいたけれど…
私は、ナンバーに入り始めた頃から、憧れだったこの店のオーナー、つまり私がキャバ嬢を志す事のキッカケとなったインフルエンサーの女性と話す機会も多くなっていた。最近では、店舗内の週一の会議にも出席する事が多いので、少なくとも週一でそのインフルエンサーに会って話をしていた。
いくら、No. 1になったからと言って私ではまだ程遠い存在だった。彼女は、一店舗のNo. 1ではない。
彼女は、もっと上の存在。日本中、何万人もいるであろうキャバ嬢のトップなのだから。
私の様にたかが30人の女の子の中のトップとは桁があまりにも違いすぎる。
それに、彼女は元々商社を経営する父親の元に生まれた根っからのお嬢様。東京の郊外より更に外れた田舎の小さな市で生まれ育ち、高校まで暮らしていた様な私とは全く別次元の人間だったんだ。本当に、纏っているオーラが私とは別格なのだから仕方がないかもしれない。
私の仕事は、彼女の手足となりお金を稼ぐことだった。
だんだんそのことに気が付き始めたのはNo.1を取るようになってからだった。入店から長い時間が経っていた。
ある日、Sさんに言われた。
「茉莉奈ちゃんは、旬が終わったね。」
まだ、店のナンバーワンの座についている頃だった。
そこから私の人生は、再び逆転し始める。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
愛を知ってしまった君は
梅雨の人
恋愛
愛妻家で有名な夫ノアが、夫婦の寝室で妻の親友カミラと交わっているのを目の当たりにした妻ルビー。
実家に戻ったルビーはノアに離縁を迫る。
離縁をどうにか回避したいノアは、ある誓約書にサインすることに。
妻を誰よりも愛している夫ノアと愛を教えてほしいという妻ルビー。
二人の行きつく先はーーーー。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる