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しおりを挟む俺は、香川という子分みたいなのを連れて歩いていた。
ヤクの取引に行くのだ。
俺たちが受け取って、うちの組の担当者に渡す。要は、トカゲの尻尾ってところか。何かあったら、俺たちは切られて捨てられるだけの存在。
一応、取引の情報は警察にも流している。
だが、今回は小さな取引だから、目を瞑るらしい。
今までにも、何度もヤク取引の情報を流してきたが、まともに対処してくれた事はない。
俺の事を信用していないのだろうか?
それとももう、見捨てられるのか…
そんな事どうでもよかった。
もう、このままヤクザとして死んでいくのかもしれない、そう諦めもできていた。
メンタルなんかボロボロだった。
だから、アンに酷い事をしてストレスを発散している。
アンのことは、大切にしたいのに。大切にできずにいる。
取引は簡単だった。
おそらく日本人ではない、アジア系の外国人風の182cmの俺よりも少しでかい男から鍵を受け取り、倉庫に入った5キロほどの覚醒剤を持って帰った。
こんな単純な手口なのに、なぜこいつらは未だに逮捕されていないのか意味がわからなかった。バックに警察のお偉いさんとか政治家なんかがついているのかもしれない。
昨日からずっとヤクの仕事ばっかりやっている。
せめて、アン顔を見るだけでもいいから会いたい。なんなら、遠目に見るだけで構わないから…
そんな願いは叶わず、取引の後は、香川と共に俺はそのまま若頭の警護につくことになった。
警護と言っても、俺たちは、若頭が仕事をするビルの隣のアパートの空室からその様子を見守るだけ。
警護を始めてから2時間ほどがたった。
いつのまにか夜は明けていて、気がつくと朝8時になっていた。
香川は、「美味い飯とエロ本でも買ってきます!」といってコンビニに買い物に行った。あいつは、優柔不断だから徒歩2分のコンビニ行って帰ってくるのに30分はかかるだろう。せめて馬鹿でもいいからの話し相手がいないと、つまらない…
ヤクの取引なんかも重なっていたからもうまともに4日程寝れていなかった。
暇だから、本業用のスマホの写真ホルダーを見ていた。
アンの写真が一枚だけ有る。
穏やかな寝顔。本当に可愛い顔をしている。
今すぐ会いたい…
眺めていると勃起してきた。
誰もいないし、もし見られるとしたら香川にだろう。それなら構わないからと、1人で自分自身をシゴキ始めた。
アンの手に触られる、あの感覚を思い出しながらシゴく。
「…アン」
名前を呼んでみるが、もちろん返事はない。虚しい気持ちに苛まれる。
アンは、俺の事をどう思っているのだろうか?
こんな俺の事、少しでも気にかけてくれてはいないだろうか?俺の事、少しくらいは好きになってくれないだろうか?
まるで童貞の男子高校生みたいな思考だな、と思った。
俺は、今までこんなピュアな気持ちになったことがなかった。
恋愛したことがないわけじゃない。高校から警察になってからも何人の女とやったかわからない。
やるだけの女もいたし、本気で好きになった女もいた。でも、こんなに必死になった事はない。仕事よりも女のことを大切に思う事は初めてだった。今までは、仕事人間だったのに。
潜入捜査で疲弊しているのかもしれない。
それとも歳をとったからか。
様々な思いが渦巻く中でも、欲望を抑える事はできず、右手で竿を慰め、左手にスマホでアンを眺めていた。
こんな強面で大柄の40手前の男が、恋をして1人虚しく自分自身を慰めていると思うと気持ち悪いとアンに思われないだろうか…?
でも、もう我慢できないんだ。
アンに会いたい…
気づくと、俺は右手の中に白濁した液体を出して果てていた。
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