短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

いつもの

　いつものことなんだけど。


　僕が、一人暮らしのアパートに帰ると誰かいる。


　誰かって、誰だよって感じだよね。

　そんなこと言われたってわからない。

　だって、「誰か」なんだもの。



　姿形が見えるわけではない。

　ただ、物音と気配がする。

　物音ってなんだよって感じだよね。
　これは明確に説明できる。

　例えば、シャワーの音。
　冷蔵庫を開け閉めする音。

　実際に、シャワーが出たり、冷蔵庫が開閉されているわけではない。

　でも、音と気配でわかるんだ。

　僕とは別の誰かが、この部屋で生活してるって。


　でも、僕が帰ってしばらくすると、その気配はどこかへ消えてしまう。

　多分、家主の僕が帰ってきたから。
　それ以上のことはわからない。

　その気配が、幽霊なのかそれとも生き霊なのか、科学的な何かの現象なのか。


　最初は怖かったけれど、今は怖くない。


　だって、いつものことだから。