短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

紫陽花の色

　小学校の頃、体育館裏の人数だけポツリと埋められた紫陽花の茎を切ると赤い血が滲み出てくるって学校の七不思議があった。

　なんでも、戦争の時に亡くなった子供の遺体がその紫陽花の下に埋まっているそうだ。

　確かに、他の紫陽花は青とか紫色にも関わらず、その紫陽花だけはまるで紫陽花ではなくって、チューリップのような、濃い赤の花を、毎年梅雨に入ると咲かせていた。
　そのことから、おかしな噂がたったのだろう。

　ちなみに実際に、茎を切ったことがある人を私は知らない。
　皆、紫陽花を恐れていたし、体育館裏には当時、古井戸の跡の穴が空いていて、危ないとのことで、立ち入り禁止だったので、そもそも体育館裏にいくことができなかった。


　私はそう言う噂を信じないので、当時は全く気にしていなかった。あまりにも典型的な怖い話って感じだから、つまらないと思っていたのだ。でも、梅雨に体育館の窓から真っ赤な紫陽花の花が咲いているのを見ると君が悪かった。


　


　あれから、30年近い月日が経った。
　地元で、小学校の教員になっていた私は、母校に偶然赴任してきた。いまだに、紫陽花の噂は健在だった。
　
　
　

　私は相変わらず、その噂のことは一切信じていなかった。

　けれど、ちょうど赴任した年に、体育館が建て替えになった。

　私が、小学生だった頃は新築で、体育館は当時のままだったから、古くなって建て替えになったということらしい。

　体育館を建て替えるにあたって、体育館の周辺の植物は撤去されて、校舎から体育館へとつながる渡り廊下なんかも撤去して新しくなるとのことだった。

　5月に入ると、あっという間に体育館の周りに植えられていた、紫陽花とイチョウ、桜の木は全て切り倒されたり、根っこから引っこ抜かれてしまった。

　そこで、問題が起こった。


　噂の紫陽花の深く張った根っこの真下から、根っこと一緒に骨が出てきた、というのだ。
　それは、土曜だったが私は出勤していたので、木を引っこ抜きにきていた業者から、骨が出たという報告を受けて、その場にいた教員全員で急いで様子を見に行った。
　例えば、どこの骨かも分からないようなものであればよかったのだが、文系の私でも一目で人間の子供の頭蓋骨だとわかる物が、抜いた紫陽花の株と一緒にブルーシートの上に置かれていた。

　
　教員も業者も慌てふためいたが、ひとまず警察を呼ばない事にはどうしようもないということで、警察を呼んだ。
　その日は、警察はくるし、田舎なのに地元テレビ局が取材に来たりで大変だった。


　もちろん、頭蓋骨は色々と調べられた。

　結果から言うと、300年以上前の頭蓋骨であるので、事件性は無い、と言う結果で終わった。

　時代は合っていなかったが、あの噂が本当になってしまったことにゾッとした。