短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

母のストーカー

　私の母親はいわゆる未婚の母で、20のときに未婚のまま私を産みました。
私の父親は、かなり酒癖が悪い人で暴力が激しかったので、私を身籠ったときに母はその父親から逃げてきたらしいのです。



　母は、私が小学校に上がる前くらいからスーパーでパートを始めました。
　
　最初は、私が小学2年生の時の10月でした。
　運動会の翌々日に登校すると、友達から「私ちゃんのお父さんが運動会の時に飴くれたよ。ありがとう」って言われたんです。
　いやいや私、お父さんいないよって思った私はその旨を友達に伝えました。私のお父さんじゃないってはっきり伝えたんです。
　でも、友達は「絶対に私ちゃんのお父さんって言われたもん！」と、間違いないと、言い張るんです。それで、子供って融通が効かないので結局その子とちょっとした喧嘩になっちゃったんです。

　それから、似たような事が度々起こります。

　小学校の行事の度に、私ちゃんのお父さんに会ったよ、とか、私ちゃんのお父さんにお菓子もらったよ、なんて言われるようになったんです。
　でも、もちろん私にはお父さんはいなかったんです。
　だからその度に、おかしいなと思って母親に尋ねたんです。「うちってさぁ、お父さんいないよね?」って。母は、「ごめんね。お父さんいないよ。」と暗い顔をして、毎回答えていました。

　そして、この気味悪いお父さんの正体が明らかになる日が来たのでした。

　それは、小学校6年生の2学期でした。

　ある日、母が仕事でいないので、いわゆる鍵っ子だった私が学校から帰ると、家の鍵が空いていたんです。

　母が締めるのを忘れたのかな、ぐらいにしか考えず私はそのまま部屋に入りました。本家のアパートだったので、玄関を開けるとすぐキッチンがあるんです。私が玄関の扉を開けた瞬間、物が散乱しているのが目に入りました。
　私は、泥棒だと思って焦って近所の友達のおうちに駆け込みました。
　友達のお母さんが、すぐに家に警察を呼んでくれました。
　すると、押し入れの中で母親のパート先の店長が隠れているのが発見されました。

　話によると、その店長はもう何年も前から母のストーカーをしていたらしいのです。
　私は、全く知りませんでしたが、母はたびたび付きまとわれたり、大量のメールや電話がかかったりしてきたりしていたそうです。ちなみに、我が家に不法侵入してきた理由は、母と結婚できる気がしたから、だそうです。

　そして、1番気持ち悪くて意味がわからなかったのは、私の学校の行事に訪れては、私の学年の子達に「私ちゃんのお父さんだよ」と名乗っていた事です。

　以上がうちの母親につきまとっていたストーカーの話です。