上 下
22 / 22
INSIDE

エピローグという名の蛇足

しおりを挟む


「ほんと、ろくでなしな馬鹿な男だよなぁ」

 ぱちりと目を開けて、トールはため息をついた。
 ろくでもないものを見せられて吐き気を覚えつつため息をつくと、腕の中の存在が「ん」と声をあげてすり寄ってくる。

 腕の中で安らかに眠るのは、17歳となり、今日トラヴィスの妻となったフェリコットだ。
 初夜を迎え、たっぷりと愛し合った余韻に浸りながら、トールはすり寄ってきたフェリコットを抱きしめなおす。
 素肌の触れ合いが気持ちよくて、フェリコットの甘い香りが鼻孔をくすぐった。
 極上の幸せというのはこういう事を言うのだろう。

 だからこそ、ろくでもない夢を見せられたことがどうにも腹立たしい。
 もう何度も見たのだから、今日くらい自重して欲しいものだと、トールは憤慨する。

 16歳で透流の記憶を取り戻し19歳となる今まで、トールは少しずつであったがトラヴィスが犯した四度の愚行を思い出していた。

 一度目は糞餓鬼の拗らせ、
 二度目は論外
 三度目はに翻弄されてる分、情状酌量の余地がありそうだが、女性の扱い方を決定的に間違えてる段階で「死ね」と吐き捨てた。
 四度目に至っては、「今までの自業自得だろ?」と馬鹿にしてやりたくなる有様だ。

 どんなに改心しても性根が腐っているならどうしようもない。
 トラヴィス・リオブライド・ランフォールドはそう言うタイプの人間だったと、トールは考える。

 ないものねだりをして、駄々をこねてはフェリコットに八つ当たりした糞餓鬼。
 なくなって初めて気がついて、後悔して、取り戻そうと願う浅ましさで、本当に大切なものを傷つけ続けていた、愚かな愚かな糞餓鬼王子様。
 そうして結局、諦めてはに丸投げしたのだから救いようがない。

(まぁ、そのおかげで俺はフェリに逢えたんだけどな)

 そう思いを馳せるトールは目元を綻ばせると、眠るフェリコットの頬を撫でてから、そっとベッドを抜け出した。
 一糸まとわぬ姿であったので、一応というようにガウンだけを羽織り、気配に導かれてベランダへと静かに足を運ぶ。

。新婚の初夜を邪魔したことは怒んないから出てきてよ」

 そう声をかけるとどこからともなく、くすくすと言う笑い声が聞こえた。

「あーあ、失敗しちゃった。もったいぶらないで、適当に妥協しておけばよかったなー」

 鈴のなるような声だった。
 柔らかな青い髪に、真白の瞳をしたフェリコットと同世代位の少女が、揺らぐ霧のように姿を現す。

 悪意も、善意もない、ただそこにいるだけのような少女だった。
 無垢と言うのが一番近いのかもしれない。
 透流としての経験上、こういう手合いが一番ヤバい。

 それで臆することなく、トールは少女と対峙する。

「こんばんは、黒幕さん。それともリエラヴィアって呼んだ方がいい?」

「まぁ、それも本名じゃないんでしょうけど」と付け足せば、少女は意表を突かれたような顔をして、それから大層おかしいとでも言うように笑いだした。

「あはは、いつからそんなに聡くなったの、トラヴィス。
 あぁ、違うわね、あなたトラヴィスじゃないもの」

「ねぇ、いつ気がついたの? 異界の子」と、少女が尋ねると、トールは深呼吸した。

「糞餓鬼の最初の記憶を思い出してから割とすぐ。
 いくら俺が、愚かだからって、女嫌いのトラヴィスが平民あがりの無礼な女に心開くわけないだろ。
 おかしいって思ったのは、フェリコットが死んだあと、あんたの存在が掻き消えたから。
 だってどう考えてもおかしいだろ、公女が1人死んでて、その原因の一つである平民あがりの子爵令嬢が罰せられないわけない。
 少なくともフォルケイン公爵家は怒り狂うだろうな。
 にも関わらず、あんたは罰せられないどころか、煙のように消えて、トラヴィスもそれに気がつかなかった」
「あら、誰も私の存在を知らなかっただけかもしれないじゃない。それか、いたいけな少女だからと許されたのかもしれないわ」
「んなわけあるか、こちとら腐っても第三王子なんだよ。
 影がついてるし、フェリとの結婚は王命だ。
 それを踏み荒らすような真似をした挙句、結果として公女が死んでるんだ、咎めが無いわけねーだろ」

 吐き捨てるようにそう言うと、少女はちっとも残念じゃなさそうに「そう」と呟く。
 怒られてへそ曲げている子供のように、手すりの縁に腰かけると「続けて頂戴」なんて偉そうに言う。
 恐ろしい女だと、トールは小さく舌打ちした。

「……今世で、お前のことを調べた」
「まぁ」
「リエラヴィア・コーネリウス。そんな名前の貴族令嬢は、コーネリウス家にも、この国のどこにも存在しなかった」
「あら、存在しないは大げさでしょ。まだ平民だったかもしれないし」
「俺がフェリの憂いの原因が分かってるのに、ほっておくと思ってるの? トラヴィスの記憶全部探って情報を集めて、該当する者を全部虱潰しに潰してったんだから間違いがあるわけねーだろ。
 あんたみたいに青い髪をした平民で、適齢の女は貴族はもちろん、裏社会に至るまで全て調べた。
 だから、今回の人生にあんたは出てこなかったんだろ?
 俺が、あんたの存在を疑ってるって知ってたから」

 四度繰り返した人生で、トラヴィスは必ずリエラヴィアと出会ったが、トールとなった五度目ではその影も形も捕らえることはできなかった。
 これで何もないわけがないと、挑発するようにトールが言葉を投げかけるが、少女はにこやかに微笑むだけだ。
 それを肯定と受け取りながら、トールは会話を続ける。

「あんたは一番目の時、目的をもって俺に近づいて、惑わした。
 そうして、フェリを失って絶望する俺の前に何食わぬ顔をして現れて、時を戻したんだ。
 俺があんたをリエラヴィアと認識しなかったのは、そう言う魔法か何か使ったんだろ。違うか?」

 少女はトールの話を聞いて、「すごいすごい」と無邪気に手を叩いて喜んだ。

「すごいわ、異界の子ってどうしてみんな頭がいいのかしら」
「ふざけるなよ、お前のせいでどれだけフェリが傷ついたと思ってるんだ」
「まぁ、誤解だわ。
 私はトラヴィスが望んだとおり、時を戻しただけよ。
 あの子が時を戻したくなるようにお膳立てしたけど、それだってちょっとしたスパイスだわ」
「スパイスだって? あれだけ追い詰めてよく言う。
 だいたい、トラヴィスの記憶が戻るきっかけは、フェリコットの絶望だろ?」

 怒りをにじませながらトールは言う。
 そう、トラヴィスが時戻り前の記憶をとりもどすには、いつだってきっかけとしてフェリコットの絶望があった。

 二度目の時は、に。
 三度目の時は、に。
 四度目の時は、に。

 だからいつだって、トラヴィスが思い出した時には手遅れだったのだ。
 五度目の今回がうまく行ったのは、一重にフェリコットが記憶を取り戻した直後に、またはじまった繰り返しに絶望したことがきっかけだ。

 もし、フェリコットがあの時絶望しなければ、トラヴィスは記憶の戻っていないトラヴィスのままだった。透流の記憶を取り戻すことも、トールとして覚醒することもないまま、またいたずらにフェリコットの事を傷つけて死なせてしまったに違いないとトールは確信している。
 そうして、また死の直前で絶望したフェリコットによって、今度はその死を見届けるのだから、質が悪いとしか言えない。

「まぁ、すごい。本当にすごいわ、あの子トラヴィスは最後まで気がつかなかったのに」
「喜んでんじゃねーよ、クソ女。性格歪むのも大概にしろよ」
「あら、これは私も誤算だったのよ。
 まさか、フェリコットの精神がここまで強固だと思わなかったの。
 もっと早く、絶望していたらあんな悲惨な死に方はしなかったと思うわ。
 そっちの方が、私の目的も果たせたのに、本当に残念よ」

 にこりと、少女は笑う。
 邪悪で、悪意が満ちた笑顔にぞわりと背筋が凍る気がしたが、トールは屈しない。

「あんたの目的ってなんだ」
「うん? 知りたいの?」

 少女は小首をかしげながら言った。
 だめで元々だと思っていたトールに、少女はにんまり微笑むと歌うように無邪気に言った。

「いいわよ教えてあげる。
 私はね、体が欲しかったの。
 夢花の牡羊の末裔の、無垢な体が」

 少女はそう言うと、手すりの縁に立ち上がり、くるりと一周した。
 ふわりと青い髪が揺れ、真白に金が混じった瞳が揺らめく。
 スカートがくるりと翻り、妖精のような華奢な体が月明かりに照らされる様子は、とても神秘的で同時に恐ろしく見えた。

「この体はね、私のコレクションの1つなの。
 とってもきれいでしょ?
 200年くらい前に貰った癒しの鼠の家の子の体なんだけど、貰うのに凄い手間がかかったお気に入りなのよ。

 フェリコットの体、この子によく似てとってもよさそうだったから、ずっと欲しかったのに、邪魔されちゃったの。だから別の方法で手に入れようと思っただけなのよ。
 それなのに、何回繰り返しても綺麗なまま手に入れられなかったんだもの。
 いくら相性が良くても、凌辱後とか、首と胴体が分かれた後とか、妊娠してるとかんだもの。

 でもこうなってくると、お腹の穴ぐらいで我慢しておけばよかったわね、あの時妥協しておけば一応手に入ったんだから」

 心底残念だと言うように、少女は口すぼめて言う。
 じわりじわりと怒りが湧きたつが、それを浴びせたところでこの少女には何も響かないだろう。
 それが分かるから、トールはただ拳を握る。

 寝室で眠るフェリコットを、初夜のうちに愛しておいてよかった。
 この少女が言う「無垢」というのは恐らくそう言うことだ。愛していなかったら彼女は、今この少女に永遠に奪われていたかもしれない。
 そんなこと、想像しただけでも怒りがわく。

「悪いけど、お前にフェリコットは渡さない。
 未来永劫、生まれかわっても、また時を戻したとしてもだ」
「まぁ、大丈夫よ。
 私は、異界の子には干渉できないの。
 トラヴィスの魂が消えて貴方になった時点で、私は貴方の時間に干渉できなくなったわ。
 貴方を基盤として時を戻せない以上、フェリコットの綺麗な体はもう手に入らないもの。

 とっても残念だけど、諦めるしかないわ」

 少女は歌うようにそう言った。
 おもちゃを一つ、壊した子供のような無邪気な声音だった。

「あーあ、欲しかったな。高慢で傲慢で、我儘だけれど真っすぐな女の子が
「……」
「絶望を何度も浴びて、精神崩壊してしまった魂を宿した体。こんな機会じゃないと手に入らなかったのになー」
「俺は、お前を許さない」
「ん?」
「三度目の時に、フェリを階段下に突き落としたのも、息子に真実を話したのもお前だろ」

「最悪な女だ、お前は、本当に」という、トールの言葉に少女は妖艶に笑う。

 三度目の時。
 あの時は正直ろくでなしはろくでなしのままだったが、何かのきっかけがあれば改善するチャンスはあった。そのチャンスを悪意で塗りつぶしたのは、目の前にいる少女だ。

 トールは、思い出してからというのもトラヴィスの事をいつだって殴りたいし、殺したい。同情する余地はほとんど持ってないが、ただ三度目の時だけは悪意に踊らされて、幼い息子迄失ったことだけは同情をしてしまいたくなる。
 この少女が干渉しなければ、哀れなフェリコットに幸せな未来の可能性がほんの少しだけあったかもしれない。

 けれど手紙を届かないように細工して、フェリを階段から突き落とし、幼い息子に悲惨な真実を話して毒杯を渡す。
 この悪意のオンパレードを、どうして許せるというのだろうか。
 
 それになにより、無垢な幼子を巻き込むことが許せなかった。
 トラヴィスの事は死ねばいいと思うが、あの時のトラヴィスは、最低限立派な父親であったのだ。少なくとも透流の父親よりは。

 トールの怒りを知ってか知らずか、少女はにこりと微笑む。

「私ね、ショートケーキが好きなの」
「あぁ?」
「真っ白な生クリームに飾られて、とってもきれいで美しいでしょ?
 そのショートケーキを、なのよ」

 くすくす笑いながら言う少女は、まるで理解不能な化け物だった。
 きっと、そもそも人外なのだろうと思うと、妙に納得できた気がした。

「……下品だな」
「そうね、でも趣味だもの。
 それに
「は?」

 少女はつっとトールに近づくと、トールの顔にその指先で触れた。
 顎をくいっと持ち上げられ、真白の瞳がトールのアクアマリンの瞳と重なる。

あの子トラヴィスが四度繰り返して諦めたおかげで、貴方はフェリコットと結ばれたのだから、貴方は私に感謝すべきだと思わない?」

 にやりと悪意を持って笑う少女の手を、トールは鼻で笑って弾き飛ばす。

「馬鹿じゃねーの。そもそも、嫁を散々傷つけた元カレトラヴィスを、俺が許すとでも思ってる?」

 トールが、トールにフェリコットを託して消えてしまったトラヴィスの事を許す日は来ない。
 どんなに改心しようと、トラヴィスの性根は我儘な糞餓鬼だ。
 フェリコットの一途さにも、健気さにも気がつかなかった鈍感糞男に、トールが同情するわけがない。モラハラパワハラしまくった男が、未練タラタラロミオをしてるだけなのに、どうして同情できるのか理解したくもない。

 透流がホストをしていた時も、常連のお客さん(夫の不倫で離婚したら、元夫から付きまとわれた経験があるって言ってた)がボロクソ言ってた理由が、今ならよく分かる。

 四度繰り返した時戻りの人生で、トラヴィスは高慢で傲慢で、我儘で前向きだったフェリコットを何度も殺して、ズタズタにしてしまった。
 ここにいる卑屈で、幸福に怯えながらも、一途さと健気さだけは手放さなかったフェリコットを手に入れたのはトールなのだ。

 トールは今のフェリコットを愛している。
 それこそ、後から気がついた糞野郎トラヴィスよりも、ずっと深くだ。
 誓いではなく、断言である。

 透流の記憶を取り戻す前に確かにいた、高慢で傲慢で、我儘で前向きだったフェリコットのことだって、トールは愛してる。それが永遠に失われる原因になったトラヴィスを、どうして許せようか。

 トラヴィスの心は、トールのどこにも残っていない。
 あの日、跡形もなく消えてそのままだ。きっともう、永遠に戻ることはない。

 それでももし、顔を合わせることがあるならトールはトラヴィスに「ざまあみろ」と言ってやろうと決めている。
 それだけあの糞餓鬼の罪は重い。

 だから、少女に罪悪感を刺激されても、挑発されてもトールは動じることはない。
 少女は、そんなトールの反応が面白くないのかスッと無表情になった。

「あなたって、面白いのにつまらないわね」と、おもちゃに飽きた子供のような声音で呟くと、トールに背を向ける。

「それじゃあね、異界の子。もう二度と会わないわ」

「末永く、お幸せに」と、感情の全くこもっていない祝福の言葉を紡いで、少女は闇夜に溶けるように消えた。
 張りつめていた空気に、トールがほっと息を吐くと、寝室から「とーるさま……」と自分を呼ぶ愛妻の声が耳に届いた。

「フェリ、起きちゃった?」
「はい……、トール様は」
「ちょっとベランダで涼んでただけだよ。起こしてごめんね」

 トールはそう言って、眠るフェリコットを抱きしめた。
 大切に、大事に、優しく愛したフェリコットの体だったが、初めての彼女に少々無茶をした自覚がある。
 精神的な年齢は透流よりなので、トールは実年齢よりだいぶ大人びていると自分では思っているが、体はまだ19歳なのだから、これは致し方ないことだと理解してほしい。

 唇を重ねてキスをねだれば、拙いながらも応えてくれるフェリコットに、若さが主張を始める。

「フェリ……」
「はい」
「もう一回、愛してもいい?」
「……ふぇ」
「俺、フェリと結婚するまで3年待ったし、今日のできっとフェリに赤ちゃんできたでしょ?
 そうしたら、赤ちゃんが生まれて体が落ち着くまでこうしてイチャイチャできないと思うから……ね?」
「いちゃいちゃ???」
「うん、それに三度目の時みたいにうまくいくとは限らないし。だから絶対赤ちゃんできるように念入りに抱きたい」
「ねんいりにだきたい???」
「うん。だめ?」

 こてんと首を傾げてあざとくねだる。
 ホスト時代の透流のスキルで、これで何人もの年上のお姉さまにドンペリを入れてもらった記憶が蘇る。
 そんなことを知らないフェリコットは、散々赤くさせて乱れた体をまた赤く染めて、うんうんと必死で頷いた。
 それがあんまりにも可愛くて、トールはクスリと笑いながら肌同志を絡めあうと、トールの想いで悲しかった記憶全てを上書きするように、また深く愛していく。

(こういうのもNTRの一種って言うのかな……。
 フェリと一緒にいると先輩刺し殺そうとしたあのメンヘラストーカーの気持ちがちょっと分かる気がする。けど、殺して俺だけのものにしたいとか思わないだけ俺ってマシだよね)

 にこにこと笑いながらそんなことを考えるトールに、フェリコットは首を傾げながらもすり寄ってくれる。
 確かな幸福がここにあった。





 ……本当は気がついている。
 フェリコットが最初から一途に愛しているのは、あの糞男トラヴィスでトールじゃないことを。
 トラヴィスがもう、この世のどこにもいないと聞いたら、フェリコットはまた絶望してしまうだろうからトールは言わないけれど。

 トールはどんなに想っても永遠にトラヴィスに勝てなくて、トラヴィスは永遠にフェリコットに逢えない。
 そしてフェリコットはそれを知らずに、トールの中にトラヴィスがいるのだと信じて、トールを愛して生きていく。

 けれどそれでもかまわない。
 確かに今、トールが愛したフェリコットがここに生きて幸せそうにしているのだから。

 ひとつだけ、罪悪感があるのは、三度目の時にフェリコットが失ったと思い込んでいる息子が、あの日ちゃんと生まれていて、10歳までは生きていたのだと言う事を伝えていないこと。

 それを伝えれば、トールがトラヴィスの記憶を持っていることを知ってしまうし、何よりも、そうして生きていた息子が10歳で自死を選んだなど、フェリコットを愛しているトールが言えるわけがない。
 それにきっと、遠くない未来に息子は戻ってくるのだ。
 だから、言う必要はないはずだ。

(歪んだ幸せでも、それでいいや。
 だって、確かに今、俺達は幸福なのだから)

 なんて思いながら、トールはまたフェリコットに深く口づけた。
 もう繰り返すことのない、生涯続く幸福に酔いしれながら、2人は眠ることなく朝を迎えたのだった。








fin

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

kokekokko
2023.06.02 kokekokko

なかなか読みがいのある作品で一気読みしちゃいました。トールになってからの事も、前世のことも、ダラダラした長さがないのに核心があって、毎話読み応えがあってたのしかったです!

salt
2023.06.03 salt

ご感想ありがとうございます!!

解除

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

読切)夫が私を抱かないので話し合いをしてみた結果

オリハルコン陸
恋愛
夫に抱かれない新婚皇女様がキレました。 私には夫がいる。 顔よし、頭よし、身体よしと三拍子揃った夫が。 けれど彼は私を抱かない。一緒のベッドで眠っているのに、触れようとさえしない。 そんなのが半年も続けば、堪忍袋の緒も切れるというものです! プチエロコメディー

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。