モテたかったがこうじゃない

なん

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第一章

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パチパチパチ。

「素晴らしいですわ。皆様本当にマシロ様のことをお慕いしていらっしゃるのね。私感動致しました!」

いや、あんたが仕向けたんだろう!

「時に情熱的に、時に相手を想って引いたりもする。恋愛の醍醐味ですわね」

今の短時間なやり取りでそこまで感じられるのか?
こんな、突然3人の男に愛の告白受けるのが恋愛の醍醐味なら、おれ正直身が持たないんだけど…。

きゃっきゃと嬉しそうにしているアイリーン様。
女の人ってこういう唐突な告白って嬉しいのかな?だっていきなり結婚しよう。だよ?びびんない?普通。

いやまあ普通って言っても、恋愛経験のないおれの普通なんて有って無いものなのかもしれないけどさ。

会って1週間しか経ってないのにこのスピード感。

レイヴァン様達もスルッと言ってたもんな。おれだったら怖くて言えないよ。だって断られる率の方が高いもん。
めちゃくちゃ探りに探って、これは確実にいけるぞ!って思わないと好きも言えない気がする。
それを愛してる、だもんな。

これが王都の恋愛か…。都会すげぇ。

どっちにしても類稀なる絶世のハイスッペックイケメンにしか許されないスピードだろう。
現にびっくりしつつも、好きって言われて悪い気がしないのってレイヴァン様達の顔が良いからってのもあるだろうし。だって様になってたもん。おれ一瞬お姫様だったよ?

美形ってすげぇ。

「そういうことなのでアイリーン様。我々は今後のありかたについて話し合わなくてはいけなくなりましたので、申し訳ないのですが…」

「あらカール様。みなまで言わなくとも分かっていますわ。お邪魔をするつもりはありませんもの。私はここで失礼させていただきます。どうぞゆっくり話し合って下さいませ」

「話し合いって?アイリーン様帰るの?」

こんなにややこしくしといて?

「マシロ、アイリーン様には敬語を」

「かまいませんわグランツ様。私とマシロ様はとっても仲良しですの。ね、マシロ様」

「え、仲良し…?」

「またお茶会に来て下さいね。沢山お菓子を準備してお待ちしておりますわ」

ではご機嫌よう。とあっさりアイリーン様は部屋を出て行った。

…お茶会で根掘り葉掘り聞かれるんだろうな…。

「さて、これからの事について幾つかルールを決めておこうと思うがいいですか?」

「あぁ」
「無論だ」
「・・・・」

「ルール?」

何それ。いる?

「現状私を含め3人の者がマシロ君と恋人になりたい、そしてマシロ君はその想いを否定せず考えてくれると言ってくれています。ここで問題になるのは抜け駆け問題です」

「抜け駆け…。あ、というかすっかりスルーしてたけど、3人はいいの?おれは誰かに抱かれないと死んじゃうし、一応、その…おれが好きなんでしょ?好きな人が別の男と…しちゃうの、って」

「嫌に決まってる」

「あ、やっぱ嫌なんだ」

「嫌だが、マシロが死んでしまうよりは断然いい」

みんな頷いている。

「共有する、というのは異例の関係ですが、考えてくれるそうですし気長に待ちますよ」

「私も遠征などで常に側にいることは正直難しい。かと言って、遠征先にマシロを連れて行くなど無理だ。現状この方が都合も良い。己の感情でまた君を危険にしたくない」

「そういうことだ。さっきはアイリーン嬢に乗せられた感じもあるが、鈍感なマシロには先に想いを伝えていた方が良かったのかもな。でないといつまでも意識すらされなかったかもしれない」

「意識も何も、レイヴァン様だってそんな素振り見せたことなかったじゃん」

「ほら、気が付いてない」

え、まじ?あったの?

「その様子だと私のも気がついて貰えて無いようですね」

「え?カール様も?」

やれやれと呆れたポーズをされる。いや、まじでどれの事言ってるの?

「私は…」

「あ、グランツ様は分かる」

「そ、そうか…っ」

嬉しそうだ。

「というわけで、折角愛を伝えたのですからこれからどんどん意識してもらって、マシロ君にも愛を育んでもらわないとね」

「まさに怪我の巧妙、と言っていいのか」

「マシロ、じっくり考えてくれて大丈夫だから。最後は僕を選んでくれ」

「レイヴァン様、抜け駆け駄目ですよ」

なんか、案外みんなあっさりというか。もっと揉めると思ってた。

特にレイヴァン様なんてもっと2人に食って掛かるかと。

…本当におれが考えるの待ってくれるんだな。

愛を育む、かぁ…。
やっぱりピンとこないな。まだ。

どうやら今までおれが気が付かなかっただけで、おれを好きだとアピール?された事あったみたいだし。
まじでどこよ。

モテたいって漠然と思って王都に来たけど、いざモテるとこんな事になるのか。イケメンにしかモテないけど。
人生って難しいな。

やっぱりおれには圧倒的に恋愛経験値が足りてない。だからぶっちゃけ、好きとかましてや愛とかどこまでの感情なのかわかんない。お子様だな、おれ。

折角待ってくれるって言ってるし、まずは好きから覚えていこう。まずはそこからだ。

そうおれが前向きにみんなの好きと向き合う決意をしている間、当の3人はおれを抱く順番で盛大に言い争っていた。

いや、そこは揉めるの!?

終わりの見えない話し合いをちょっと引き気味に眺める。これはほっとこう。

そんなおれ達をアレク王子が羨ましそうに見ているのを、おれは気が付かなかった。



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