モテたかったがこうじゃない

なん

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第一章

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手当てが終わったアレク王子と何故か一緒に正座させられているレイヴァン様。アレク王子はついでに着替えもしていた。何でびしょ濡れだったんだろう。

しゅんっとしているアレク王子に大して不満を隠しもしない態度のレイヴァン様の前に、さっきよりは落ち着いたカール様が腕を組んで見下している。

「何故僕まで座らされているんだ」

「貴方達は、暫くマシロ君との接触を禁止します」

「何故だっ!」
「・・・・っ」

「貴方達に我慢が無いからに決まっているでしょ。自覚がお有りで無いんですか」

「我慢くらい出来る!」

「いいえ、無理ですね。先程も言いましたが、レイヴァン殿下の時もたまたまオーバーしなかっただけで同じ事です。後先考えずに自分を優先して行動したことにかわりありません。そもそもマシロ君は王宮に来て連日行為に持ち込まれています。休息が必要です」

「…お前だって夜に、とマシロを誘っていたじゃないか」

「はて、何のことでしょう。私は魔具を持っていく約束をしただけですが」

「白々しい…っ」

こうはっきりと連日行為に、なんて言われるとまるでおれが淫乱みたいじゃん。

「れ、連日…」

はっ!そういえばグランツ団長がいたんだった!

「あ、あのっ、連日って言うのはその、生きるためでして!決して好きでしてた訳じゃ…っ」

「マシロはちゃんと気持ちよさそうだったぞ」

「黙れ馬鹿王子!」

「だ、大丈夫だ。カール殿から全て聞いている。そういうこ、行為もっ、マシロ殿には必要な事だと。心得ているっ」

全部知ってんのもそれはそれで恥ずいんですが…。だからその渋くてイケてるお顔を真っ赤にしないでってば!釣られちゃうでしょ…っ。

「そ、そうですか…」

「あぁ…」

二人して顔を赤くしてもじもじする。この人と話すと要らん恥じらいが出て、なんだか居た堪れない気分になるのは何故なんだ。

「ごほんっ、話しを戻しますよ。殿下達との接触を禁止するにあたり、今のままレイヴァン殿下の塔に住まわせては意味がありません。よって、今日から暫くマシロ君には騎士塔で生活して貰います」

え、ええぇぇぇー!

昨日の今日で皆にからかわれるのは火を見るよりも明らか。行きたくねぇ…。

「別に今の部屋でも鍵閉めて引き籠もってたら問題無いんじゃ…」

おずおずと口を挟んだおれに、カール様が憐れみのこもった目線を向け、ため息まで吐いた。

「無理ですね。絶対に食われます。掛けてもいい。君は自分のチョロさをもっと自覚したほうがいいよ」

「そんな事な…っ、え、なに?」

言い返した途端、真顔でずんずんと近付いて来るカール様に思わず後ずさる。そのまま目の前まで来たカール様に顎を掬われ傾けられると、段々唇が近づいてきて…。

「カール殿」

大きくて分厚い手が唇の間に割って入って事なきをえる。その手は少しだけおれを後ろに引き寄せ、カール様と離された。

背中には大きな身体が当たる。グランツ団長だ。

「…ほら、隙だらけだよ」

「・・・・・」

表情を和らげたカール様は、そのまま頭をポンポンと軽く叩いて王子達の方に戻っていった。

心臓がドキドキと高鳴る感じに戸惑う。顔も段々熱くなってきて、驚いたとはちょっと違う様な。いったいどうしたんだろう?

離れていく後ろ姿を目で追う。
少しだけ、寂しい…様な…。

「マシロ殿。大丈夫か?」

「うへぇっ!?あ、はい!大丈夫です!あははは…っ」

慌ててグランツ団長から離れた。

何を考えてるんだおれは。

「見て頂いた通りマシロ君は押しに弱い。よって、暫くは物理的に距離を置いて頂くために騎士塔へ行って貰うことにしました。殿下達も丁度学園でのイベント準備で忙しいでしょう。そちらに専念なさって下さい」

「暫くって具体的にはいつまでだ」

「今回の件で、マシロ君の適切な魔力量は約5000~1000だと判明しました。これより多くても少なくても死ぬ可能性があります。難しいですが、出来るだけギリギリまで減ったところに補充する方が安全でしょう。丁度今は5000あります。これが何日分に相当するのか、1000になるまで様子をみます。マシロ君、これを腕に付けてみて」

5つの黒い宝石がはめ込まれたリングを渡されて、言われた通り腕に付けてみる。

すると黒い宝石が全て白くなった。

「おぉ!色が変わった!」

「正常に機能したようだ。1つの石に対して1000の魔力に反応して白くなるんだ。今は5000あるから全て白いけど、4000、3000と減る事に石も黒くなる。最後の石が赤くなったら1000を切ってる印だから、その前に魔力の補充が必要だよ。まあ、その前に発情状態になるかもしれないけど。逆に5000以上になると全ての石が赤くなるから、急いで体内の魔力を減らすんだよ」

「おぉ…すげぇ…。カール様ありがとう!」

「どういたしまして。それは外さずずっと付けててね」

「はーい!」

これで今どのくらい大丈夫なのかバッチリ分かるし安心だ。

色んな角度から眺めるおれにカール様がまた頭をポンポンした。…なんかむずむずする。

「ということなので、取り敢えずギリギリまで減るまでですね」

「その間に何かあったらどうするつもりだ。誰でも魔力を与えられる訳では無いんだぞ」

「ご心配には及びません。グランツ団長も適正の魔力量を持っているそうなので、騎士塔にいる間の事はお任せしています」

「ならグランツ団長も危ないじゃないか。体格差もあるし、マシロの可愛さに耐えられる男がいるわけがない」

「疑う気持ちも分かります。団長は既にマシロ君に盛大な告白をされていると風の噂で聞きましたし」

「なんだと!なら尚更…っ!」

「マシロ君、グランツ団長に触って」

「え?」

突然なに。ていうか風の噂って、どこまで広まってるの。あれはイケメンフェロモンに当てられただけで事故なんだけど。

不名誉な噂が出回って可哀想…。

「ほらほら、マシロ君早く」

「うん…」

丁度近くにいるグランツ団長の手を握った。

「う"…っ」

途端、可哀想な程顔が真っ赤に染まり、固まってしまった。え、大丈夫?

「グランツ団長?」

心配して顔を下から覗き込むと目を見開いて空いている手で心臓辺りを握り込み、汗が滝のように流れ出した。え!本当にどうした!?

「はーい、マシロ君その辺で」

どう見ても具合の悪そうなグランツ団長から離される。握ってた手がビチョビチョだ。これ全部汗かな?

「こんな状態でマシロ君を襲えるとは思えないでしょ?」

「…確かに安全そうだ」

グランツ団長は不名誉な信頼を得た。

「はぁ…っ、マシロ殿はこの身に変えても護ろう」

「騎士塔では自由に過ごしていいからね。騎士団にも話しは通してるし。ゆっくり休息してもらって、魔具に慣れてよ。あ、ちゃんと最後の石が赤くなる前に魔力の補充も忘れずにね」

毎朝フィリップ先生に検診してもらう約束をして、今日から騎士塔でお世話になることになったのだった。



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