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10年後…
しおりを挟む10年の月日が経った頃、
少年・リオン。
いやもう青年になって、勇者として独り立ちした勇者・リオンは再び魔王城の裏門に派手に登場した。
今度は巨大な狼の魔物の背中に乗り、門を少し破壊しながら登場した。
騒ぎを聞きつけて、見に来ていた魔王の姿を見つけ、リオンは高らかに名乗り出した。
「魔王ルル!あなたは10年あんまり変わってないみたいだけど、オレはこの10年で大人になった!」
確かに背丈は伸びていたが、頭はあの頃とあまり変わらないらしい。
「あーあ、あの時の…」
「そうさ、子供相手に腕相撲で本気で負かせにくる小賢しい魔王を懲らしめるためにオレは来た!」
部下たちは別段彼を脅威と思っておらず、それぞれまた自分の仕事場に戻り始めた。
「ふふふ、おそれを成したか。まあいい。用があるのはお前1人だ魔王ルル。」
はあ…。
魔王はため息をつき、敏腕な右腕のゴートに今日の予定は調整できるか小声で聞いた。問題ありませんと何も聞き返さずにゴートが答えた。
「おい、こそこそとまた悪いこと企んでるな、魔王っ!」
「そんなことはないさ、さあさあ、ここは一つ頭脳勝負といこうじゃないか。チェスはどうだ」
「ぐぬぬぬっ、チェスとは卑怯な!魔王ならもっと肉体戦で来いよ!おれも今日のために鍛えて来たんだから!」
えっ、それはめんどくさいと魔王ルルは思った。ただでさえ吸血鬼は貧血気味だというのに、なぜ戦わなければいけないのだろうか。
でも応じないといつまでも駄々をこねられそうだな。
しかたない。
「わかった。では剣術で一本勝負はどうだろうか」
「ふんっ!いいだろう。受けてたとう」
なぜ偉そうに言えるかは、疑問が残るが、それも彼の魅力かもしれない。
ちょうど予定の調整を終えたゴートが木刀を2本持って来ていた。
「えっ、なんで木刀…」
「我は血が苦手なんだ、そこは勘弁してくれ。勝負には手を抜かないから」
「あーあ、まあ、しょうがないからいいよ!本気で来いよ!」
「では、両者構えて~~、はじめッ!」
カンッ
またもや勝負は一瞬だった。
魔王の圧勝。
「早すぎる!今ズルしただろっ!」
「してないよ、はい、今日はもう諦めて」
「えー、納得いかない。もう一本!3本勝負しよう!」
結局10本勝負して、やっと勇者を追い返すことができた。
力と粘り強さは確かに歴代一位二位を争うかもしれないが、先読みする頭脳と誠実な心は足りないらしい。
そうか、もう10年も経っていたのか。
人の子は寿命が短すぎる。我々魔物は長すぎる。故に分かり合えない時もあるのだ。
勇者・る…る…り…??なんだっけ…、あっ!リオンだったかな。立派に成長したな。
子供の姿では憚られたが、立派に美味しそうな健康体になったな。
魔王はペロッと唇を舐めた。
喉の渇きを感じてしまった。
魔王も吸血鬼の本能には逆らえないらしい。
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