半透明人間

あかさたな!

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ばあちゃんと僕

302.紅桔梗_BENIKIKYOU

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2階の窓から外を見るのは禁止されていたけれど、

家の裏にある庭のようなスペースで遊ぶことは時々許された。

高い木に囲われて、葉っぱで囲われていたそこからは、外の世界は見えなかった。

見られてはいけない僕には、
そこから世界を見ることは叶わなかった。


それでも村にお盆祭りの時のような、
太鼓が響く音が冬に鳴っていた時は好奇心に負けた。

外に出たいと泣いても喚いても、
ばあちゃんはダメの一点張りできついお叱りを受けた。
「馬鹿なことは考えるな。外がどれだけ危険だと思ってるの。
今は危ないから絶対ダメだ。」


でも僕は、ばあちゃんと父の目を掻い潜り、
庭の葉っぱを掻い潜って外に顔を出した。

見られちゃいけない僕は、
マフラーと帽子で顔までぐるぐるに隠せば大丈夫とタカを括っていた。


やっとの思いで葉っぱから顔を出した僕の目の前に、
運悪く男の人がそこに立っていた。


彼は僕を見るなり、
防寒具の隙間から見えた僕の真っ青な半透明な肌を見て、
なんの躊躇もなく僕の顔をガッと掴んだ。

「…ガッ…ァアアア」

その余の力の強さに、
僕も反射的に叫んでしまった。

それに気づいたばあちゃんが
庭に出てきて、
葉っぱをかき分け、
僕をその男の手から解放してくれた。

僕の抜けた隙間から男と目が合ったばあちゃんは

「ごめんなさい…ごめんなさい」

とうわ言のように言うだけだった。


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