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ダンスフロアに続く廊下
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しばらくの間、迷子になっていた。街がすっぽり霧に覆われてしまったようだ。振り返るまでもなく、それは通い慣れた道だった。一時的に行方不明になるだけであって、なくなったわけではない。
「まだ行ける」
魂はそう叫んでいる。はっきりしていることは、今はまだ前に進み続けているということだ。ゆっくりでもいい。僕は昔好きだったものに触れてみる。時の隙間は埋まらないとしても、好きだったものの中から再び「好き」を救出することはできるかもしれない。確信はない。だけど、濃い霧の向こうにだんだんと百貨店の形が浮かび上がってくる。
開店と同時に人々は百貨店になだれ込む。そこに必ず求めるものがあるからだ。いつの時代も百貨店は人の期待を裏切らなかった。何百年もの間、人々に愛されながら街の中心地で輝きを放っていた。
「ノースフェイスは?」
「はい。ノースフェイスでございますね」
「豚まんは?」
「はい。豚まんでございますね」
人々はそれぞれに目当てのものを探して、案内所の前に立つ。そこには百貨店に相応しい笑顔と淀みのない導きの声が待っているのだ。僕の目当ては宝石でも寿司でもない。
「踊れるところは?」
「はい。ダンスフロアでございますね」
ダンスの中に僕の求める陽気が眠っている。
「下手でも大丈夫? 怒られない? 追い出されたりしない?」
「ふふっ」
「みんな踊ってるの?」
「踊っている人、見ている人、休んでいる人。色んなお客様がいらっしゃいます」
「上手い人ばっかりじゃないの?」
僕はこれから的外れなダンスをする。
「皆様ダンスをこよなく愛する方ばかり。理解のある方ばかりでございます」
ならば僕が入り込むことも許されるだろう。
「何階ですか?」
「はい。ダンスフロアは東館14階にございます」
話を聞いて足取りは軽くなった。
渡り廊下の上で僕の体はもう浮き始めていた。
「まだ行ける」
魂はそう叫んでいる。はっきりしていることは、今はまだ前に進み続けているということだ。ゆっくりでもいい。僕は昔好きだったものに触れてみる。時の隙間は埋まらないとしても、好きだったものの中から再び「好き」を救出することはできるかもしれない。確信はない。だけど、濃い霧の向こうにだんだんと百貨店の形が浮かび上がってくる。
開店と同時に人々は百貨店になだれ込む。そこに必ず求めるものがあるからだ。いつの時代も百貨店は人の期待を裏切らなかった。何百年もの間、人々に愛されながら街の中心地で輝きを放っていた。
「ノースフェイスは?」
「はい。ノースフェイスでございますね」
「豚まんは?」
「はい。豚まんでございますね」
人々はそれぞれに目当てのものを探して、案内所の前に立つ。そこには百貨店に相応しい笑顔と淀みのない導きの声が待っているのだ。僕の目当ては宝石でも寿司でもない。
「踊れるところは?」
「はい。ダンスフロアでございますね」
ダンスの中に僕の求める陽気が眠っている。
「下手でも大丈夫? 怒られない? 追い出されたりしない?」
「ふふっ」
「みんな踊ってるの?」
「踊っている人、見ている人、休んでいる人。色んなお客様がいらっしゃいます」
「上手い人ばっかりじゃないの?」
僕はこれから的外れなダンスをする。
「皆様ダンスをこよなく愛する方ばかり。理解のある方ばかりでございます」
ならば僕が入り込むことも許されるだろう。
「何階ですか?」
「はい。ダンスフロアは東館14階にございます」
話を聞いて足取りは軽くなった。
渡り廊下の上で僕の体はもう浮き始めていた。
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