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第六十二話 人類は
しおりを挟むそれから何時間経ったか分からないが、日が沈みそうになっている。
人類を滅ぼそうとした神々は既に命の灯火が消え、地面に倒れ込んでいたのだ。
その神々の死体の近くには既に神器では無くなった武器を持っているボロボロの人類が立っている。
そして、その人類の周りには命の灯火が消えている人類の死体もある。
そんな状況でも人類は勝鬨を上げているのだ。
明日を生きれることをただ喜んで。
人類が勝鬨を上げている中、いきなりある神の真っ二つに斬られた上半身が宙に浮いたのだ。
勝鬨を上げていた私は瞬時に最後の神器でもある斧を構える。
宙に浮いたことで、勝鬨を上げていた人類は驚きの表情を浮かべていたのだ。
そんな状況の中、真っ二つに斬られていた上半身が話し始めたのだ。
「認めよう。我々は愚かな人類に負けたと」
う、嘘だろ。
明らかに白目を向いて、命の灯火が消えていると言うのに。
何故、喋れるんだ?
「だが、だが、我々だけが滅びなどあってはならない。だから、貴様らも道連れだ」
そう言い終えると、ある神の真っ二つになった上半身は地面に落ちる。
地面に落ちると同時に揺れたのだ。
その揺れはまるで大地の怒りのようにも感じたのだ。
まともに立つことも難しい。
その揺れは亀裂を作り出す。
その亀裂に死んだ神々の死体が吸い込まれていく。
揺れがおさまると神々の死体は亀裂に吸い込まれた後だ。
そんな状況に疑問に思っていると大きな音と共に現れたのだ。
それは沈みかけていた夕日を覆うほどの体積を持つ土砂だ。
まるで山だな。
道連れか。
確かにこれなら出来るな。
さて、どうしようか。
返しでも居合い切りでも無理だな。
そうか。
この時の為に。
クリース神は悪魔王は私にこれを与えたのか。
そんなことを思いながら、右手に最後の神器となった斧を持ち、左手には悪魔王から貰った魔法具を手に握る。
そして、あの大きすぎる木を倒した技ではない何か。
必要な物は揃っていたのか。
なら、それらを使い、私は消し去るだけだ。
そんなことを思いながら、私は覚悟を決める。
まずは左手で魔法具を握り潰す。
すると、私の中に莫大な魔力が流れ込んでくる。
よし、次は構えだな。
私はあの時の構えを取る。
大きすぎる木を倒した時の。
準備が完了する頃には私の周りには誰もいない。
誰もが逃げていた。
土砂が目の前まで迫っていたからだ。
そんな中、私は目を閉じ、深呼吸をする。
極限、いや、極地の集中に達する為に。
極限の集中に達した私は斧を振り下ろす。
すると、迫りくる土砂は最初から無かったかのように掻き消える。
その光景はまるで山を落としたようだ。
これは御業、山落とし。
この御業は満身の力、いや、今生の一撃だろう。
そこで私は分かってしまう。
私の祖先の山落 三右衛門がどう死んだのかを。
この御業を放ち、耐えられなかったのだろう。
私が耐えられたのは膨大の魔力と最後の神器のお陰だ。
故に歴史の中に刻まれていないのだろう。
そんなことを思いながら、私は斧を上に上げたのだ。
すると、土砂によって隠れていた夕日が私のことを、いや、この戦場を照らしている。
そんな中、私は雄叫びを上げる。
それに続き、この戦いを生き残った戦士達も雄叫びを上げたのだ。
これで本当に終わった。
人類は明日を生きるために神々を殺したのだ。
これが人類が選択した結果だ。
これからの人類がどうなるかは誰にも分からない。
繁栄するかもしれないし、衰退するかもしれないし、滅亡するかもしれない。
だが、今は。
例え、少し未来の先が滅亡だとしても今は生きられるのだ。
だから、人類は勝利の喜びの雄叫びをひたすらに上げるのだ。
これは私の推測だが、永遠とは言わないが、私が死ぬまでは人類は繁栄するだろう。
なんだって、121神もいた中でたった1神だけ味方をしてくれた女神がいるのだから。
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