魔王の側近はお暇を頂く

竹桜

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最終話 過去よりも幸せを

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 どうやら、あの調整者は映像を流していたらしい。

 カリーサとリーフの元に帰った時に色々と問い詰められた。

 その時に私の前世と2人の前世のことを話したのだ。

 それを聞いた2人は驚きながらも運命だと言い、喜んでいた。

 そんな2人が可愛くて仕方なかった。

 調整者を倒してから、2ヶ月が経った。

 今日は私達の結婚式だ。

 結婚式の形式は魔族の国で一般的なものだ。

 私は正装に身を包み、2人のことを待っていると音楽と共に2人が式場に入場してきた。

 入場してきた2人は純白なウエディングドレスに身を包んでいたのだ。

 そんな2人を私はエスコートし、魔族が信仰している神に報告した。

 信仰している神に報告を終えた私は2人の方を向いたのだ。

 そして、2人の純白なベールを上に上げた。

 そのまま私は2人に誓いのキスをしたのだ。

 誓いのキスを終えた私達は式場を後にした。

 私の転移魔法を使用して。

 到着した場所は私が生きていた中で1番美しいと感じた湖だ。

 この湖は私しか知らない場所。

 誰も見つけられなかったのだ。

 まぁ、それもそうだろう。

 ここは調整された結果、荒れた大地となって、唯一残った場所だからだ。

 昔、ここで2人と過ごしていた。

 だから、ここに来たのだ。

 「カリーサ、リーフ。私はここで改めて誓う。世界一幸せにすると」

 「うん。僕のことを幸せにして。グリークス」

 「はい。私のことを世界一幸せにして下さい。グリークスさん」

 「勿論だ」

 私の答えを聞いた2人は世界一美しい笑顔を浮かべていたのだ。

 その笑顔は目の前に広がる湖よりも美しかった。

 この日、私は魔法使いと聖女の前世の魂を持つ、カリーサとリーフと夫婦になった。

 私は絶対に過去よりも2人のことを幸せにする。

 それから十年が経ち、私は魔王様の前にいる。

 「魔王様。お暇を頂いても大丈夫ですか?」

 「ひ、暇だと。何か嫌なことでもあったのか?」

 何故か魔王様は慌てていたのだ。

 「あ、いや。ただの休暇の話なのですが」

 「あ、そうか、そうか。ただの休暇か」

 「まさか、私が辞めると思ったのですか?」

 「そうだ。有り得ない話だと思ったが、何故かそう思ってしまった」

 「あの時とは逆ですね」

 「懐かしいな。そう言えば、あの時のお前は結婚なんかせずに、仕事ばかりだったな」

 「今思えば、おかしいことですね」

 「今のお前を見たら、そう感じるな。おっと、休暇な話だったな。何も問題ないから、楽しんで来てくれ」

 「ありがとうございます。それでは、休暇、いや、お暇を貰いますね」

 「ああ」

 私は魔王様の前から退室し、愛しい妻の1人の元に向かったのだ。

 愛しい妻は第一資料室で仕事をしているので、合流してから、もう一人の愛しい妻の元に帰った。

 家に帰るともう一人の愛しい妻と可愛い娘達が出迎えてくれた。

 ああ、幸せだ。

 過去よりも。

 幸せを噛み締めていると愛しい妻達が声を掛けてきたのだ。

 「どうしたの?グリークス。早く入ろ」

 「カリーサさんの言う通りです。早く入って下さい、グリークスさん」

 「ああ」

 私は穏やかな表情を浮かべながら、家の中に入ったのだ。
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